地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第2回
三重県多気郡多気町の大豆を訪ねて
しょうゆ、味噌、豆腐などの日本食に欠かせない大豆。山と畑に囲まれた内陸部では、肉や魚に代わる大切なタンパク源として古くから愛されてきました。身体にうれしい栄養素たっぷりの大豆を三重県のほぼ中央に位置する多気郡多気町(旧勢和村)でさかんに栽培がおこなわれています。地元の大豆農家さんなどと力を合わせて地域の活性化を図る「農業法人せいわの里」の北川哲也さん・順平さんに、大豆畑を案内していただきました。
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地元の人に愛され、守られてきた「大豆」
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茶色い房の中に、
まるまるっとした大豆がぎっしり!訪れた11月末はちょうど収穫の真っ最中。大豆畑には一見枯れたように茶色く乾燥した房が生い茂っており、刈り入れを今か今かと待っていました。
大豆は6月~7月上旬に種をまき、およそ半年ほどで収穫できます。水はけの良い土地であれば比較的簡単に栽培できるそうです。刈り取り機で大豆の房を枝ごと刈り取り、脱穀機へ。すると、もみ殻や枯葉などが取り除かれた黄色い大豆がポロポロとこぼれ出てきました。ん?なにやら大きさや形がバラバラ…。
実はこの大豆畑では古くから伝わる貴重な「在来種」が栽培されています。 -
収穫時期を迎えた大豆畑
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緑が広がる夏の大豆畑
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「農業法人せいわの里」の北川哲也さん
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刈り取り機を扱う生産者の北川順平さん
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「在来種は大豆の大きさも味もバラバラ。この中から豆腐、味噌、料理に適したものを選り分け、地元ブランドとして広めたいと考えています」と、哲也さんは語ります。
他にも「フクユタカ」という豆腐作りに適した品種を栽培しています。「農業法人せいわの里」では、こうした地元産の大豆を使い、豆腐や油揚げといった加工品を作り、自社で運営するレストラン「せいわの里まめや」で提供したり、地元の小学校の給食用に届けたりしています。
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脱穀機でもみ殻や枯葉を取り除きます
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やっとお目見え!丸くてかわいい大豆
豆腐で、サラダで、デザートでバリエーション豊かな大豆料理
「せいわの里まめや」では、地元に昔から伝わる農村料理をバイキング形式で提供しています。
農村料理とは地元で採れる旬の野菜、山菜をあますことなく使う家庭料理のこと。その中でも「大豆」は長期間保存がきき、肉や魚の代わりになる貴重なタンパク源であることから農村料理には欠かせない存在です。
煮豆や炒り大豆に調理するだけでなく、油揚げやひりょうず、豆腐や味噌田楽など、ランチタイムにはさまざまな大豆の料理がずらりと並びます。また、豆腐を作る過程でできる、おからや豆乳もりっぱな食材です。おからサラダやおからなます、ドーナツや豆乳プリンと、大豆の奥深さに驚くばかりです。
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地元産の大豆料理を堪能できる「せいわの里まめや」
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開店と同時にお客さまが!評判通りの人気ぶり
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旬の野菜と大豆を使った身体にやさしい料理
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炒り大豆
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五目煮
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豆腐田楽
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おからサラダ
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ひりょうず煮
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柿の白和え
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豆乳プリン
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おからドーナツ
