家電の買い換え効果【冷蔵庫編】
省エネ性能が10年で大きく進化
今、買い換え効果が最も高いのは
「冷蔵庫」なんです!
家電製品全般の省エネ性能が向上する中で、買い換えると年間の電気代が最もお得になるのはどれ? エアコン? 照明? テレビ? いえいえ、実は冷蔵庫なんです。
家庭の電気使用量の内訳で最も多いだけでなく、ここ10年ほどで省エネ性能が飛躍的にアップしたからなんです。
家の中で最も電気を使うのが「冷蔵庫」!?
ちょっと古いデータになりますが、2009年の世帯あたりの電気使用量は4618kWh(1kWh=27円換算で約12万5000円)で、そのうち第1位が14.2%の冷蔵庫となっています。そこに照明器具、テレビ、エアコンが続きます。2009年といえば、LEDライトや、薄型テレビが普及する前で、照明器具もテレビも現在に比べて消費電力が大きかったのは間違いありません。それでも、それらを抑えて冷蔵庫が堂々の1位。24時間使い続ける家電は少ないので、当然と言えば当然かもしれませんね。つまり、冷蔵庫を省エネなモデルに買い換えれば、電気代も抑えられるというわけです。
既にかなりのところまで省エネ化が進んだエアコン
何となくエアコンが“金食い虫”というイメージを持っている人も少なくないかもしれません。でも実は、家庭用エアコンが登場した1950年代から2000年ごろまでに、かなり省エネ技術が進みました。「省エネ性能カタログ」によると、2005年製のエアコンは1995年製のモデルに比べて期間消費電力量(年間消費電力量)が約38%も低くなっています。でも2005年から2015年までは約9%と、省エネ化の伸びは緩やかになっています。
たったの5年で、大型モデルでは約31%もの省エネに
一方の冷蔵庫はどうでしょう。前出の「省エネ性能カタログ 2016夏」によると、比較的小型な201L~250Lでもたった5年(2010年から2015年)で約18%、最も効率化が進む大型モデル(501L以上)では約31%もの省エネを実現しています。エアコンの省エネ化が緩やかになりつつあるのに対し、冷蔵庫はまだまだ省エネ化の余地があるということです。
[電気冷蔵庫] 年間消費電力量の推移(kWh/年)
※省エネ性能カタログ夏版・冬版の単純平均値
出所:一般財団法人 日本冷凍空調工業会
「省エネ性能カタログ 2015冬」によると、401L~450Lの冷蔵庫の年間消費電力量は2004年から2014年まで10年間で約3分の1にまで下がっているとのこと。エアコンは10年前のモデルから買い換えても10%前後しか電気代が安くならないのに対し、冷蔵庫は大幅に安くなる可能性があるというわけです。そうなると、買い換えた方がお得というケースもでてきますよね。
年間消費電力量の推移(目安)について(401~450L)
※年間消費電力量は、日本工業規格JIS C 9801:2006に基づき測定されたものです。
※このデータは特定の冷蔵庫の年間消費電力量を示したものではありません。
※各年度ごとに定格内容401〜450Lの冷蔵庫の年間消費電力量を推定した目安であり、幅をもたせて表示しています。
出所:一般財団法人 日本電機工業会
実は大型モデルほど電気代が安い!?
先ほど紹介した「年間消費電力量の推移」にもありましたが、実は大型モデルほど電気代が安い(消費電力が低い)という傾向にあります。これには驚きですよね。というのも、高価な大型モデルほど冷蔵庫の心臓部である冷却機能や、省エネ性能を左右する断熱材などにコストをかけられるため、省エネ性能が高くなるというわけです。
実際、先ほど紹介した年間消費電力量の推移グラフを見ても、サイズが大きくなるほど年間消費電力量が下がっているのが分かります。501L以上は253kWh/年(同約6,800円)とありますが、これには600Lモデルも700Lモデルも入っているため、よほど効率的だというのが分かることでしょう。
同じスペースでも大型モデルが入るので狙い目
買い換え時に注目したいのは、同じスペースでもより大容量の冷蔵庫が入るようになったことです。
冷蔵庫の横幅はいくつかあるのですが、600mm、650mm、685mmといった幅が一般的です。例えば三菱電機の「スマート大容量シリーズ」の場合、本体幅685mmで総庫内容量605Lを実現しています。12年前の同社の同じ幅の冷蔵庫が448Lですから、157L、割合にして約26%もの容量アップを実現しているというわけです。
同様に東芝の「マジック大容量シリーズ」も、685mm幅で10年前の463Lから605Lまで142Lの拡大を実現しています。
本体幅の同じ10年前の冷蔵庫との容量比較
2014年8月のプレスリリースより
出所:東芝ライフスタイル株式会社
どちらも、外気を遮断して冷気を逃がさないようにするための断熱材をなくす、あるいは薄くすることで外壁を薄型化し、容量アップを実現しています。それでも消費電力は大幅に低減しているというのだから驚きです。
最新のモデルは冷蔵食品や野菜などをより長持ちさせるための工夫がなされている機種が多くあります。大容量モデルを買って食品を買いだめしても、安心して使えます。冷えが悪くなってきたとか、手狭で使いにくいと思われる人は、省エネ性能の高い最新モデルへの買い換えを検討するといいでしょう。
購入時は設置場所や搬入経路の確認を忘れずに!
冷蔵庫を買い換える場合に必ず注意していただきたいのが「設置スペースの確保」と「搬入経路の確認」です。現在冷蔵庫を設置しているスペースに収まるサイズの冷蔵庫を購入する場合は問題ないのですが、問題はサイズアップする場合です。
600mm幅から650mm幅、もしくは685mm幅などに一気にサイズアップする場合、幅だけでなく奥行きもかなりスペースを取りますので、キッチンが手狭になる可能性があります。
さらに問題は搬入経路です。650mm幅であればほぼ問題ないと思いますが、685mm幅くらいになると、場合によっては玄関や廊下などを通れない可能性もあります。筆者の場合、マンションの1階で勝手口があるのですが、そこの幅がそのままでは足りなかったため、ドアを外して搬入することになりました(それでも700mm程度だったので、プロの業者の方でも四苦八苦されていました)。
搬入できないため返品ということになると大変なので、大型モデルを購入する場合は必ず搬入経路のチェックをしておきましょう。
ライター:安蔵 靖志(あんぞう・やすし)
IT・家電ジャーナリスト 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)。AllAbout 家電ガイド。日経BP社「日経ネットナビ」「日経ネットブレーン」「デジタルARENA」「日経トレンディネット」などを経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ〜ンの家電ソムリエ」に出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの構成などにも携わっている。