地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第49回
愛知県扶桑町(ふそうちょう)の守口大根を訪ねて
愛知県扶桑町の守口大根は、全国生産の6~7割のシェアを占めています。根部の直径は2~3cmですが、長さは平均約120cmと細長いのが特徴で、長いものは180cm以上にも及びます。繊維質が強く、一般食材には向かないものの、漬物にするとカリカリと歯ごたえがよく「守口漬(もりぐちづけ)」の名で親しまれています。今回は、「扶桑町守口大根漬物組合」の組合長である天野隆一(あまのたかいち)さんの畑を訪ねました。
(注)取材は2018年12月、2019年1月におこないました
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足掛け3年。守口大根でつくられる「守口漬」
良質な砂質大地に恵まれた愛知県扶桑町
愛知県の伝統野菜でもある守口大根は、毎年9月に種をまき、12月から1月にかけて収穫の時期を迎えます。1月上旬に天野さんの畑を訪ねると、組合員の皆さんが畝沿いに細長い守口大根を1本ずつ掘り起こしていました。
地中深く成育する守口大根は、水はけが良く、適度に砂の混じった軟らかい土壌でなければ栽培できません。木曽川河畔にある愛知県扶桑町は良質な砂質大地に恵まれ、昭和20年代から本格的に栽培されるようになりました。
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ルートディガーという農作機械で土を掘り起こして守口大根を抜きやすくします。
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昔は人の手で畑を深く耕すため重労働でしたが、農業機械の導入で作業が軽減されました。
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「扶桑町守口大根漬物組合」の組合長である天野隆一さん。
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収穫した守口大根は形の良いものを選別し、葉の部分を切り落とします。
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先端が尖っておらず、写真のように丸くなっているものが良いとされます。
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約30本ずつ束ねます。1束12kgが目安です。
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畑を案内してくれた「JA愛知北」扶桑支店 支店長代理 青木康弘(あおきやすひろ)さん。
新鮮なうちに塩漬にして、水分やアクを抜く
収穫された守口大根は翌日までに「扶桑町守口大根漬物組合」の倉庫内に集められ、新鮮なうちに塩漬にします。約1ヶ月後には水分やアクが抜け、たくあんのように黄色くなり、「守口漬」づくりの下準備が完了します。
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生産農家から守口大根が続々と運ばれてきます。
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「扶桑町守口大根漬物組合」の倉庫内。
大人がすっぽり入る深さに掘られた槽が並びます。 -
守口大根を束のまま槽の中に入れ、約1ヶ月間、塩漬にします。
塩漬から2年以上の熟成期間を経て完成する「守口漬」
塩漬を終えた守口大根は、数社の守口漬製造業社に引き取られます。守口漬製造業者は独自にブレンドした酒粕に守口大根を何度も漬け込んだ後、みりん粕を加えた酒粕で仕上漬をおこないます。守口大根は塩漬から2年以上の熟成期間を経て、ようやく「守口漬」として出荷されます。
今回は、「守口漬」の老舗である「大和屋守口漬総本家」大口(おおぐち)工場で、仕上漬の工程を見学することができました。この道20年以上の漬け人(つけびと)が慣れた手つきで酒粕をまぶしていく光景は圧巻。機械化が進む漬物業界で今も手作業を貫く姿勢に「守口漬」へのこだわりを感じます。
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明治4年に創業の「大和屋守口漬総本家」。昭和30年代に大口工場を設立しました。
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均一に美しく並べた守口大根の上に、みりん粕をブレンドした酒粕とざらめ糖をまぶしていく仕上漬。
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1日ごとに熟成される「守口漬」はいきもの。漬け人の皆さんは毎日味を確かめます。
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20度以下にコントロールされた低温冷蔵庫。ほんのり甘い酒粕の香りが漂います。
守口漬ができるまで
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●塩漬(約1ヶ月)
2度の塩漬で守口大根の水分やアクを抜く
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●酒粕・一度漬(3~4ヶ月)
専用の酒粕で漬け込む
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●酒粕・二度漬(3~4ヶ月)
新たな酒粕で漬け込む
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●仕上漬(3~5ヶ月)
みりん粕を加えた酒粕とざらめ糖で漬け込む
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●完成
熟成してべっこう色に仕上がった「守口漬」
秘蔵の酒粕、みりん粕を使った発酵食を提供
「大和屋守口漬総本家」本店内にオープンした「八幸八(はっこうや)」
「守口漬」の魅力を多くの人に知ってもらおうと、「大和屋守口漬総本家」が本店(名古屋市中区)内に2016年10月、リニューアルオープンしたレストランが「八幸八」です。ここでは、「守口漬」のためにブレンドした秘蔵の酒粕、みりん粕で調理した発酵食を味わうことができます。
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名古屋市中区栄のほぼ中心にある「大和屋守口漬総本家」本店。
