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絵本作家・ひろたあきらさんが選ぶ。
子どもの感性を豊かに育む5冊の絵本

vol.
02

遊び・子育て

絵本は子どもの感受性や情緒を育むのに良いと聞きますね。ワクワクするようなイラストが描かれた絵本を読み聞かせたり、親子でストーリーについて話し合ったりすることで、子どもの想像力はどんどん豊かになっていくでしょう。そこで今回は、子どもに読ませてあげたい5冊の絵本を紹介します。

お話を伺ったのは、吉本興業所属の芸人さんで絵本作家としても活躍するひろたあきらさん。

デビュー作である『むれ(KADOKAWA)』が、「第12回MOE絵本屋さん大賞2019」新人賞第1位に輝くなど、数々の賞を受賞し、一躍話題に。現在では作家としての道を歩みながら、図書館や保育園、小学校などを会場として、絵本の読み聞かせにも積極的に取り組まれています。

ひろたさんがセレクトするのは、子どもの感性や想像力を育てる絵本。それぞれの魅力について解説していきます。

お話を伺ったのは…

作家・芸人

ひろたあきらさん

愛知県出身。吉本興業所属。ピン芸人としてのネタを模索する中で絵本の魅力に目覚め、絵本を用いたライブや読み聞かせイベントを積極的に行っている。デビュー作『むれ』は6万部を突破する大ヒットに。

ひろたあきらさんと絵本の出会い

21歳のころ、名古屋でお笑いコンビを結成し、芸人としての活動をスタートしたひろたさん。その後コンビを解散し、2015年に単身で東京に進出。2018年からはピン芸人として活動しています。

フリップに絵を描くネタをするひろたさんは、ネタ作りの参考のために本屋に足を運ぶようになったそうです。“絵本は大人が読んでも十分に面白い”と気づき、絵本の専門店にも足しげく通うように。さまざまな絵本を読み深める中で、もっとも衝撃を受けた作品が『ゴムあたまポンたろう』でした。

ゴムあたまポンたろう
(童心社/長新太)

主人公は頭がゴムで出来ている男の子、「ゴムあたまポンたろう」。山にポンとぶつかって、ボールのように空を飛ぶ、ゴムあたまポンたろうの摩訶不思議な世界一周の旅を描いています。

「本屋さんでこの本を目にしたとき、まず表紙の派手な色使いに惹かれました。そしてページをめくり、『遠くのほうから男の子が飛んできました。頭がゴムで出来ている、ゴムあたまポンたろうです。』という最初の一文で心を掴まれましたね。ページをめくるたびにワクワクしながら、夢中になって読み進めたのを覚えています」。

絵本を読み始めた当初は、あくまでネタの参考として絵本を読んでいたひろたさんですが、『ゴムあたまポンたろう』をきっかけに絵本の世界に魅了されたと言います。

不可思議な文章と絵、斬新な色使いなど、良い意味でとても自由な本作。ユニークな文章と絵を見て笑ったり、考えたりと、親子でいろいろな想像をふくらませて楽しむのもおすすめです。

ひろたさんの
おすすめポイント

文章も絵も説明的ではなかったり、空がピンク色だったりなど、自由な作風は子どもの感性を刺激してくれるはず。難しく考えずに、自分の思うままに楽しんでください。

[書籍情報]
『ゴムあたまポンたろう』
価格/¥1,430(税込)
発行/童心社
著者/長新太

月おとこ
(評論社/トミー・ウンゲラー)

地球にあこがれを持つ、月に住む月おとこ。ひょんなことから地球にやってきて、念願だった地球での生活を満喫しますが、大変な事件が起こってしまうお話です。

国際児童文学賞として栄誉ある賞の一つである、国際アンデルセン賞を受賞したトミー・ウンゲラー。彼の作品の特徴は、社会や人間に対する風刺であり、本作にもそのエッセンスが点在。子どもはもちろん、大人も楽しめる絵本として長年愛されています。

SFのような、ホラーのような、ファンタジーのような…。独特の雰囲気を持つ『月おとこ』について、ひろたさんは「トミー・ウンゲラーのユーモアあふれるタッチと、鮮やかなコントラストの色使いに目を奪われます」と太鼓判を押します。天真爛漫な月おとこの姿があまりに印象深く、ひろたさんはこの絵本のページをめくると幼少期の思い出が蘇ってくるのだとか

月おとこの不思議で、少し滑稽な行動は、子どもの好奇心を伸ばすきっかけになるかもしれません。一風変わった雰囲気の絵本を読んでみたいと思う方は、トミー・ウンゲラーの作品の世界を味わってみてはいかがでしょうか。

ひろたさんの
おすすめポイント

物語のほとんどは夜を舞台に展開され、黒一色の背景が印象的。躍動感あふれるタッチで描かれたキャラクターと、鮮やかなコントラストに目を奪われます。子どもの色彩感覚や自由な発想を育むイメージで、読み聞かせしてみてはいかがでしょうか。

[書籍情報]
『月おとこ』
価格/¥1,650 (税込)
発行/評論社
著者/トミー・ウンゲラー

子どもの目を引く色使いが魅力の絵本

絵本を選ぶとき、まず表紙が目に留まりますよね。次に紹介する絵本の表紙には、カラフルな色使いの不思議なイラストが描かれています。表紙をめくった先には、一体どんな素敵な世界が広がっているのでしょうか。

いとしのロベルタ
(絵本館/佐々木マキ)

『いとしのロベルタ』は、愛しいロベルタを捜すおじさんの物語です。おじさんの行く先々には、足の生えた瓶やゼンマイで動く人間、沈没船に巨大なハイヒールなど、不思議な人やモノがあふれていますが、おじさんはそれらに目もくれず、必死でロベルタを捜しまわるのでした。

