電気・ガスがない時代の
暮らしはどうしてた?
戦国時代に学ぶ生活の知恵
【名古屋おもてなし武将隊インタビュー】
vol.
11
学び・子育て
クリスマス、忘年会、年末商戦、正月の準備…とにかく物入りになりがちなのが年末年始。年末が近づくにつれて生活費が圧迫され、家計が気になるご家庭も多いのではないでしょうか。
とはいえ、ストレスのかかる「無理な節約」で心も体も疲れてしまうのは避けたいもの。そこで今回は「実はケチな人が多かった⁉」と囁かれる戦国武将の逸話から、そして戦国時代を生きた庶民の暮らしから、現代に通じる前向きな節約術を紹介します!
お話を聞いたのは、戦国時代から現代に蘇り名古屋おもてなし武将隊として活躍するお二人。徳川家康さんと踊舞(とうま)さんです。電気やガスがない時代を生きていた人々の知恵と創意工夫、そして心構えについて伺うことができました。
お話を伺ったのは…
名古屋おもてなし武将隊 徳川家康さん 長き戦乱の世に終止符を打ち、260年もの平和な世を築いた初代江戸幕府将軍。2009年に現代に蘇り、名古屋城を拠点に名古屋の魅力を全国に発信。持ち前の知識量で名古屋城の魅力を伝えている。
名古屋おもてなし武将隊 踊舞さん 有名武将たちの脇を固める足軽の一人。大道芸を生業とし、ダイナミックな踊りで見る者の心を奪う。ほら貝チャレンジをはじめ、コミカルな姿を披露するTikTokが話題。
戦国大名にはケチが多かった?
歴史に学ぶ現代の節約術
戦国時代とは、応仁の乱をきっかけに約100年にわたって続いた戦乱の世のこと。下剋上の風潮が全国に広がり、各地の大名たちが領土を拡大しようと争っていました。
そんな激動の時代を勝ち抜いた戦国大名たちには、前田利家や豊臣秀吉など倹約家が多かったと言われています。
徳川家康も“ケチ”と呼ばれるその一人。座敷で相撲をとるときは畳が傷まないようひっくり返し、馬小屋が壊れても、そのほうが馬を鍛えられるからと理由をつけて修理しなかったなどのエピソードを残します。
ガスや電気のない暮らしがあたりまえだった時代。当時を生きた戦国大名や庶民の暮らしを紐解き、現代にも生かせる節約術を探ってみましょう。
徳川家康に学ぶ!「質素倹約」が
願いを叶える戦国大名の節約術
まずは、現代でも倹約家として名高い家康さんに、戦国大名の節約術を伺いました。
新品のものをあえて染め、長く使える工夫を。
不要なものは捨てずに有効活用
節約の基本として、一つのものを長く使って無駄遣いを減らしたいと考える人も多いはず。その方法として家康さんは、着物はもちろん、足袋やふんどしなど汚れやすいものまですぐに捨てずに長く使い続けていたそうです。
「ものを大切にし続けるには自身の心構えが大事でな。使い古した後も最初の印象から変わらぬことが重要。そのためにわしがしたことは、下ろしたばかりのふんどしを生成り色に染めてから使うことじゃった」。驚くことに、汚れが目立たないよう新品の状態から、長く着用する工夫を施していたというわけです。
「大名が着ていた着物も、古くなったらその家臣に譲られ、古着屋へ売られ、庶民の手に渡って、着古された後は肥料になる。その肥料で畑を耕し、木綿を作って、また着物を作るわけじゃ」と話す家康さん。
これは資源を効率的に活用する“循環型社会”の構造で、実はSDGsの観点から注目されています。のちに家康さんが築いた江戸時代も物資が限られており、衣類も食器も徹底的にリサイクルして使う文化が定着していました。
徳川家康が
現代に提案!!
