地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第1回
田原市のブロッコリーを訪ねて
渥美半島にある田原市は、豊かな自然と温暖な気候に恵まれた全国的にも有名な農業先進地域です。中でも田原市の「ブロッコリー」は、出荷量が愛知県下1位(平成22年)、市町村別では全国でも上位となる特産品です。つぼみが粒揃いで形もよく、身がぎゅっとしまっているのが特徴で、10月下旬~5月上旬と長期にわたって出荷されています。今日は、JA愛知みなみの鈴木課長と杉原さんにご案内いただき、その“おいしさ”の秘密を取材してきました。
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おいしさがぎゅっとつまった田原育ちのブロッコリー
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寒い時期でも緑豊かな田原のまち
田原市をクルマで走ると目を引いたのは、沿道の風景が青々としていること。まだ寒い時期なのに、あちこちで緑色の葉に覆われた畑を見ることができます。あれはキャベツ?はたまた大根?などと首をかしげつつ、約40年前から家族でブロッコリーを生産されている河合太一郎さんを訪ねました。案内されたのは、元気な緑色の葉っぱが生い茂る畑。来る途中で見た畑もかなりの数がブロッコリー畑だったと教えてくれました。
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寒空でも平気!
葉っぱに包まれた“箱入り娘”大きくて厚みのある葉っぱの中心をのぞくと、見覚えのあるブロッコリーを発見!私たちが食べているブロッコリーは植物の花の部分で、力強い葉っぱに守られてすくすく育っていました。年中食べられるからハウス栽培の温室育ちかと思いきや、ブロッコリー栽培には強い風がかかせません。特に田原市は冬になると沿岸部特有の強い風が吹き、体感温度も下がります。実はその冷たく強い風こそが、おいしさがぎゅっとつまったブロッコリーを育てる秘密でした。
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育てる品種は20数種類!でもなんで?
ところで、通常の出荷時期は長くて2~3ヶ月であることに対し、田原市産は10月下旬~5月上旬と、約半年にもわたって長く出荷できるのはなぜでしょうか。JA愛知みなみの鈴木課長と杉原さんに聞いてみました。
「ブロッコリーの品種を替えて収穫時期をずらしているからです。特に冬は20数種類の品種をローテーションで育て、収穫時期を調整しています。さらに毎年新しい品種を10~20ほど試験栽培し、3年ほど様子を見て、気候や土壌に適していればローテーションに取り入れています」とのこと。
品種を数多く育てている産地は他にもあるけれど、20数種類も取り入れているのは田原市ならでは。年中おいしいブロッコリーを食べられるのは、生産農家さんの絶え間ない努力のおかげでした。
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約40年の田原市産ブロッコリーの歩み
ブロッコリーはアブラナ科の緑黄色野菜で、原産地は地中海沿岸とされています。田原市で生産が始まったのは約40年前。ちょうど市内に豊川用水の全面通水が実現し、生鮮野菜類の栽培が可能になった頃でした。ブロッコリーはお年寄りでも栽培しやすく、卸値が比較的安定している点が生産農家さんに好まれ、広がったそうです。
病気にも強く、育てやすいブロッコリーですが、形と質の良いものをつくるためには基礎の土づくりがとても大事。河合さんのところでは近くの畜産農家さんから堆肥を分けてもらい、土の栄養にされています。
田原市の新鮮な野菜を使った「mogu(もぐ)」のランチバイキング
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寒い時期でも緑豊かな田原のまち
田原市産の旬の食材にこだわり、心も身体も温まるお料理を提供しているのが、サンテパルクたはら内にある旬彩だいにんぐ「mogu(もぐ)」。11時から15時までのランチはバイキング形式で、毎日40~50種類ほどの総菜やデザートが楽しめます。
「mogu」では田原市内で生産された野菜を中心とした食材を使っています。責任者の河合美里さんは「お客さまには『おいしかった、楽しかった』という思いで帰ってもらいたい」と語り、食材の新鮮さと風味を生かしたメニューを毎日考えているそうです。
旬のブロッコリーを使った人気メニューが「ブロッコリーの天ぷら」。衣に閉じ込められたうまみと甘みが人気の秘訣です。定番となっている「ブロッコリーの白和え」や、日によっては「ブロッコリーのシフォンケーキ」など、デザートでもいただけます。
- 愛知県田原市野田町芦ヶ池8 TEL.0531-24-5400 営業時間11:00~15:00(入店ストップ14:00)
- 定休日 木曜日(木曜日が祝日の場合は営業。翌日がお休みとなります)
- 料金案内 大人¥1,480 子ども(小学生)¥800 幼児(3歳以上小学生未満)¥500 乳児(1歳以上3歳未満)¥300
- ホームページ http://www.ja-aichiminami.or.jp/shun/contents/mogu/
ブロッコリーがおいしいピュレやソースに!
