カテエネ・ライブラリー

"本が好き!"と公言する方たちによるブックレビューです。
毎回テーマを決めて、思い浮かんだ小説や漫画、絵本、地図のほか
新刊・既刊を問わずオススメの本を紹介し、本を通じて"より楽しくなる日常"をお届けします。

第4回

大人になってからの涙

長谷川 朗さん(ヴィレッジヴァンガード下北沢店 書籍担当)

ふとした瞬間に「何かが足りない」と気付くことありますよね!?そんな時は何で埋めていますか?食べたり、遊んだり、癒されたり……でも寝て起きたらまた足りないってことに。一番長続きするのは体の内側から"ジーン"と痺れること。「とにかく感動したい」という方に贈る物語を紹介します。

第4回の選書をお願いしたのは、ヴィレッジヴァンガード下北沢店で副店長を務める長谷川朗さん。小学校講師を1年間務めた後、地元福岡の同社にアルバイトとして入店。そこで、今でも尊敬する名物店長との出会いがあり就職し、小倉店、新潟店、高円寺店を経て下北沢店にたどり着いたという経歴の持ち主です。

長谷川さんは、書籍全般の責任者を務めながら、TVやラジオ、雑誌の取材を受ける広報の役割を担っています。「面白い本教えてください」「サブカルの入門書といえば何ですか?」といった問い合わせを受けると、彼は迷路のような店内を案内しながら、お客さまを新しい世界へと案内していきます。

BLUE GIANT

書籍情報

石塚真一 著『BLUE GIANT』小学館(648円/税込)
(C)石塚真一/小学館

「若い人、音楽にこだわる人、男性、女性に関わらず、マンガのパワーを感じられる1冊として『BLUE GIANT』をオススメします。マンガなのに音が聞こえてくるのが凄い!ピアノの鍵盤をかき鳴らす迫力、観客が身奮いする瞬間の音が、絵から伝わってきます。毎回読むたびに鳥肌が立ってしまうほどで、興奮して涙がジワッと湧き上がってきます。ストーリーは、10代の少年たちがジャズミュージシャンを目指して階段を上っていくという内容で、ひとことで言えば努力して結果出して……というスポ魂モノです」

音楽に詳しいわけではありませんと長谷川さんは前置きした上で「それでも読み始めたら止まらなかった」と話します。作者の石塚真一氏は山岳救助を題材にしたマンガ『岳』(小学館刊)で一躍注目を集めました。2作品続けてのヒット作で、前作とは異なる熱量が1本1本の線に宿っています。

おなみだぽいぽい

書籍情報

後藤美月 著『おなみだぽいぽい』ミシマ社(1620円/税込)

「感動したい!」という衝動は、誰にでも、ある日急に湧いてくるものです。壮大なストーリーに感動する人、ピュアな感情に触れて魂が揺さぶられる人など、さまざまです。例えば、読者の置かれている状況と本のストーリーがシンクロしたりすると感情移入しやすくなります。

「『おなみだぽいぽい』は、ただ泣くことを肯定してくれる絵本です。子ども時代や思春期、大人になってからグッと我慢してきた記憶をフラッシュバックさせてくれます。そして、あぁ泣いていいんだなぁと思わせてくれます。心の奥に仕舞っていた出来事や感情が解き放たれる感覚です」

スーホの白い馬

書籍情報

大塚勇三 再話/赤羽末吉 画『スーホの白い馬』福音館書店(1404円/税込)

長谷川さんは感動すると泣くタイプ。それに気付いたのは働き始めてからだそうです。その時読んだ本が『スーホの白い馬』。小学校の講師として、最後の授業(国語)で"読み聞かせ"のために選んだ本です。

「担任の先生と、子どもたちを泣かそうとたくさん練習して臨んだわけですが、子どもたちの顔を見ながら感情を込めて読んでいる最中に、私自身がホロホロと泣いてしまったのです。子どもたちはというと反応は薄かったのですね(笑)。私自身、映画を観て泣いたことはありますが、大人になって人前で泣いたのはその1回くらいかな」

競馬大会に出場し優勝したモンゴルの青年スーホは、権力者に大切に育てた白い馬を奪われ命からがら村に帰ってきた。馬は逃げ出しスーホの元へ帰ってくるも亡くなってしまう。幾日か後、夢に白い馬が現れ……。『スーホの白い馬』はいわば不条理な物語ですが、長谷川さんにとっては「すごく大切な1冊になっている」と言います。

乱と灰色の世界

書籍情報

入江亜季 著『乱と灰色の世界』KADOKAWA(670円/税込)

『乱と灰色の世界』は、人間界の灰町に住む魔法使いの一家「漆間(うるま)家」が繰り広げる現代ファンタジーです。主人公は大人に変身できる魔法使い少女の乱(らん)。はじまりはラブコメの気配が漂いますが、しっかりしたメッセージが込められた作品です。また、絵のタッチや設定、ストーリー展開には数々の名作の雰囲気が入りこんでいます。

「読んだきっかけは女性スタッフの間で流行っていたから。どんなものかと読み進むうちにハマリました。そして、特に6巻はメチャメチャ泣けます。戦闘シーンも満載で人間界と魔法界を骸虫(むし)から守る戦いがクライマックスを迎えます。一方で、10歳の乱が恋をした相手の鳳太郎(おうたろう)が骸虫の世界に引き込まれ対立し、彼女を支えてきた男の子の日比(ひび)も交えて、人間関係がひと段落します。当時小田急線で、ボロボロ泣きながら帰ったことを思い出します。ずっとポップに書き続けていますが、ぜひジブリの宮崎先生に映画化してほしい作品です」

Profile

選者:長谷川 朗(はせがわ・あきら)さん

選者:長谷川 朗(はせがわ・あきら)さん

ヴィレッジヴァンガード下北沢店 書籍担当

小学校講師から書店員へ。中学生の頃よく通ったヴィレッジヴァンガードにアルバイトで採用され、名物店長に刺激され正社員に。下北沢店では副店長(役職としては次長)を務めており、取材対応なども担っている。感動するとホロリ泣いてしまう。

あなたの契約
まってるニャ

新規ご加入のお客さま

引越し
開始手続き

他社からの
切替え