「現代で節約したい者の話を聞くと、何か足りないと思っていることが多い。実際は手元にものがそろっていると気づけば、あまり買わんようになる。知足じゃ。足るを知ることが大切じゃな。循環という発想であれば、フリマアプリ。あれは良いと思うぞ」とアドバイスをいただきました。
現代でも、不要なものをただ捨てたりため込んだりするのではなく、必要な人の手に渡るよう循環させながら、節約を心がけたいですね。
「麦飯」を好んで食べていた理由。健康こそが何よりも節約に?
当時、身分の高い武士は白米を主食としていたところ、庶民が食べる麦飯にこだわっていたという家康さん。
あえて麦飯を食べていた理由を尋ねると「当時のわしがいたすべきことは、争いごとのない天下泰平の世を作ること。それには時間も体力も必要だったわけじゃ。ゆえにビタミンやミネラルの多い麦飯を食らうのは必然であった」と話します。
「わしはとにかく健康に気をつけておったが、それが一番経済的にええわの。体をこわすと医療費がかかる。無理せず早く寝て、健康な時を長く過ごすというのが、一番の節約になる」と語ってくれました。
徳川家康が
現代に提案!!
戦乱の世に終止符を打ち、平和な時代を築くには体づくりは必須。結果的にそれが白米よりも安価な麦飯を選ぶことになり、家康さんの75歳という当時では異例の長寿につながったのかもしれません。健康を心がけることが最も経済的であるというのは、現代を生きる私たちにも通じるものがありますね。
豊臣秀吉や黒田官兵衛も有名な倹約家。
ちょっとしたアイディアで楽しく節約
豊臣秀吉│無理や我慢はNG!視点を変えるだけでストレスフリーな節約を
実は、三英傑の一人である豊臣秀吉も倹約家として知られます。
侍たちが無駄話をする際に薪(当時の燃料)を使っていることを知ると、武具の手入れや稽古事などを命じ、暇を与えないようにして無理なく薪の消費を抑えたそう。一方で観察力に優れ、よく褒めることで人心掌握していたとも。
「百姓出身で、いろんな立場を経験して秀吉殿は本当に賢い。だから誰とでも心を通わすことができ、武士ばかりの中でも百姓の視点で無駄を発見できるのじゃ」と、家康さんから見てもお見事なようです。
黒田官兵衛│野菜の皮を捨てるなんてとんでもない!「食べ物は丸ごと利用する」があたりまえ
秀吉の名軍師として名を馳せた黒田官兵衛には、瓜の皮をわざと厚めにむかせていたという、節約とは真逆に思える興味深いエピソードがあります。
「厚くむいた皮を漬物にさせ、おかずのない家来にまで行き届くようにしておったのじゃ。自分が食べる実の部分を減らしてでも、ほかに分け与える行いは、人情があって素晴らしき御仁じゃ」と語る家康さん。
皮は捨てるものと思いがちですが、野菜の切れ端でも魚の骨でも、食べ物は一切捨てずに丸ごと利用していたそうです。
徳川家康が
現代に提案!!
「秀吉殿や黒田殿もそうじゃが、いざという時には存分に金を使っておった。わしが皆にケチといわれてもなお切り詰めておったのも、天下泰平のために、自身が金をかける時を決めていたからじゃ。明確な目標設定をすれば、むやみに我慢せず、正しく金を使うことができる」。
江戸時代が長く続いたのは、徳川家の圧倒的な財力も理由の一つであったとされています。質素倹約が壮大な目標を支えていたのです。先人たちの知恵を拝借すれば、節約は苦しいものではなく、アイディア次第で楽しめるものになりそうですね。
踊舞に学ぶ!激動の戦国時代に生きた庶民たちの節約術
続いて踊舞さんには、戦国時代に生きた庶民の目線から、当時どんな暮らしをしていたのかをふまえて節約術を伺います。
戦国時代の庶民は戦に農業にと忙しい!食べるための知恵と工夫
「戦国時代の農民の日常は、農作物を作ること、戦地に赴くこと、主にその二つでございます。武将様が戦に勝って領地を増やすことで、よりたくさんの農作物を収穫できるのです」と、踊舞さんは当時を振り返ります。特にエネルギー源として欠かせない食事は、アイディアの宝庫です。
「合戦に行く前には三日分の食料を用意するので、まとめ作りは必然。たとえば、硬く炊いた米を乾燥させた干し飯(ほしいい)は水でふやかせばすぐ食べられる携行食でした。芋の茎を編んで味噌で煮しめて乾燥させた芋がら縄は、湯に入れればインスタント味噌汁のできあがり」と、実際のメニューを交えながら話す踊舞さん。
戦の場では十分な調理器具もそろわないので、手元にあるものでやりくりする必要がありました。「いつもかぶっている陣笠は鍋になりますし、手ぬぐいも、米をくるんで水に浸して土の中に埋め、その上で火を燃やせばご飯が炊けました」。
踊舞が
現代に提案!!
