カテエネ・ライブラリー

"本が好き!"と公言する方たちによるブックレビューです。
毎回テーマを決めて、思い浮かんだ小説や漫画、絵本、地図のほか
新刊・既刊を問わずオススメの本を紹介し、本を通じて"より楽しくなる日常"をお届けします。

第7回

パワーがほしい!

森 暁子さん(ジュンク堂書店 池袋本店)

秋も深まり、街の木々も少しずつ色づき始めてきました。こんな時期はなんとなくもの悲しげな気分に陥りがちです。しかし、今はまさに"読書の秋"。そんな気分は本からパワーをもらって吹き飛ばしてしまいましょう。今回、紹介するのは「パワーがほしい!」というときに、アクティブな気分にさせてくれる2冊です。

選書をお願いしたのはジュンク堂書店池袋本店で、主に人文書を担当されている森暁子さん。専門的な内容の本が多い売り場での書棚作りは、関連性を意識しているそうです。

「単純にジャンルで区切って並べるだけでなく、研究テーマの関連性や研究者の師匠筋や弟子筋で並べるなど、工夫して陳列するようにしています。日々、数多くの本が出版される中で、キーワードとキーワードの間にどういうつながりがあるかを考えながら棚を作っていく作業は、とても面白くてやりがいのある仕事です。自分があれこれと考えながら作ったコーナーで、お客さまの良い反応を見ることができた瞬間は、やっぱりとてもうれしいですね」

「本の目利き」になりたいという森さん。担当する専門性の高い人文書を、お客さまにいかに広く届けるかを考えながら工夫する日々だという。
大好きな本の仕事をしながら、家事に育児に家庭生活を切り盛りしているパワフルな森さんが、「パワーがほしい!」をテーマにセレクトした2冊がこちらです。

原色 日本島図鑑 改訂第2版

書籍情報

加藤庸二 著/『原色 日本島図鑑 改訂第2版』/新星出版社(2700円/税込)

「パラパラと眺めているだけで、ワクワクして元気になってくるんです」。そう言って森さんがすすめるのは、日本にあるすべての"有人島"を、美しいカラー写真で紹介する『原色 日本島図鑑』です。島々の個性や力強さが凝縮された一冊です。

「著者の加藤庸二さんは、『島のスペシャリスト』として知られるフォトグラファーです。この本には北から南まで日本の443の島々が掲載されています。その島ならではの文化や風習、祭や行事などが写真付きで詳しく説明されているので、情報量が多く、見るたびに発見があります。『こんなところにこんな島があったのか』『この島に行ってみたい!』と、ずっと飽きずにページをめくっていられます」

この本には、島の名前はもちろん、おおよその位置から島の位置を検索できる索引つき。人口や面積、アクセスまでデータもしっかり掲載されていて、ふんだんに盛り込まれた写真とあわせて島のイメージが伝わってきます。

「仕事に家事に忙しくて疲れているときは、船で渡った先に流れる、ゆったりとした"島時間"について思いを馳せるだけで癒されます。ちょっと疲れたときに隙間の時間を見つけて『今日はこの島を見てみよう』と、ひとつの島について読んでみるだけで、旅情をかき立てられると同時に、気持ちが上がってパワーが湧いてきます。家族みんなで見るのも楽しいので、帯文に書いてあったのですが、ぜひ"一家に一冊"置いておきたいお勧めの本です(笑)」

これでいいのだ!瀬尾ごはん ―台所まわりの哲学

書籍情報

瀬尾幸子 著/『これでいいのだ!瀬尾ごはん ―台所まわりの哲学』/ちくま新書(1058円/税込)

パワーがほしいときに必要なのはおいしいごはん。でも、料理するのは億劫で……という人でも思わず料理をしたくなるのが、瀬尾幸子さんの『これでいいのだ!瀬尾ごはん』です。食生活を明るく前向きにしたくなる1冊です。

「著者・瀬尾幸子さんの料理は、とにかくシンプルでおいしいものばかり。この本では、素材の味を生かした、焼いただけ、切っただけ、煮ただけという手のかからない料理が数多く紹介されています。
子育てをしながら食事を作っていると『今日も頑張って料理して、家族にちゃんとしたものを食べさせなきゃ』という気持ちになるのですが、『焼いただけ』のような料理も決して手抜きではないということを教えてくれる本なんです。まさにタイトル通り「これでよかったのか!」と目からウロコが落ちてきて、読んでいるだけで『よし、料理をしよう!』と、気持ちが奮い立ってきます」

料理のレシピだけでなく、食材の保存方法、料理道具の選び方や使用法、買い物のコツまで、丁寧に解説されているところもうれしいポイント。

「日々、料理をしている人には男女を問わずおすすめです。毎日の食事づくりに義務感のようなものを抱いている人は、瀬尾さんの料理に対する考え方、スタンスにはきっと感銘を受けて、解放的な気持ちになるはずです。瀬尾さんの料理はお酒に合うものも多く、お酒が好きな私としてはそういう意味でも気持ちがアガる一冊ですね(笑)。読めばきっと前向きに料理に取り組めるパワーがもらえると思いますよ」

Profile

選者:森暁子(もり・さとこ)さん

選者:森 暁子(もり・さとこ)さん

ジュンク堂書店池袋本店 課長 人文書担当

学生時代から書店でアルバイトをして経験を積み、「"本の目利き"になりたい」という思いから大学卒業後にジュンク堂書店に就職。さまざまな出版社の本が集まる書店という場で「"今動いている本"を自分の感覚で動かしていくことが書店員という仕事の面白さです」と語る。

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