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20~80代の女性が中心。「農業法人せいわの里」スタッフの皆さん
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「お母さんが作るいつものごはん」だから美味しい
「せいわの里まめや」で調理に使う食材はすべて地元農家さんが育てたもので、市場には出ない「ほうれん草の若葉」など、農家さんとつながりがあるからこそ手に入る食材をたくさん使っています。献立を決めるのは、厨房スタッフである地元出身の主婦の皆さんで、20~80 代と幅広い年齢の方が働いていらっしゃいます。いつもその日に運び込まれた野菜を見て、全員で献立のアイディアを出し合うそうです。
「お母さんの作ってくれるいつものごはん」みたいにどこかなつかしく、また食べたくなるのが「せいわの里まめや」の魅力です。-
目の前で焼いてくれる香ばしい豆腐田楽
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毎日気持ちを込めて手作り
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農村の知恵は宝。
その思いが地域を見直すきっかけに地域の方と協力して「農業法人せいわの里」を設立し、「せいわの里まめや」を開店したのは哲也さん・順平さんの母である、北川静子さん。
昔からここに住んでいる人々は「何もない村だ」とよく言っていたそうです。
しかし静子さんらが作る農村料理は、他では食べられないと評判をよび、今では関西や首都圏からもお客さまが通う人気店になっています。
「遠方からのお客さまが喜んでくださるのを見て、やはりここはすごくいいところなのだと気づく人がたくさん出てきて、地域を見直すきっかけになりました。これからも地元のおじいちゃん、おばあちゃんが守ってきた農村の知恵や食を次の世代につなげていきたいですね」。時代がどんどん移り変わる中で、変わらない村の山や畑、空気、人々の知恵は特別な宝です。それをみんなで守ることが、地域の活性化にもつながるのだと気づかされました。 -
遠方からのお客さまも多い「せいわの里まめや」
「農業法人せいわの里」代表の北川静子さん
「田舎豆腐」に分厚い油揚げ、栄養満点な「大豆」のおみやげ
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「せいわの里まめや」で食べられるお惣菜やデザートは、隣接する「まめや産直 田舎のおすそわけ」で、おみやげとして販売されています。特に豆腐や油揚げ、ひりょうずはすべて施設内の加工場で作られた"できたて" を買うことができます。昔ながらの製法を守り、手作業で作られた田舎ならではの味が人気を呼んでいます。
運が良ければ新鮮な「おから」が無料で店頭に並ぶことも!濃厚な味とフワフワの食感は他にない美味しさです。
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揚げたての油揚げ。この分厚さが美味しい!
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手みやげに喜ばれるお惣菜やデザートが揃っています
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多気町の「大豆」はここで買えます!
まめや産直 田舎のおすそわけ
地元産の大豆を買うことができます。その日に近所の農家さんが持ち寄る新鮮な野菜や、「せいわの里まめや」で提供しているお惣菜やデザートも並びます。
- 三重県多気郡多気町丹生5643番地 TEL 0598-49-4300 営業時間 10:00~17:00 定休日 木曜日
- ホームページ http://www.ma.mctv.ne.jp/~mameya/sub8.html
桜に菜の花、里めぐりで季節の花を愛でよう
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「せいわの里まめや」の近辺は春の桜に菜の花、そして梅雨のあじさいと季節の花々が咲きます。特に桜をお花見しながらの里めぐりは「せいわの里まめや」の正面にある「メダカ池」とよばれるビオトープから勢山荘、丹生大師という大きなお寺まで抜けるルートがおすすめです。メダカなどの水中生物を観察したり、近くに流れる立梅用水のさわやかな水の音を聞いたりしながら、春の風物詩を満喫できます。
少し足を伸ばすと、伊勢参宮の道として多くの旅人が歩いた和歌山別街道があります。街道沿いには歴史ある屋敷跡などが数多く残っていて、見応え十分。和歌山別街道の魅力をよく知るボランティアの「勢和の語り部会」さんに案内してもらうことも可能です。奥深い里めぐりを楽しんでみてはいかがですか? -
INFORMATION
勢和らしさを語り継ぐボランティアグループ「勢和の語り部会」お問い合わせ先
中西正勝さん 090-7914-5996
受付時間 9:00~18:00
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農村のビオトープ。どんな生き物がいるかな?
