カテエネ・ライブラリー
"本が好き!"と公言する方たちによるブックレビューです。
毎回テーマを決めて、思い浮かんだ小説や漫画、絵本、地図のほか
新刊・既刊を問わずオススメの本を紹介し、本を通じて"より楽しくなる日常"をお届けします。
母と過ごす休日にはちょっと意外な贈り物を!

高頭佐和子さん(丸善・丸の内本店 文芸書担当)
みなさまは母の日をどう過ごされましたか?
若かりし頃の母親ってどんなだったかな?おしゃれについてのポリシーや旅の経験について、知りたいけれど深くつっこめなかったりします。そんな時は本の力を借りて母親をほんの少し深く知るきっかけづくりをしてみませんか?
第2回のテーマは「母」です。
選書をお願いしたのは、東京駅の目の前にある丸善・丸の内本店の高頭佐和子さん。店舗2階にある文芸書フロアの責任者です。また、「本屋大賞」*の実行委員としても活動している書店員です。
* 書店員1人ひとりが自分のお金で買った本を、自分の時間を使って読み、投票して選ばれた賞。業界を盛り上げたい、そしてお客さまが本屋に足を運んでくださるようにとの思いからスタートし、2017年に14年目を迎えています
丸善・丸の内本店はビジネス街にありますが、「本を贈りたい」と来店されるお客さまも少なくありません。高頭さんは、問い合わせを受けるとまず贈る相手は本が好きかどうか、どんな趣味を持っているか、どんなシーンで渡すのかなどを聞くそうです。
「私もそうですが、久しぶりに母と食事をしたり、買い物をしたりするだけでは普段通りだなと感じてしまいます。せっかくだから、いつもとちょっと違う会話を楽しみたい。そんな時、お母さまが興味を持っている分野でも、きっと自分では気付かないだろうという本や、楽しみを共有できる本をオススメしてみませんかと提案しています」
例えばファッション。LINEやパソコンのチャットなら画像を見せ合ったりできますが、電話ではなかなか話は膨らみません。久しぶりに会った母親に「こんな本見つけたよ。興味あるかなと思って」と贈ることで、いつもとは違った展開に。
「本はいろんな値段から選べる、というのがプレゼントとしていいところだと思います。例えばこの『自由を着る』は、私も大好きな本です。著者の光野さんは、ファッション業界で活躍しているエッセイスト。彼女が長年愛し続けてきたワードローブ(その人らしい衣装や衣装の組み合わせ)の写真と何故それでなくちゃならないのかが綴られています。人にはそれぞれ好きな服があります。この本をきっかけに、お母さまのこだわりが聞いたり、それを受けてご自身も語ってみてはどうでしょうか」
高価なものからおもちゃのネックレスまで、著者にとって身近なアイテムがたくさん登場します。
「特に女性にとって何を着るかは、生きることにつながることではないでしょうか?娘はお母さんのおしゃれを見て、真似をしたり学んで成長することも多いですよね。大人同士になって初めて話す価値観は、母娘にとって新しい楽しみのはじまりになるかもしれませんね」
杉浦さやかさんの『世界をたべよう! 旅ごはん』は、世界24カ国、国内21軒のお店で食べた食事をイラスト&エッセイで綴った本です。誰が見ても、読んでも楽しいのがオススメの理由。
「想像の世界でも旅を楽しむことができる本です。もし何度も一緒に旅行したことのある家族なら『ココ行ったよね!』『コレ美味しかったよね!』と会話が弾みます。旅行の細部は覚えていなくても、意外と食べたもののことは覚えているんですね。それこそ旅先の駅弁や朝ごはんなど、何てことない食事もクリアに思い出せたりします。まだ一緒に旅をしたことのない方でも『ココ行ってみたいよね?』と想像が膨らみます」

選者:高頭佐和子(たかとう・さわこ)さん
丸善・丸の内本店 文芸書担当
大学卒業後、書店員に。現在は丸善・丸の内本店の2階にて文芸書担当および売場長を務めている。2004年に設立された「本屋大賞」の実行委員としても活動している。