現代でも一度にたくさんの量を調理すれば光熱費の節約になり、日持ちする料理をストックしておけば、スーパーに足を運ぶ回数が減らせて無駄遣いも減らせます。陣笠を鍋にする、手ぬぐいで炊飯するなどの発想の転換は、キャンプや災害時などに生かすことができそうです。
現代より寒かった戦国時代。その寒さ対策に節約のヒントが!
太陽活動の低下により、戦国時代は「小氷河期」と呼ばれる寒冷期にあたるとされています。ガスも電気もなく、どのように暖をとっていたのでしょうか?
「冬は薄い着物から綿入りのものに変えておりました。あとは荒っぽいやり方だけども、とんがらしをすりつぶして下半身や足に塗りたくる。コショウをひと粒噛むのも、体が温まります」と踊舞さん。
原始的な方法ではありますが、気候に合わせて体温調節しやすい服装を選んだり、飲み物はホットを選んだり、料理にスパイスを取り入れたりと、体を温めることに意識を向けるのもいいですね。
踊舞が
現代に提案!!
電気に頼りすぎない寒さ対策として、現代ではさまざまな便利グッズも売られています。断熱カーテンを使えば、窓からの冷気をシャットアウトし、暖房効率もアップ。お湯を入れるだけの暖房グッズ・湯たんぽも、現代は豊富なバリエーションがそろいます。
自分の用途に合わせてチェックしてみるのがいいでしょう。
農民は全員マッチョ!?ジムがなくても日常生活を送るだけで筋トレに
電化製品も車も存在せず、ほとんどが手作業だった戦国時代。運動量も増え、自然と体が鍛えられていたのではないでしょうか?ここにも節約のヒントがありそうです。
「現世と比べれば、戦国時代の民は体力・筋力はあったと思いますな。機械がないのがあたりまえだもんで、田んぼを耕せば足腰が強くなり、稲を刈れば腕も鍛えられました」。踊舞さんがいつも行っているほら貝を吹くことも、肺活量を鍛えるのに役立ちそうです。
「現世では、車や電車に乗る回数を減らしてみるとか、通勤や通学で少しの距離なら歩いてみるとかできそうですな」。日頃の生活の中で自分に合った運動を取り入れれば、ジムに通わなくても体づくりにつながり、交通費の節約にもなるでしょう。
踊舞が
現代に提案!!
「現世に生きていると恵まれとることを忘れがちになります。不便なことがあった際、不満に思うだけでなく、解決するために創意工夫をめぐらせることが、より良い暮らしにつながると思います」と踊舞さんは締めくくってくれました。
まとめ
今回は、名古屋おもてなし武将隊の徳川家康さんと踊舞さんに、現代にも役立つ戦国時代の節約術を教えていただきました。
意外にも戦国大名たちが質素倹約に励んでいたり、大変な暮らしを強いられる農民の生活の中に創意工夫があったりと、新しい発見があったのではないでしょうか?その裏側には、足るを知ることの大切さや、大変な作業を便利にするために先人たちが重ねてきた努力など、現代の私たちに必要なメッセージが隠されていました。
お二人からのアドバイスと合わせて、ぜひ今日からの節約に取り入れてみてくださいね。
※歴史的記述に関しては、諸説ある場合もあります。