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多気町のシンボル、丹生大師(神宮寺)
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時代に思いを馳せる和歌山別街道
今日はおうちで「農食レストラン」
大豆に含まれるタンパク質には必須アミノ酸がバランス良く含まれており、牛肉や豚肉と匹敵することから「畑の肉」といわれています。また大豆には食物繊維やカルシウム、鉄分をはじめとした身体にうれしい栄養素がたっぷり。しかも、どんな調理法とも相性がいいので、いろいろなレシピを楽しむことのできる食材です。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
〈材料:2人分〉
- 合挽肉 100g
- ニンジン 1/2本
- ホウレンソウ 1/2束
- タマネギ 1/2個
- ゆで大豆 150g
- 固形スープ 1/2個(A)
- ケチャップ 大さじ2(A)
- カレー粉 大さじ2(A)
- 塩 小さじ1/2(A)
- ウスターソース 大さじ1(A)
- サラダ油 小さじ2
- 半熟ゆで卵 2個
- ごはん 適量
- パセリ 適量
〈作り方〉
- ニンジン、タマネギはみじん切りにし、ホウレンソウはゆでてから冷水にとり、1cm幅に切る
- フライパンにサラダ油を熱し、タマネギ、ニンジンをしんなりするまで炒める
- 挽肉を加えて(point1)、少し焼き色がついてパラパラになるまで炒める(point2)
- (A)と「ゆで大豆」、①のホウレンソウ、水200mlを加えて水分が少なくなるまで煮詰める(point3)
- ごはんの上に④を盛りつけ、半熟のゆで卵を飾る
おいしく作るポイント
挽肉は焼く前に塩・こしょうで下味をつけておきます。
はじめはハンバーグのように固めて焼くと、肉の脂が溶け出さず、うまみを凝縮できます。
強火にして水分を飛ばすように炒めます。
〈材料:4人分〉
- 米 2カップ
- 大豆 80g
- タマネギ 1/2個
- エビ 4尾
- アサリ 300g
- ベーコン 100g
- エリンギ 1パック
- ニンニク 2片
- オリーブオイル 大さじ1.5
- ローリエ 4枚
- 塩 小さじ1.5
- こしょう、レモン、パセリ 各適量
- グリーンオリーブ 10粒
〈作り方〉
- エビは背わたを取って3%の塩水で洗い、水気をふく。アサリは砂出しをして、殻同士をこすり合わせてよく洗う
- ベーコンは1cm幅に切り、エリンギは大きめに切る
- フライパンに大豆を入れて焼き色がつくまで炒っておく(point1)
- フライパンに油を熱してつぶしたニンニクと、みじん切りのタマネギ、ベーコンを炒める
- 米を炒めたら(point2)塩小さじ1.5を加えて混ぜ、①のアサリとエビ、エリンギを並べて水450ml加え、ローリエをちらす(point3)
- フタをしたら弱火にして15分ほど炊き、火を止めて5分置く
- フタを取って強火で熱してお焦げを作り、こしょう、パセリをふって、レモン、オリーブを添える
おいしく作るポイント
フライパンで焦げ目がつくまで炒ります。
お米が透明になるまで炒めます。
具材は重ならないよう広げて並べます。
〈材料:紙コップ8個分〉
- ホットケーキミックス 120g
- バター 120g
- 黒砂糖 40g
- 砂糖 20g
- 卵 2個
- 牛乳 大さじ1
- ゆで大豆 100g
- きなこ 適量
〈作り方〉
- 室温に戻したバターと黒砂糖、砂糖をボウルに入れてよくすり混ぜる
- 溶いた卵を少しずつ加え(point1)、その都度混ぜる
- ホットケーキミックス、「ゆで大豆」、牛乳を加えたら、粉っぽさがなくなるまで混ぜる
- 型の7分目まで生地を入れ、たっぷりときなこをふる(point3)
- 180℃のオーブンで20分焼く
おいしく作るポイント
分離しないよう、卵は少しずつ加えます。
紙コップの先端を1センチほど切るだけで、マフィンのカップになります。
香ばしさが出るきなこを上からたっぷりとふりかけます。
ゆで大豆の作り方
乾物大豆から作るともっと美味しい!
レシピで使った「ゆで大豆」は市販の「大豆の水煮」でも美味しく作ることができますが、時間があるときは乾物大豆から作ると、よりいっそう風味豊かな大豆を楽しむことができます。
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「まめや産直 田舎のおすそわけ」の乾物大豆。軽く水洗いした後、一晩水に浸けておきます。
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翌朝の大豆。一晩水に浸けておくだけでこんなにふくらみます!
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戻した大豆を大きめの鍋で約40 分コトコトと煮たら「ゆで大豆」の完成!
三重県多気郡多気町丹生5643番地 TEL.0598-49-4300
営業時間9:00~17:00 バイキング11:00~14:00
14:00以降は、定食やデザートをいただけます。
定休日 木曜日
バイキング料金(1人) 大人 1,200円 子ども(4歳以上~小学生) 600円
ホームページ http://www.ma.mctv.ne.jp/~mameya/sub8.html