以前カテエネ会員の皆さんに旅行・レジャーについて、アンケートを実施しました。今回はアンケートから見えてきた、皆さんの知りたいことや興味・関心を、名古屋ガイドでもある大竹敏之さんが解説します。
旅行・レジャーにアクティブな中部の人たち、ご当地グルメでお出かけがさらに充実
暑い夏が終わり、お出かけしたくなるシーズンの到来です。これから旅行やレジャーを楽しまれる方も多いのではないでしょうか?カテエネ会員の皆さんにご協力いただいたアンケート結果から、みなさんの旅行・レジャーの楽しみ方が見えてきました。
みんなのアンケート結果
Q1.日帰りの旅行・レジャーで、片道何時間の場所まで出かけていますか?普段出かける際、最も多い移動時間を1つお選びください
Q2.旅行・レジャーに出かける1番の目的を1つお選びください
Q1では、日帰りの旅行・レジャーの片道所要時間「2時間程度」という回答が最も多く、この地域の人たちが日帰りレジャーに積極的でアクティブであることが分かります。中部地方は海にも山にもアクセスがよく、本州の中央に位置することから、多方面へお出かけしやすい、そんな地の利が反映されているのでしょう。Q2でも比較的まんべんなく各項目が回答として挙げられ、「旅行・レジャー」そのものに対する関心が高いことが分かります。
「自然・風景観光」「レジャー施設」「名所・旧跡観光」が目的上位に入っていますが、どこへ行くにしても外せないのはその土地ならではのご当地グルメです。片道1~2時間の旅行・レジャーであれば、1~2回は食事や間食をすることになりますから、そこでしか食べられない名物などを昼食やおやつとして盛り込めば、お出かけの充実度はグッと高まります。
みんなのアンケート結果
Q3.次の名所・旧跡で、詳しく知りたいと思うスポットをすべて教えてください
- 1位
- 伊勢神宮(22.5%)
- 2位
- 諏訪大社(11.5%)
- 3位
- 国宝犬山城(10.9%)
- 4位
- 名古屋城(10.2%)
- 5位
- 馬籠宿(9.8%)
みんなのアンケート結果
Q4.次の自然・風景で、詳しく知りたいと思うスポットをすべて教えてください
- 1位
- 上高地(16.3%)
- 2位
- ひだ白川郷(14.9%)
- 3位
- 富士山(13.7%)
- 4位
- 高山の古い町並み(13.6%)
- 5位
- 知多半島(11.9%)
また、Q4で具体的に挙げられたスポットのうち、知多半島であれば、半田市はこの地域の醸造文化を代表するメーカーが集積しているので、「ミツカンミュージアム」「国盛 酒の文化館」といった見学施設を巡るのもいいでしょう。南知多では近年ふぐを出す飲食店や旅館が増えてきて、冬へと向かうこれからがまさに旬。カタクチイワシを原料にした特産の魚醤もあり、これを使ったふぐの魚醤焼きなる名物にも出会えます。
ご当地グルメの文化・歴史背景を知って深まる興味、有名な名古屋めしの意外と知らない豆知識も
これらのグルメを楽しむ際、それぞれの料理の文化・歴史的背景を知っていると、自分自身も、そして同行者もより興味を深めることができます。
例えば、きしめん。うどんを単に平たくしたものと思われがちですが、愛知のうどん・きしめんは塩分濃度の高い生地を作ってひと晩寝かせて熟成させます。塩が多いと生地は固く延ばしにくくなるのですが、それをあえて平たく延ばすことで、薄いのにコシがあるきしめんができるのです。その日打った麺を出すのが基本の讃岐うどんとは全く違った打ち方、特徴があるのです。
味噌煮込みうどんや味噌カツも、東海地方特有の豆味噌があるからこそ生まれた郷土料理。全国で食べられている米味噌は煮たたせると風味が損なわれてしまいますが、豆味噌は煮込むとむしろコクが出ておいしくなります。味噌煮込みうどん、味噌カツはそんなご当地の味噌の特性を活かして誕生したのです。
Q3で挙がったスポットであれば、馬籠宿なら五平もちが名物ですが、地域によって形も味も違います。愛知の三河地方はわらじ型で豆味噌のタレで味つけ、馬籠宿が含まれる東濃~南信州にかけてはくるみやゴマの甘いタレに団子型が主流になります。紅葉が美しい山間部が多いので、五平餅食べ比べドライブなども楽しいのではないでしょうか。
熱田神宮ならうなぎのひつまぶしを思い浮かべる人も多いでしょう。蒲焼を刻んで薬味、ダシをかける一種のアイデア料理のイメージがありますが、決してそうではありません。名古屋のうなぎ屋は蒲焼にたまり醤油ベースのタレを使い、このたまり醤油はとびきりうまみが濃いのが特徴。このご当地調味料を使うからこそ、細かく刻んでもダシをかけても食べごたえが損なわれない、すなわち名古屋以外では生まれなかったご当地料理といえるのです。
人気高まる着地型観光、地元の人を対象としたプログラムも
みんなのアンケート結果
Q5.次のレジャー施設で、詳しく知りたいと思うスポットをすべて教えてください
Q5では名古屋港水族館、東山動植物園が上位に入り、名古屋市内への関心の高さもうかがえます。特に東山動植物園は名古屋市内屈指の紅葉の名所と言われており、11月中旬~12月初旬の週末には夜間営業&ライトアップをおこなっています。訪れたことがある人は多いはずですが、リピート率も高く、ここでもやはり、より深く知ることで楽しさがアップします。
近年は地元の人こそより楽しめる着地型観光※のツアーの人気が高まっていて、
名古屋では「大ナゴヤツアーズ」が東山動植物園の飼育員、名古屋城の学芸員などをツアーガイドに起用したプログラムを組んでいます。さらにはきしめんや味噌煮込みうどんづくりの体験講座も。
※着地型観光:旅行会社が現地へ連れて行く従来の「発地型観光」に対し、参加者が現地で集合・解散する観光の新しい形。
名古屋再発見、街の魅力を見つけよう!
