カテエネ・ライブラリー

"本が好き!"と公言する方たちによるブックレビューです。
毎回テーマを決めて、思い浮かんだ小説や漫画、絵本、地図のほか
新刊・既刊を問わずオススメの本を紹介し、本を通じて"より楽しくなる日常"をお届けします。

第8回

疲れを癒やす

佐々木修一さん(文禄堂AYUMI BOOKS高円寺店 店長)

秋も少しずつ終わりに近づき、朝晩の寒さで冬の到来を感じる時期です。そろそろ1年の疲れも溜まってきたのではないでしょうか。秋の夜長はそんな疲れを取るためにも、ベッドの中でゆっくり本を読みながらリラックスしてみませんか。今回は「疲れを癒やす」をテーマに、ほっと癒やされる3冊をご紹介します。

選書をお願いしたのは、文禄堂AYUMI BOOKS高円寺店 店長の佐々木修一さん。書店員歴20年以上のベテランで、あゆみBOOKS高円寺店からリニューアルして新形態になった店舗を切り盛りしています。

「文禄堂という名前の由来は、あゆみブックスの前身で江戸時代に栄えた『書肆(しょし)文禄堂』です。「書肆」は、書物を出版したり、売ったりする書店のことで、谷崎潤一郎の作品に名前が出てきたこともあるんですよ。『さまざまな文化や娯楽を追求した"街のための本屋"』をコンセプトに、ここ高円寺店では多彩なイベントも開催しています」

佐々木さんが「疲れを癒やす」をテーマに選んだ3冊がこちらです。

にっぽんスズメ歳時記

書籍情報

中野さとる 写真/『にっぽんスズメ歳時記 WE ♡ SUZUME』/カンゼン(1512円/税込)

「疲れているとき、かわいい動物の写真を見ると心がほっとして、癒やされませんか?」

そう言って最初に佐々木さんがおすすめするのは、『にっぽんスズメ歳時記』。インスタグラムで大人気のスズメ写真家・中野さとるさんの作品集です。

「僕自身、もともとスズメが大好きなんです。日本のどこにでもいる鳥で、普段はほとんど気にすることがないかもしれませんが、よく見ると表情や仕草が豊かで本当にかわいいんですよ。街で見かけるとついつい目で追ってしまいます。この本はそんなスズメのかわいらしさに着目した一冊です」

愛らしいスズメの写真がたっぷり載っているのはもちろん、意外と知られていないスズメの生態の解説や雑学知識も豊富に掲載されています。スズメを主人公にしたマンガ『きょうのスー』などで知られるマツダユカさんの描き下ろしエッセイマンガ『スズメかんさつものがたり』も収録されています。

「この本を読んでスズメの生態を知ることで、日常の中にある小さな自然を振り返るきっかけにもなると思います」

空の絵本

書籍情報

長田弘 作、荒井良二 絵/『空の絵本』/講談社(1512円/税込)

2冊目の本は『空の絵本』。雨が降り始めて、やがて嵐になっていく空模様。少しずつ晴れ間が見え、日が暮れて、夜空に星がいっぱいに輝いていく――そんな空の様子の移り変わりを描いた絵本です。

「絵を描いている荒井良二さんは、荒々しくて大胆なタッチで知られていますが、この絵本はまた違った写実的な作風で、とても美しく空を描かれています。長田弘さんのシンプルながら詩的な文章もとても印象的です。疲れているときは、この絵と文がそれぞれじんわりと心に染みてくるんですね」

絵本ですが、子どもだけでなく大人も楽しめるのが魅力だとも語る佐々木さん。

「絵本として子どもが楽しめるのはもちろんですが、大人だからこそ感じ取れる情感が味わい深いんです。空の移り変わりは人の生き方や人生にも重ね合わせることができるかもしれません。そうやって、いろいろと読み解いていくことも面白いですし、私もこれから年を重ねていくことで、また違った読み方ができるのではないかと思っています。人によって味わいの変わる本ですね。秋の夜にぴったりではないでしょうか」

ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方

書籍情報

マイク・ヴァイキング 著/『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』/三笠書房(1728円/税込)

3冊目は、『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』。今回のテーマにもう少し踏み込んで、自分で"癒やしの空間"を作るための本といえるかもしれません。

「タイトルの"ヒュッゲ"はデンマーク語。『人との温かいつながり』『心やすらぐ空間』『満ち足りた時間』などいろいろな意味合いがあって、ひと言で簡単に日本語に翻訳できないようです。この本は、『世界一幸せな国』と呼ばれるデンマークの人たちが大切にする"ヒュッゲ"をどうすれば作り出すことができるのか教えてくれる本なんです」

ヒュッゲは、照明、食べ物や飲み物、衣服、インテリア、居心地、自然とのふれあい、ライフスタイルなど、実に数多くの要素から成り立っています。本書ではそれら1つひとつを丁寧に解説。私たちでもすぐに実践できるところがうれしいポイントです。

「デンマークの人たちは1年間に1人あたり6キログラムもキャンドルを消費するそうです。そのぐらいキャンドルの灯はデンマーク人の心を満たしてくれるものなのでしょう。実際、炎の揺らぎは自然界にしかないもので、癒やしの効果があって、ぼんやりと眺めているだけでも心が落ち着いてくるそうです。さっそく試してみようと道具を揃えて居間にキャンドルを設置してみたんですが、妻からは『いったい何を始める気なの?』と驚かれてしまいました(笑)。それにめげず、この本を参考にしてこれからも自分なりの癒やしの空間を作っていきたいと思います」

まだ日本ではあまり馴染みのない"ヒュッゲ"ですが、癒やしや幸せのヒントが満載です。

Profile

選者:佐々木修一(ささき・しゅういち)さん

選者:佐々木修一(ささき・しゅういち)さん

文禄堂AYUMI BOOKS高円寺店 店長

書店員として20年以上の経験を持つベテラン。サブカルチャーが盛んで、老若男女が行き買う駅前のランドマーク的な存在の文禄堂AYUMI BOOKS高円寺店を切り盛りする。本だけにこだわらず、雑貨やドリンク販売、イベント開催など新しいことに取り組む一方、「通勤、通学客の多い駅前の書店なので雑誌販売にも力を入れています。いろんな雑誌がビシッとうまく並ぶと気持ちいいですね」と笑う。

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