3月も半ばですが、まだまだ朝晩は冷え込み、寒さを感じる日も多いですね。そんな寒い日に気になるのが、ついつけっぱなしにしてしまうエアコンの消費電力量。
そしてもうひとつ、寒い冬のあいだ、あまり外で動くこともなかった人にとって、運動不足による体のこわばりも気になる季節だと思います。
室内で軽い運動や筋トレをすることで体感温度を上げ、それにより暖房の電気代を節約することができれば、一石二鳥ですよね。
本当にそんなことは可能なのか、「運動や筋トレによって、暖房の省エネ&節約ができるのか」について、実験してみます。
実験概要
- 実験環境と暖房の設定温度
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・実験環境:外気7℃/湿度50%RH
・エアコンの設定温度:23℃/21℃/19℃
- 実験概要
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被験者4名に、足踏み、ストレッチ、ラジオ体操、スクワットを以下の2つのスケジュールで実施。運動前後で表2のアンケートを行った。
①6分安静 + 3分運動 + 14分安静
②6分安静 +(3分運動+4分/8分/12分安静)×3セット※1
表1. 運動の種類・内容および運動強度(METs*2)
※1 安静時間は、ストレッチ4分、ラジオ体操8分、スクワット12分
※2 METs…身体活動の強度の単位
出典:国立健康・栄養研究所 改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」
- 実験方法
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・被験者4名の心拍数と消費カロリーを計測
・被験者4名の心理反応実験
表2. 被験者試験におけるアンケートの書式
設定温度を2℃下げて、
運動による省エネに
成功!
運動を取り入れた実験をする前に、まず前提として、被験者には「暖房23℃設定の部屋で安静にした状態」でアンケートを実施し、その際のPMV※3も測定しました。
被験者へのアンケート結果とPMVから、設定温度23度の部屋で過ごすことは、温冷感・快適感ともに0以上の値かつ、PMVも±0.5以内で「快適」であることがわかりました。
※3 PMV…快適さを表す指標の一つで、温度環境に関する6要素(空気温度、放射温度、気流、湿度、着衣量、代謝量)から求めることができる。PMVは-3から+3の数値によって表され、±0.5以内が快適な条件とされる。
実験では、「軽い運動を取り入れることで、暖房の設定温度を下げても快適さは保たれるのか?」というところに注目します。
設定温度を2℃下げた21℃の状態で、被験者には4種類の運動を実行してもらいました。具体的には「足踏み」「ストレッチ」「ラジオ体操」そして「スクワット」。それぞれ、動きの激しさや、体への負荷が異なります。
運動前は、温冷感が0未満と寒い側の評価でしたが、運動直後は0より大きくなり、暖かい側の評価となりました。
快適感についても、運動後にぐんと上昇しています。
運動時の心拍数と消費カロリーを見てみましょう。
足踏みよりもストレッチ、ラジオ体操、そしてスクワットと、どんどん上昇傾向にあります。
アンケート結果と合わせて見ると、心拍数の増加量が大きい運動(今回の場合はスクワットがもっとも大きい)ほど体感は温かくなり、快適と感じる時間が長くなることがわかりました。
足踏みと比べると、「ストレッチ」「ラジオ体操」「スクワット」については、運動直後には温冷感・快適感ともに0(どちらでもない)以上の評価が10分以上、温冷感にいたっては14分以上も続きました。
足踏みのようなちょっとした動きよりも、ラジオ体操やスクワットのように全身をしっかり動かすことで、長いあいだ快適な状態が保たれます。
消費電力量も比較してみます。
エアコンの設定温度を23℃から2℃下げたことで、消費電力量は11.1%の削減となりました。
適度な運動や筋トレをすることで、設定温度を下げても快適性を維持しつつ、省エネになることがわかりました。
4℃下げても、運動の
種類によっては
快適な状態を維持!
次は暖房の設定温度を4℃下げて、19℃設定にして実験します。
運動後、温冷感は寒い側から暖かい側の評価へ変わっていることが、グラフからわかります。
暖かい側の評価を保てる時間は、それぞれの運動レベルによって大きく異なり、足踏みが4分、ストレッチが8分、ラジオ体操が10分、スクワットが14分でした。
設定温度を19℃にまで下げた場合は、ラジオ体操やスクワットなど、比較的激しめで消費カロリーの高そうな運動の方が効果的だということがわかります。
消費電力量については、エアコンの設定温度を23℃から4℃下げたことで、消費電力量は22.2%もの削減に!
先ほどの実験よりも、さらに大幅な省エネ・節約になることがわかりました。
運動と安静を
繰り返すと、快適な
状態が安定する
次の実験では、ストレッチ、ラジオ体操、スクワットの3つの運動に絞って行います。それぞれの運動を3セットずつ繰り返した際の効果について調べることで、運動によって快適な状態がどれくらい保てるかを調べます。
これまでの実験結果を参考に運動の効果時間を考慮し、運動後の安静時間を、ストレッチ4分、ラジオ体操8分、スクワット12分に設定しました。
図8. 被験者試験のアンケート結果(設定温度19℃・運動3セット)
この結果を見てみると、いずれも温冷感・快適感ともに0以上の値を保てていることがわかります。
暖房の設定温度が19℃と低めでも、コンスタントに体を動かすことで、快適な状態を保つことができます。
ただ、スクワットは2セット目以降、「発汗により寒いと感じた」という意見も挙がり、それがグラフ中の快適感が減少にあらわれています。
特に激しい運動をする際は、発汗により逆に体を冷やしてしまう可能性があるので、その点には注意が必要です。
今回の実験の概要や試験方法などの詳細データはこちら