家族のじかん
カテエネ

山深い中津川では古くから山の幸を用いた食文化が育まれてきました。中でも栗は中山道を往来する旅人へのもてなしに重宝され、宿場町の名物となっていきます。やがて江戸と京の文化が行き来するなか茶の湯が盛んになると、栗を使った菓子も登場。蒸し栗に砂糖を加えて炊き上げ、茶巾に絞った栗きんとんは職人の工夫のたまもの。素朴にして上品、この季節に欠かせない中津川の名物です。

国宝の天守をいただくお城を中心に城下町の面影を残す松本には、江戸の昔を伝える老舗が見られます。文化の香り高いこの町では古くから茶の湯をたしなむ人が多く、和菓子づくりが今も盛ん。秋から冬になると栗をはじめ周囲の山々の恵みを材料にしたお菓子が勢揃いし、店先を眺めるだけで心が浮き立つものです。昔ながらの里山の暮らしを受け継いだ民藝の手仕事とともに素朴な味わいを楽しみましょう。

木曽川沿いの崖上に築かれた犬山城天守と、茶の湯の草創期に建てられた茶室「如庵」は、どちらも織田家ゆかりの国宝。ふたつもの国宝を抱える犬山には、江戸時代から変わらない町割りが残っています。江戸から昭和までの歴史的な建物が隣り合って共存しており、そぞろ歩くだけで土地の歴史を感じられます。

東海道五十三次、22番目の宿場町であり、歴代藩主が幕府の要職を務めた田中城の城下町。家康が鷹狩りのため度々足を運ぶなど徳川とのゆかりが深いことでも知られます。通りには江戸時代初期創業の菓子舗も!古くからの茶産地であり茶商も集まる土地だったため、お茶がおいしいのも魅力。特に市内朝比奈地区の玉露は京都の宇治や福岡の八女と並び「日本三大玉露」と称されます。朝比奈川から立つ朝霧を受けて育ったお茶は、豊かな香りとまろやかな旨みが広がります。和菓子と一緒にぜひ!

徳川家康誕生の地であり、三河における重要な拠点であった岡崎。譜代大名が城主を務めた岡崎城のお膝元です。さらに東海道五十三次の宿場町、矢作川舟運の港町として人や物の行き来が盛んになり、繁栄の一途をたどったまちだけに、由緒ある寺社や伝統ある商家の建物が今も残されています。岡崎の和菓子には家康にあやかったものが多く、地域の方々の家康愛を感じます。

徳川家康が29歳から45歳までの17年間を過ごし、のちに天下人となるための力をつけたと言われる浜松の地。その後、歴代城主が次々と幕府の要職に就き、立身出世を果たしたことから浜松城は「出世城」と呼ばれるようになったとか。市内の和菓子店では、家康の古事にちなんだ創作菓子も続々誕生。新たな定番になるのはどれか、食べ比べしながらの散歩もおもしろそうです。

名古屋市民は全国屈指のあんこLOVER。これは尾張徳川家の影響力によるものという説が有力です。藩祖・義直や七代・宗春をはじめ歴代の藩主が茶の湯を愛したことから庶民にも喫茶の文化が浸透し、一時は茶事の禁止令も出るほどだったとか。お茶の広がりとともに和菓子も発展し、今も当時からの流れを汲む名店が市内全域に点在し、茶席菓子としても普段のお茶請けとしても愛されています。地下鉄にのって尾張名古屋の名店をホッピングしましょう!

日本人の総氏神とされる神宮のお膝元、伊勢の人たちは古くから大勢の参宮の旅人を迎え入れ、あたたかくもてなしてきました。その象徴と言えるのが、旅の疲れを癒す参宮街道の餅菓子。鳥居前町〈おはらい町〉の中ほど、伊勢路の伝統木造建築が軒を連ねる〈おかげ横丁〉でも、名物〈赤福〉をはじめホッとできる和菓子が私たちを待っています。そのやさしい味わいは、伊勢木綿や伊勢玩具などの伝統工芸品が持つ、おおらかで素朴な魅力に通じるもの。伊勢ならでは、手の温もりを感じるそぞろ歩きを楽しみましょう。

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