いよいよ夏本番。冷房の効いた部屋で過ごすことが増えてきました。ただ、感染症予防の観点からも、こまめな「換気」が重要です。ただ、換気を気にするあまり、冷房が効かず室温が上昇すると、熱中症の危険も…。
そこで今回は、換気の量や効率、さらに冷房運転をした上での換気方法について実験しました。
暑い夏を快適に過ごすための換気方法について探っていきましょう。
実験概要
- 今回の実験環境・実験方法
- 図1の窓が4つ(窓A~D)ある実験ハウス内のLDKにて以下の条件で実施した。
- ・換気量測定方法:トレーサーガス減衰法
- ・外気温度35℃
- ・外気湿度50%
- ・PMV(温熱環境指標):着衣量0.6clo、代謝量1.0met)
- ・エアコン:26℃設定
- ・扇風機:強、首振
- ・換気扇:強で運転する
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- ア 窓AまたはCを開けた場合
- イ 窓AまたはCを開け、扇風機や換気扇を併用する場合
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- ア 部屋をほぼ横断する窓を開けた場合(窓A&D)(窓A&C)
- イ 部屋をショートカットする窓を開けた場合(窓A&B)
- ウ 窓AとCを開け、扇風機や換気扇を併用する場合
- ※PMV(温熱環境指標)…快適さを表す指標の一つで、温度環境に関する6要素(空気温度、放射温度、気流、湿度、着衣量、代謝量)の組合せで求めることができる。PMVは-3から+3の数値によって表され、±0.5以内が快適な条件とされている。なお、数値の意味は「-3:寒い」「-2:涼しい」「-1:やや涼しい」「0:どちらでもない」「+1:やや暖かい」「+2:暖かい」「+3:暑い」とされている。
窓の数や窓の位置に
よる換気量の違いを
比べてみよう!
まずは、窓の組み合わせによって異なる換気量の違いを調べ、比べてみました。
まず、窓を「閉め切った場合」と「開けた場合」で比べると、換気量はなんと7倍以上!やはり、窓を開けるだけで、換気の効果は絶大です。
窓が1つしかない部屋の場合
大きな窓A(高さ約180cm)と小さな窓C(高さ約100cm)を比較します。
大きな窓Aの方が、小さな窓Cよりも換気量が約3.5倍も大きいという結果に。つまり、窓が1つしかない場合は、大きな窓がある部屋の方が効率の良い換気ができます。
窓が2つある部屋の場合
異なる組み合わせで窓を2つ同時に開けて、換気量の違いを比較します。
部屋の端を斜めに横切る〈窓A&B〉に比べて、部屋のほぼ中心を横断する〈窓A&D〉の方が、換気量が約1.6倍も大きいことがわかります。
これは、部屋の対面の窓を開けることで部屋の中心が風の通り道になり、部屋の空気が大きく動き、換気の効率が良くなったためだと考えられます。
結果:「部屋の対面にある窓を2つ、選んで開ける」
風の通り道を確保することができ、効果的な換気ができる窓を選びましょう。
扇風機や換気扇を
併用すると、
換気量は増えるの?
さらに、換気をする際に扇風機や換気扇を併用してみました。
扇風機は2箇所にありますが、開けた窓の前にある扇風機をONにして実験します。
「外向きに置いた扇風機」と「換気扇」で比較すると、換気量が多かったのは「換気扇」。
外向きに置いた扇風機は、一見換気を促してくれているように見えますが、実は室内の空気を撹拌しているため、換気による気流を妨げてしまうと考えられます。
使い方によっては扇風機の併用は逆効果になる可能性もあること、覚えておきたいですね。
結果:「併用するなら、扇風機よりも換気扇がおすすめ」
特に、部屋に窓が1つしかない場合などは、窓を開ける際に換気扇も運転することで、効率よく換気ができます。
「密(密閉)」を防ぐ
換気方法を
考えてみよう!
感染症予防対策の一環として、こまめな換気が推奨されています。
そこで、厚生労働省が推奨する「1時間あたり2回の換気」という取り組みを、換気量の目安として引用(※)し、換気回数2.0回/hを満たす「換気方法」と「換気時間」を試算しました。
※厚生労働省は「換気の悪い密閉空間」を改善するために、窓の開放による換気回数を「1時間あたり2回」にすることを推奨しています
部屋の空気を2回入れ替えるのにかかる時間
・窓が1つしかない部屋の場合(窓Aの場合):窓を約11分全開で到達
(部屋の面積30.96㎡×高さ2.5 m×2回/h÷換気量873m3/h×60分=10.6分)
・窓が2つある部屋の場合(窓A&窓Dの場合):窓を約9分全開で到達
(部屋の面積30.96㎡×高さ2.5m×2回/h÷換気量1008m3/h×60分=9.2分)
厚生労働省が推進する「換気2回分(部屋の空気総量×2)」に相当する換気量を、一度に入れ替えることができる換気時間として「約10分間」と設定しました。
今回の実験では「10分間窓を開け、その後50分間窓を閉めた場合」の換気量を、相当する「換気回数」として試算し、比較してみます。
この実験のひとつの基準として、上記の表で「2.0回/h」を上回っている換気方法が、この部屋に適した換気方法だと考えることができます。
窓が1つしかない部屋の場合
大きな窓A(高さ約180cm)であれば2回に達しましたが、小さな窓C(約100cm)は基準を満たせませんでした。
窓が2つ以上ある部屋の場合
部屋のほぼ中心を横断する〈窓A&C/窓A&D〉の組み合わせであれば、基準を満たしましたが、部屋の端を斜めに横切る〈窓A&B〉では2.0回に到達しませんでした。
また、この実験結果から、換気扇を併用することでより効果的な換気が行えることもわかります。
ただし、窓Cの場合に限っては、窓と換気扇との距離が近いため、十分な効果は得られませんでした。
結果:「できるだけ大きな窓を、1時間あたり約10分間開ける」
さらに、
「部屋を横断している2つの窓を同時に開けて風の通り道をつくる」
「換気扇を併用する」
という点に気をつけると、より早く、より効果的な換気になりそうです。
冷房が効いている
部屋で、効率良く
換気する方法は?
では、冷房が効いた部屋で換気をする場合は、どんなことに気をつければ良いでしょうか。
今回実験したケースの中から以下の7パターンについて、冷房運転をしながら換気をした際の室内温熱環境(1時間平均値)、消費電力量(1時間積算値)を比較しました。
まず、室内の温度変化を比較します。
窓を開放している10分間は、室内温度が上昇しますが、窓を閉めてから5〜10分後には、設定温度である26℃に戻りました。
これは、扇風機や換気扇を併用した場合もほぼ同様でした。
続いて「PMV」の値から、室内の快適さを比較します。
PMVの数値も、窓を閉めてから5分程度で、快適とされる領域(0~0.5)に戻っています。
換気時間を決めるなどして効率的な空気の入れ替えを意識しつつ、部屋の快適さも適度に守ることで、熱中症対策にもつなげたいですね。
最後に、換気をしながら冷房を運転した場合の、消費電力の変化も実験しました。
窓が2つ以上ある部屋の場合
部屋の窓を10分間全開にした場合、閉め切った場合と比べると、電力量が約89%増加。電気料金に換算すると、約6.4円/h増加する(おとくプラン料金単価25.54円/kWhの場合)。
やはり、閉め切った場合よりも電気料金は上がるという結果になりました。
冷房運転中は、換気のために窓を開けると室温が上がるため、
「10分開けて50分閉める」というリズムをひとつの目安にしてみよう
感染症対策はもちろん、熱中症対策も忘れずに、健康で快適な夏を過ごしてくださいね。