家族のじかん
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さあ、あたたかなニッポンにかえろう。 さあ、あたたかなニッポンにかえろう。

江戸時代は教えてくれる。資源が限られる今こそ、新しい智恵が生まれ、循環型社会が発展する時だということを。 江戸時代は教えてくれる。資源が限られる今こそ、新しい智恵が生まれ、循環型社会が発展する時だということを。

資源・エネルギー源

深い山々で採れる栗が主役。
山あいのまちの名物菓子

資源・エネルギー源

深い山々で採れる栗が主役。
山あいのまちの名物菓子

ひと口に和菓子といっても、それぞれ使う原料もさまざま。餡だけでも小豆に白小豆、インゲン豆や青えんどう、赤えんどうとバラエティ豊かです。おまけに皮ごと炊くのか、皮を取り除いてから炊くのか、炊いた後に晒すのか…などと加工のやり方も考え合わせれば、その広がりは数えきれないほどといっても良いでしょう。
こうした創意工夫はもちろん菓子職人それぞれの努力の賜物なのですが、気温や湿度など土地ごとの気候条件が少なからず影響します。さらに土地で産する食材を用いることで地域の名物菓子が誕生し、今に伝えられているわけです。栗やクルミ、柿などの山の幸、雑穀や茶葉、柚子などの野の幸、中には昆布を使ったものまで。どんなものも受け入れて菓子に昇華させる職人のセンスと技には感服するほかありません。
中でも岐阜から長野にかけての栗菓子は、その完成度の高さで広く知られる名物です。もともとは、深い山中で採れる栗を茹でたり焼いたりして旅人のもてなしに用いたものが、街道が整備されて人の往来が盛んになるにつれ、茶屋が建つようになり、さらに専門の菓子舗が登場するように。特に栗の実をひとつひとつ皮からくり抜き、炊いて茹でこぼしてつぶして練り上げて…と気が遠くなるほどの手作業を経てようやく生まれる栗きんとんは、まさに地域の宝といえるでしょう。そして地域の菓子舗が互いに切磋琢磨し、それぞれオリジナルの味わいに仕上げているのは見事としかいいようがありません。こうして地域の名物は完成度を高めていくのでしょうね。

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殿さまが愛し地域に広めた、
茶の湯と和菓子の深い関係

千利休が大成させた茶の湯の文化は、豊臣秀吉や徳川家康ら天下人に愛され、時に政治に利用されながらも大名に広がり、やがて家中の武家へ、さらに裕福な商家へと浸透して行きました。それに伴って発展したのが、お茶請けとしての和菓子です。国内での砂糖の自給が進むとともに京都や江戸、大阪に専門の菓子舗が誕生し、それぞれに意匠を凝らした銘菓を創り出していきました。さらにこうした都市の菓子舗で修業した職人が地方に下り、身につけた技術とセンスで新たな銘菓を生み出していく。和菓子にとっては、とても幸せな連鎖が起こり、全国各地に名物菓子が生まれていったわけです。
中でも藩祖の徳川義直や七代・宗春が茶の湯を愛し、藩内に奨励した尾張名古屋では、市政の人々までもが作業の合間に「野だて」を楽しむまでに普及。その浸透ぶりは1829年には茶事の禁止令が出されるほどだったといいます。小倉トーストをはじめあんこが主役のローカルフードが人気なのも、名古屋市民の饅頭購入額が全国的に高いと言われるのも、その伝統があってのことなのでしょう。名古屋をはじめとする尾張~三河の和菓子は総じて、大ぶりながら味わいは淡く上品、しかしどこか大らかな雰囲気を讃えています。殿さまから庶民まで、ともにお茶とお菓子を嗜んだ時代の文化が今に息づいているのかもしれません。
さらに茶どころであり、東海道沿いの宿場町が続く静岡では、旅人をもてなすための名物菓子が続々と誕生。今も受け継がれている安倍川餅は、そのひとつです。

資源・エネルギー源

お伊勢まいりのお楽しみ
街道に続く餅菓子がポイント

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お伊勢まいりのお楽しみ
街道に続く餅菓子がポイント

コンパクトなのに運動中のエネルギー源になる糖質が豊富と、近年アスリートから改めて注目されているのがお餅です。実は古くから食べると力が出ると親しまれ、各地の街道沿いや宿場町、峠道の茶屋で「力餅」と名付けられた餅菓子がふるまわれてきました。
そのひとつが、お伊勢さまへお参りする人が往来する伊勢参宮街道の餅菓子。ひときわ有名なのが、内宮のお膝元に店を構える〈赤福〉の「赤福餅」です。江戸時代の初期には五十鈴川畔に〈赤福〉の屋号で営む餅屋があったとされ、宝永年間に刊行された浮世草子にその名が記されているとか。以来、伊勢を訪れる旅人に愛され続け、土産としても重宝されました。正岡子規の俳句「到来の 赤福餅や 伊勢の春」は弟子から赤福餅を手土産にもらい、かつて自身も訪れた伊勢の春に思いを馳せたものと言われています。また、その子規を偲んで高浜虚子も「旅は春 赤福餅の 店に立つ」と詠みました。
旅人の心と体を癒したのは赤福餅だけではありません。桑名の安永餅に四日市のなが餅、亀山の志ら玉、鈴鹿の立石餅、小俣のへんば餅、伊勢に入れば岩戸餅に神代餅、太閤出世餅、二軒茶屋餅、くうや餅…とキリがないほど。お伊勢さまを敬う気持ちとともに現在に至るまで受け継がれてきた「餅街道」の餅菓子は、他の土地にはない名物。地域の誇りといえるでしょう。

江戸時代のこころは、今につながるエネルギー。 江戸時代のこころは、今につながるエネルギー。

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