昔から続く、寒い冬を乗り切る生活の知恵「こたつ」や「半纏(はんてん)」。
半纏(はんてん)は、江戸時代に庶民の間で着用されるようになった防寒着で、関東では「褞袍(どてら)」、関西では「丹前(たんぜん)」とも呼ばれます。
今回は、こうした昔ながらの冬の生活の知恵を、エアコンの暖房運転と併用したときの効果や省エネ性について実験します。
実験概要
- 実験環境
- 外気7℃ 湿度50%RH
- エアコンの設定温度について
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サーマルマネキンによる事前検討*1 により、下記の設定温度で実験。
・エアコン単独で運転する場合:設定温度23℃
・半纏(はんてん)を羽織る場合:設定温度21℃
・さらにこたつと併用する場合:設定温度17℃
※1 サーマルマネキン(人の温熱特性を模擬的に再現する装置)を使用して、厚着時やこたつ併用時の放熱量を計測。厚着時の放熱量が、エアコン単独時の放熱量と同等となる設定温度を事前に計測した。詳しくは、本記事最下部にある実験結果データを参照。
- 実験方法
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・室内の温度とPMV*2を測定
・被験者4名への心理反応実験
部屋着(半袖下着+短パン+スウェット上下+靴下)を着用し、20分間、投げ足座位をさせたのちに下記アンケートを実施。その平均値を示した。
※2 PMV…快適さを表す指標の一つで、温度環境に関する6要素(空気温度、放射温度、気流、湿度、着衣量、代謝量)から求めることができる。PMVは-3から+3の数値によって表され、±0.5以内が快適な条件とされる。
表3. 被験者試験におけるアンケートの書式
半纏(はんてん)を
羽織ると、
設定温度を下げても
暖かい&省エネ
まずは、エアコンの暖房運転で暖かくした部屋で「半纏(はんてん)を羽織る」ことで、人が感じる快適さがどう変化するのか調べてみます。
暖房の設定は23℃を基本としつつ、半纏(はんてん)による効果を期待して、設定温度を2℃下げた状態でも実験しました。
試験条件C は、エアコンの設定温度を2℃下げていますが、半纏(はんてん)を羽織ることで快適に感じられることが、アンケート結果の平均値からわかります。
空間の快適さを示すPMVは、±0.5以内が快適な条件とされますが、表4を見るとどの条件下でも±0.5以内で、「快適」と言える状態だとわかります。
設定温度を下げたぶん、消費電力量は1時間あたり約0.03kWh(約8.3%)の削減に。
半纏(はんてん)で暖を取ることで、快適さを保ったまま、省エネになることがわかりました。
こたつはOFFのままでも
保温効果あり!
こたつの運転による足元の暖かさを調べる前に、電源の入っていないこたつに入り、こたつ布団にどれほどの保温効果があるかを調べてみます。
「こたつのない部屋に座っているだけの状態 試験条件A 」と、「電源の入っていないこたつに足を入れた状態 試験条件D 」では、どのような違いがあるのでしょうか。
それぞれ、エアコンの設定温度も異なる状態で、人が感じる快適さについて実験しました。
こたつの電源がOFFのままでも、半纏(はんてん)を羽織ってこたつに足を入れているだけで温冷感が0.25ポイントも増加していることが、図5のアンケート結果からわかります。
これは、こたつ布団による保温効果が表れていると推測できます。
エアコンの設定温度を4℃下げて19℃にした場合でも、被験者アンケートの「快適感」の平均値は0.25という結果でした。
マイナス値(不快)に下がることはなく、過ごしやすさを保っていることがわかりました。
表5の、快適さを示すPMVを見ても、すべての条件で快適といえる±0.5以内。
エアコンの消費電力量は1時間あたり約0.08kWh(約22.2%)の削減と、大幅な省エネになりました。
こたつは電源を入れていないため、そのぶんの消費電力量は加算されず、こたつはOFFのままでも足を入れるだけで保温効果があることがわかりました。
こたつ併用
+設定温度を下げて、
さらに省エネ
いよいよ、半纏(はんてん)を羽織った状態でこたつの電源をONにして、その快適さを調べます。
エアコンの設定温度は19℃に。
さらに−2℃、17℃に下げた場合についても実験しました。
アンケート結果を見ると、こたつを「中」で運転した 試験条件H は、「下半身に感じる暖かさ」がぐんと上がりました。
下半身はこたつの熱、上半身は半纏(はんてん)による保温のおかげで、エアコンの設定温度を少々下げても、十分な快適性が保たれていることが、アンケート結果の「快適感」「満足感」の平均値からもわかります。
ただ、 試験条件G や 試験条件H のように設定温度を17℃まで下げてしまうと、「手先の温冷感」のみ0以下と、「寒い」側の評価になりました。
エアコンとこたつを併用した際の消費電力量についても調べてみます。
試験条件F の「エアコン19℃設定+こたつ弱中」で併用する場合は、エアコンを23℃設定で運転する 試験条件A と同程度の消費電力量となりました。
さらに 試験条件G の17℃まで下げることで、1時間あたり0.08kWh(22.2%)の削減となりました。
賢く併用することで、暖かさや快適さを維持しつつ、うまく節約することができそうですね。
「サーマルマネキンの計測および試験計画
摂南大学 理工学部 建築学科 教授 宮本征一博士(工学)」
今回の実験の概要や試験方法などの詳細データはこちら