物語を彩るのはユニークなイラストたち。例えば、人間の体と魚の頭が合体した生き物や、足が生えたビンなど、子どもの感性を刺激する仕掛けが満載の一冊です。

「イラストは本文に関係ない変なものばかりが描かれているのですが、それがおじさんの不安な気持ちを表しているようで、こんな表現方法もあるのかと衝撃を受けました」とひろたさん。少し変わったイラストに大人が想像をふくらませる一方、子どもは純粋に面白がって楽しむそうです。

不思議な魅力に満ちた『いとしのロベルタ』。予想を裏切る結末は必見です。

ひろたさんの
おすすめポイント

佐々木マキさんの作品は、読み聞かせ会でどれも大人気。しりとりで物語が展開する『ねこ・こども(福音館書店)』や、とことんツイていないおじさんの話『へろへろおじさん(福音館書店)』など、子どもはもちろん、お父さんお母さんも一緒になって楽しんでくれています。

[書籍情報]
『いとしのロベルタ』
価格/¥1,320 (税込)
発行/絵本館
筆者/佐々木マキ

幼少期の記憶に残る
“初めて共感を覚えた”絵本

絵本を読むことで視野が広がり、新しい視点で物事を考えることができる。つまり、心の成長につながると言われています。

続いて紹介する作品は、幼少期のひろたさんの悩みを解決してくれた一冊。ひろたさん自身もこの本を通じて、初めて共感を覚えたそうです。

ノンタンおねしょでしょん
(偕成社/キヨノサチコ)

ノンタンの絵本はこれまでに、22冊の「ノンタンあそぼうよ」シリーズ、9冊の「赤ちゃん版ノンタン」シリーズ、ボードブック、あそび図鑑などが出版され、累計は3,200万部を超えます。

そんな人気シリーズの一冊である『ノンタンおねしょでしょん』は、ネガティブなイメージを持つおねしょを、ポジティブに考えられるようにさまざまな工夫が凝らされています。

「この本のすごいところは、おねしょを楽しいことのように描いてあるところ。おねしょが魚の形になっていたり、アルファベットになっていたり。ぼく自身もそれが楽しかった記憶もあって、幼少期のぼくの悩みをラクにしてくれた絵本ですね」と本作への思い入れを語るひろたさん。作家としての制作活動にも影響を与えたと話します。

「自分が絵本をつくるときは、どこか一か所でも良いから面白いと感じてもらいたいと思っています。『ノンタンおねしょでしょん』を読んだ当時の自分のように、絵本を通じて楽しい気持ちを感じてもらえるものをつくりたいですね」。

ひろたさんの
おすすめポイント

絵本の楽しみ方の一つが、大人になって幼少期に読んだ絵本の記憶を重ね合わせること。今回紹介した『ノンタンおねしょでしょん』がぼくにとって大切な一冊になったように、幼少期の読書体験は大きくなっても忘れない思い出になるはずです。

[書籍情報]
『ノンタンおねしょでしょん』
価格/¥660 (税込)
発行/偕成社
著者/キヨノサチコ

親子で一緒に笑顔になれる絵本

続いて紹介するのは、読み聞かせはもちろん、親子で一緒にページをめくる楽しさを体感するのにぴったりの作品です。

わらうほし
(学研プラス/荒井良二)

『わらうほし』に出てくるのは、笑う大人に笑う子ども。動物も植物もみんなニコニコしています。ページをめくるたび、今度は何が笑っているのだろうと想像し、読み手を笑顔にしてくれるのです。

幼児期の子どもは、感情が上手くコントロールできないこともあるでしょう。『わらうほし』はそんな感情のもつれを解くかのように、満開の笑顔が寄り添ってくれます。

「荒井良二さんが描くかわいらしい絵を見ていると、自然と笑顔になれるんです。人間以外の山や森、家もみんな笑っているのですが、なかでもネガティブなイメージを持たれがちな雨が、優しく笑っているのが素敵だなと思いました。笑顔の雨を眺めているだけで、どんどんと明るい気持ちになっていきましたね」と、ひろたさんもこの本を読んで元気をもらえたと話します。

柔らかい色使いで描かれたたくさんの笑顔と、リズミカルで元気を与えてくれる詩は、子どもだけでなく大人も笑顔にさせてくれるでしょう。

ひろたさんの
おすすめポイント

主に子どもを対象とした作品と言いながらも、大人のぼくにも刺さる部分がたくさんある作品。とくに『いい夕焼けだといって笑うおとなです』という大人が登場するページは、胸に迫るものを感じました。

[書籍情報]
『わらうほし』
価格/¥1,430 (税込)
発行/学研プラス
著者/荒井良二

まとめ

絵本好きが高じて、現在は絵本作家としても活躍するひろたさん。絵本の制作だけにとどまらず、絵本の読み聞かせ会やライブイベントも積極的に開催しています。

そんな絵本を愛するひろたさんが選んだ5冊。どの作品も子どもたちの世界を楽しく広げてくれることでしょう。そして、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれるはずです。

帰宅後や家事の合間、寝る前など、親子で一緒に絵本を楽しんでください。

最新情報

にゃおにゃおにゃお
2022年2月22日発売

[内容紹介]
「ねこさん おいで」 こどもの自由な発想が生まれるねこの絵本。
いろいろな表情の、柄の、鳴き声の、ねこがいて、みんなが集まったら、楽しいね。
他にはどんなねこがいるのかな。このねこはなんて鳴くのかな。こんなねこがいてもいいんだ。
ひろたあきらさんの自由な発想で生まれた、読み方も遊び方も自由な、新しいねこの絵本です。
https://books.yoshimoto.co.jp/yoshimoto-books/post-137.html

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