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「遊食ダイニング 風雅」のご主人、渡邊隆志さんは名古屋市のご出身。結婚を機に移り住んだ田原市で、その豊かな食事情に驚いたそうです。例えば、近所からいただく“おすそわけ”の野菜はコンテナ単位が当たり前。同時に、傷や変形があって出荷できない野菜の多さを知りました。こんなに豊かな田原市をもっと全国に広めたいと考えた渡邊さんは、「made in田原」というブランドを設立。田原市産の野菜や肉をおいしく加工した商品を開発、販売しています。
「made in田原」の看板商品、「魔法の万能ピュレ」は、一袋に100gもの田原市産ブロッコリーとキャベツが使われており、栄養満点。また「キャベツとブロッコリーの田原ミートソース」は、田原市産ブロッコリーとキャベツに加え、田原ポークを使用した、まさに田原の恵みの結晶。一般的なトマトソースではなく、アンチョビとバターを利かせた大人風味です。
- 愛知県田原市田原町萱町1 セントファーレ2階 TEL.0531-22-3961
- 営業時間 ランチタイム11:30~15:00(ラストオーダー14:00)
ディナータイム17:30~ラスト(ラストオーダー 平日23:00 金曜日、土曜日、祝前日25:00) 定休日 木曜日 - ホームページ http://www.fuga-centfare.com/
田原市の農産物を守る「小さな仕事人」
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ブロッコリーに加えて田原市の特産といえばメロンやイチゴ。大きくて形のいい果実を省力で栽培するには、ミツバチによる花粉交配がかかせません。現在、養蜂業を営む鈴木良近さんも、お父さんの代は近隣の農家さんに花粉交配用としてミツバチの貸出・販売が主だったそうです。「花半島・あつみ」といわれる渥美半島は、ミツバチが集めてくる蜜も良質。そのおいしいはちみつを食べて育った鈴木さんは本格的に養蜂業をスタートさせ、現在は4種類のはちみつを販売されています。
渥美半島の花そのもの
鈴木養蜂園では熱処理などの手を加えることなく、本物の完熟はちみつを販売しています。「菜の花」、「クロガネモチ」、「みかん」、そして「百花蜜」。どれも甘くておいしいですが、風味や味にそれぞれの特徴があります。お店の方が丁寧に説明してくれるので、迷ったら聞いてみるのもよし。蜂場は店舗の近くにもあるので、見学可能です。ぜひお店の方に一声おかけください。
- 愛知県田原市加治町沢57-1 営業時間 10:00~18:00 定休日 木曜日 TEL.0531-22-3724
- ホームページ http://atsumi-hantou888.jp/
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田原市のブロッコリーはここで買えます
サンテパルクたはら「産直広場 ふれあいのmori(もり)」
旬彩だいにんぐ「mogu」と併設している「産直広場 ふれあいのmori」。ブロッコリーをはじめ、近隣の農家さんが持ち込む旬の野菜を買うことができます。「made in田原」の「魔法の万能ピュレ」「キャベツとブロッコリーの田原ミートソース」も販売しています。
- 愛知県田原市野田町芦ヶ池8 TEL.0531-24-5400 営業時間 9:30~17:00 定休日 木曜日(木曜日が祝日の場合は営業。翌日がお休みとなります)
- ホームページ http://www.ja-aichiminami.or.jp/shun/contents/mori/
今日はおうちで「農食レストラン」
ブロッコリーはビタミンC、カロチン、ビタミンB1・B2、カリウムなどを豊富に含んだ栄養価の高い野菜です。特にビタミンCはレモンの2倍もの量を含み、身体の免疫力を高める食材としても注目されています。
どんな調理法とも相性がよく色味も鮮やかなので、おもてなし料理にもピッタリ。そんなブロッコリーをたっぷり食べられるレシピをご紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
〈材料:2人前〉
- ブロッコリー 1/4株
- タマネギ 1/4個分
- ニンジン 20g
- シイタケ 2個
- ちくわ 1/2本
- 天ぷら粉 60g
- 冷水 100ml
- 揚げ油
- てんつゆ
- 大根おろし 各適量
〈作り方〉
- ブロッコリーは小さめの小房に分けて、茎は皮をむいて(point1)薄切りにする
- ニンジンとシイタケは千切りに、タマネギ、ちくわは縦半分に切って薄切りにする
- ①と②を混ぜて天ぷら粉大さじ1(分量外)をまぶしたら15cm×15cmに切ったオーブンシートの上にのせる
- フライパンに2㎝くらいの高さまでサラダ油を入れて170℃に熱する
- 天ぷら粉と冷水を混ぜて、③の上に大さじ2くらい回しかけたらオーブンシートごと④に入れる(point2)
- 下がこんがりとなってきたらオーブンシートごとひっくり返してシートをはがし(point3)、両面に焼き色がついたら取り出す
- てんつゆと大根おろしを添えて盛りつける
おいしく作るポイント
茎の部分にも栄養がたっぷり!厚めに皮をむいて使い切りましょう
オーブンシートごと油に浮かせるように、そっと入れればカンタン!