みんなのアンケート結果
Q7.旅行者にあなたが暮らすエリアを案内するとしたら、どのような観光を提案しますか?1つお選びください
Q7では「自然・風景」「名所・旧跡」「グルメ」「レジャー施設」と続く順当な結果となっています。これらのスポットに、他府県からやって来た友人知人を案内する機会もあるでしょう。しかし、ここでちょっと残念なのは「特になし」との回答がそれなりの数あることです。自分が住む街に案内したい場所がない。これってとても残念なことじゃないでしょうか。
数年前に名古屋市による都市ブランドイメージ調査の結果が「名古屋=魅力がない」とネガティブなイメージで拡散してしまいましたが、あの結果を招いた最大の要因は、名古屋の人の街に対する自己評価の低さでした。名古屋の人が名古屋に愛着や誇りを抱いていない、という回答が非常に多かったのです。
しかし、「案内すべきところがない」と回答した人は、どれだけ自分が住む街のことを理解しているのでしょうか?名古屋であれば最大の観光名所の名古屋城。天守閣に登れなくとも、名古屋城には江戸時代から現存する隅櫓(すみやぐら)が3つもあり、城郭全体を見回しても石垣や構造そのものに当時最高峰の叡智が注ぎ込まれ、軍事要塞としての堅牢さは国内の城郭でも最強です。復元された本丸御殿は、近世の美術工芸の粋が注ぎ込まれた圧巻の建築アートです。
その他にも、名古屋港水族館のメイン水槽は、あの沖縄美ら海水族館のジンベイザメの水槽と比べてもおよそ2倍ものスケールで世界最大級のスケールを誇ることをご存知でしょうか?東山動植物園がスケールも生き物の種類も日本一といってもいいレベルの日本を代表する施設であることをご存知でしょうか?
先にも挙げましたが、名古屋めしだって決して風変わりなB級グルメではなく、歴史風土を背景に生まれた立派な郷土料理です。こうした事実を理解していれば、「案内する場所が特にない」なんて言ってはいられなくなりませんか?
実は地元が面白い、あなたの住む街こそが
魅力的
「灯台下暗し」とはよく言ったもので、誰でも身近なものにはとりたてて目を向けようと思わないもの。しかし、自分たちが当たり前だと見過ごしがちな場所やモノにも、そこにしかないストーリーや価値があるのです。地元を見直そうという視点があれば、どんな街にでも友人知人に紹介したくなる魅力は見つかるものです。「名古屋再発見」は、決して名古屋にだけ知られざる魅力がたくさんあるという話ではありません。皆さんの住む街にも、あなたが気づいていない、まだ掘り起こされていない価値あるものがたくさんあるはずです。是非、「あなたの住む街・再発見」をしてみませんか?そうすれば身近で手軽な旅行・レジャーが、ずっとバリエーション豊富で、ずっと中身の濃いものになるはずです。
フリーライター:大竹敏之
雑誌、新聞、Webなどに名古屋情報を発信する。Yahoo!ニュースに「大竹敏之のでら名古屋通信」、中日新聞Webサイト『オピ・リーナ』に「大竹敏之のでらうま名古屋めし探訪」を配信。名古屋の食や文化をテーマにした著作も『名古屋の喫茶店最新版』『なごやじまん』『名古屋の居酒屋』『名古屋めし』など多数ある。