寒くなってきて、エアコンの暖房運転をする機会が増えてきました。
エアコンを使うと気になるのは、部屋の乾燥。加湿器を併用する人も多いと思います。
加湿器にはさまざまなタイプがありますが、今回は「気化式」「超音波式」「スチーム式」の3つの加湿器をピックアップ。
それぞれの効果や省エネ性を比較する実験をしてみました。さらに、エアコンと加湿器を併用した際の快適性や省エネ性についてもご紹介します!
実験概要
- 実験環境
- 外気7℃ 湿度50%RH
- 快適さについて
-
PMV*1 値±0.5以内を快適と定義。
・エアコンを単独で運転する場合:設定温度23℃ 約22%RH
・加湿器と併用運転する場合:設定温度22℃ 約59%RH
- 実験方法
- 加湿により暖かみを感じるため、室温を1℃下げても同等の快適性が得られる湿度の条件を算出し実験した。
- 乾燥対策・ウイルス飛沫対策
- 乾燥対策・ウイルス飛沫対策*2として、室内湿度範囲は40~70%RHを目標値とする。
※1 PMV…快適さを表す指標の一つで、温度環境に関する6要素(空気温度、放射温度、気流、湿度、着衣量、代謝量)から求めることができる。PMVは-3から+3の数値によって表され、±0.5以内が快適な条件とされる。
※2 …内閣感染症危機管理統括庁Webサイトより。乾燥対策・ウイルス飛沫対策のため「室内湿度範囲は40~70%RHが望ましい」とされる。
気化式、超音波式、
スチーム式の
加湿器の特徴
加湿器にはさまざまなタイプがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
今回の実験で比較したのは、こちらの3タイプです。


それでは、この3つのタイプの加湿器それぞれの、加湿スピードや室温、湿度の変化などを調べていきます。
加湿スピードが
速いのは
「気化式」の加湿器
気化式、超音波式、スチーム式を比較すると、最も速く加湿できるのはどの加湿器なのか、相対湿度が37%RH増加するまでの時間を実験します。


加湿するスピードが最も速かったのは「気化式」。続いて「超音波式」という結果になりました。
加湿スピードが遅かったのは、「スチーム式」。
スチーム式は、運転後30分間、蒸気生成のため加湿の効果が低い傾向にあり、湿度上昇が遅くなったと考えられます。
室内温度の時間変化にこのような差が出ました。


スチーム式は運転後に徐々に上がっていくのに対して、気化式と超音波式は約1℃下がっています。
水を気化する気化式、ミストを放出する超音波式は、どちらも吹き出し口の空気の温度が低くなるため、このような結果になったと考えられます。
合わせて、運転後120分~240分のPMV(快適性)と消費電力量についても調べました。


すべての加湿器ともに安定した運転で、PMV±0.5以内と快適な環境を維持しています。
どのタイプも快適な状態を保てていますが、特にスチーム式が、最も暖かな部屋を保てるという結果になりました。
スチーム式は、水を加熱して蒸気にしているため、空気が温められて室温が上がりやすいメリットがある一方、ヒーターによる加熱で消費電力を多く使うため、電気代がかさむというデメリットも見えてきました。
乾燥・感染対策の
ためにも、エアコン+
加湿器併用を推奨
エアコン運転で暖かくすることにより、気になってくるのが部屋の乾燥です。
室内が乾燥していると、ウイルスや細菌感染のリスクが高まります。
乾燥対策、感染対策のためにも、エアコン運転時は加湿器を併用して湿度を保ちたいですよね。
そこで、エアコン単独運転(暖房設定温度23℃)と、3種の加湿器をそれぞれ併用したとき(暖房設定温度22℃+加湿器併用)の温度・湿度と、PMVの変化について調べました。




室内温度は同等でしたが、湿度については「単独運転」と「併用運転」で、明らかな差が出ました。
エアコン単独運転では、湿度は21%RHと急激に乾燥しますが、加湿器を併用することで湿度は52~58%RHとなり、室内は乾燥・感染対策としても理想的な湿度、PMV値としても快適な状態に保つことができました。


加湿器と併用の場合、エアコンの設定温度を1℃下げたにも関わらず、快適域(PMV±0.5)に入っています。
ちなみに、快適域に到達する時間を見てみるとスチーム式がもっとも速く、吹き出し口の温度が下がる気化式・超音波式は少し遅いという結果でした。
加湿器を併用することで、部屋の快適性が保たれるのはもちろん、乾燥・感染対策としても好ましい状態であることがわかりました。
エアコン併用で
省エネなのは「気化式」
「超音波式」
エアコンの稼働が増えることで、電気消費量も一気にかさむ冬。
さらに加湿器も常に一緒に運転するとなると、電気代が気になる人も多いのではないでしょうか。
そこで、加湿器を併用する際の省エネ性についても実験しました。運転開始後180分から240分までの消費電力量の差を比較します。


最も速く快適性が得られたのはスチーム式でしたが、やはり加湿器単体の消費電力量が著しく高い結果になりました。
対して、消費電力量の比較的小さい気化式・超音波式は、エアコンの単独運転と同程度と、とても省エネだということがグラフからわかります。
加湿器を併用すると、エアコンの設定温度を1℃下げた状態でも快適性は保たれ、さらに消費電力量もほぼ同等という結果に。
併用することで電気代がかさむイメージの人が多いかもしれませんが、加湿器の選び方次第では、エアコン単体での運転と同等程度の消費電力量に抑えることができそうです。
エアコンと加湿器を賢く併用すると、快適な室内に保てるのはもちろん、乾燥・感染予防対策にもなり、工夫次第で消費電力量もほぼ変わらず使えることがわかりました。