オーブンシートごとひっくり返す。この方法ならバラバラにならず、キレイに揚がります
〈材料:2人前〉
- ブロッコリー 1/4株
- マッシュルーム 4個
- ニンニク 2片
- エビ 4尾
- オリーブオイル 100ml
- 魔法の万能ピュレ 大さじ3
- 塩 小さじ1/3
※「魔法の万能ピュレ」の代わりにアンチョビをお好みで加えてもOK!
〈作り方〉
- ブロッコリーは小房に分け(point1)、茎は皮をむいて薄切りにする。ニンニクはつぶして芽を取る
- エビは下処理をし(point2)、3%の食塩水で洗って水気をふく
- 小鍋にオリーブオイルとニンニクを入れて弱火で香りがたつまで加熱したら、ブロッコリーを入れて1分ほど炒める
- 続いてマッシュルームとエビ、魔法の万能ピュレを加えて炒め(point3)、エビの色が変わったら塩を加えてさっと混ぜて器に盛りつける
おいしく作るポイント
大きめのブロッコリーは茎に切り目を入れ、手で裂くようにするとつぼみが落ちません
エビの下処理は、殻を剥いたら背中を包丁で開き、背わたを取るときれいに取り除けます
油を全体にからめるように混ぜながら炒めるのがコツ!
〈材料:2人前〉
- ブロッコリー 1/4株
- ツナ缶 1/2缶
- 卵 2個
- トマト 1個
- バター 20g
- 魔法の万能ピュレ 大さじ1
- マヨネーズ 大さじ1
- ベーグル 2個
- 牛乳 大さじ1
- 塩こしょう 各適量
- オリーブオイル 小さじ2
※「魔法の万能ピュレ」がなくてもおいしくいただけます!
〈作り方〉
- ブロッコリーは小房に分ける
- フライパンにオリーブオイルを熱して①を炒めて塩こしょうをする
- ボウルに卵を割りほぐし、②とツナ、牛乳、塩こしょうを混ぜる
- ②のフライパンをさっとふいてバターの半量を溶かし、しっかりと熱したら③の半量を加えてざっと混ぜ(point1)、固まってきたら形を整えて取り出す(point2)。同様にもう一つ作る
- 魔法の万能ピュレとマヨネーズを混ぜてブロッコリーマヨネーズソースを作り、半分に切ったベーグルに塗る
- トマトを4枚にスライスして、2枚ずつベーグルにのせたら上にオムレツをのせて、好みでさらにブロッコリーマヨネーズソースをかける
おいしく作るポイント
オムレツは中火で手早く混ぜるとふんわり仕上がります
冷める前に丸く形を整えるとベーグルにぴったりな大きさになります
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キャベツとブロッコリーを使った「made in 田原」ブランド
塩味をベースにガーリックとアンチョビの風味が効いたピュレ状の調味料。濃いめの味なので1つで味が決まる万能さが名前の由来。今回は「ブロッコリーのアヒージョ」「ブロッコリーとツナのオムレツベーグルサンド」の2つに使用しました。
「魔法の万能ピュレ」
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