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本店の北面に「八幸八」の入り口を設けています。赤と白の暖簾が目印です。
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ゆったりと食事できる店内。
粕炊き煮魚や「守口漬」をセットにしたヘルシーな定食
「八幸八」で提供される「粕炊き煮魚御膳」1,296円(税込)は、ふっくら炊き上げた粕炊き煮魚、れんこんのから揚げ粕酢和え、チーズ味噌粕漬のカナッペ、「守口漬」など、発酵食をテーマにしたヘルシーな定食です。調味料には、長年、守口漬の製造で培った酒粕・みりん粕の技術が活かされています。
お客さまの間で粕炊き煮魚が好評を呼び、家でも簡単に「八幸八」の味が楽しめる「粕炊き煮のもと」「粕漬のもと」を商品化。いずれも店内で購入できます。各5袋入(1袋95g)649円(税込)。
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発酵食をテーマにした7品がセットになった「粕炊き煮魚御膳」。
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長年、守口漬の製造で培った技術から生まれた「粕炊き煮のもと」。
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「大和屋守口漬総本家」仕入・企画開発部 課長の伊藤慎一(いとうしんいち)さん。
「大和屋守口漬総本家」大口工場に併設された売店
つくりたての「守口漬」も店頭に並ぶ
松坂屋名古屋店、名古屋三越栄店、名鉄百貨店など中部地区の多くの百貨店地下街に売店を構える「大和屋守口漬総本家」ですが、ぜひ足を運びたいのが大口工場内にある直売店です。ここでは、つくりたての「守口漬」も店頭に並びます。
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お歳暮シーズンにはお客さまが絶えない「大和屋守口漬総本家」大口工場内の直売店。
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「守口漬」の樽詰め、箱詰め、銀袋の詰め合わせなど、各種揃っています。
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「大和屋守口漬総本家」の人気商品。左から「瓜奈良漬」「守口漬」「きゅうり奈良漬」。
好みの味が見つかる試食コーナー
「大和屋守口漬総本家」大口工場内の売店では、「守口漬」や「奈良漬」などの試食ができます。スタッフに相談しながら好みの味を見つけるのもおすすめです。
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「守口漬」や「瓜奈良漬」「生姜奈良漬」など、味比べができる試食コーナー。
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人気の高い銀袋3種と、家庭でも簡単においしい漬物ができる漬け粕。
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「大和屋守口漬総本家」大口工場の漬け人の皆さん。
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アクセス&インフォメーション 大和屋守口漬総本家 工場直売店
愛知県丹羽郡大口町高橋2丁目202 Tel: 0587-95-5011
営業時間 10時~17時
定休日 日曜、年末年始
■車でのアクセス
名神高速道路「小牧IC」より車で約10分
地域の歴史を学べる「小口城址(おぐちじょうし)公園」
「小口城」をイメージした展示棟と物見櫓(ものみやぐら)
「大和屋守口漬総本家」大口工場から車で約10分の所にある「小口城址公園」。1999年「五条川リバーサイド公園構想」により、地域活性の一環として整備された公園です。
かつてこの地にあった「小口城」は、北東の「犬山城」、南西の「岩倉城」とならび、軍事的に重要な位置にあったと伝えられています。
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公園内には「小口城」をイメージした城壁や物見櫓などがあります。
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全長17mの物見櫓。晴れた日には岐阜城や名古屋駅まで見渡せます。
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「小口城」にまつわる資料が揃う展示棟。見学無料。
小口城の歴史を伝える展示棟
「小口城」は、織田信長が誕生する70年以上昔、遠縁にあたる織田広近(おだひろちか)によって1459年に築城されました。その後、織田信長に攻め入られたり、小牧・長久手の戦いにおいて豊臣秀吉が前線基地にするなど、重要な役割を担い、1584年に廃城となりました。こうした歴史について、詳しく学べるのが公園内にある展示棟です。
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ビデオ上映では、百年以上にわたる「小口城」の歴史をわかりやすく解説します。
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1994年の発掘調査で敷地内から発掘された出土品の展示や、「小口城」に関わる歴史上人物を紹介。
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展示棟を案内してくれた「大口町歴史民俗資料館」の西松賢一郎(にしまつけんいちろう)さん。
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「小口城址公園」の敷地内はもちろん、近くには五条川が流れ、町内の川沿いに約2,000本の桜が植えられています。桜を楽しみながら公園内や五条川沿いを散歩するのもおすすめです。
春は絶好の花見スポットに!
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アクセス&インフォメーション 小口城址公園
愛知県丹羽郡大口町城屋敷一丁目261番地 Tel: 0587-95-1615(大口町役場維持管理課)
開館時間:9時~16時半(展示棟・物見櫓) 見学無料
定休日:月曜、火曜、年末年始 ※ただし火曜が祝日と重なるときは、次の水曜が休館
■車でのアクセス
名神高速道路「小牧IC」より約10分
■電車でのアクセス
名鉄犬山線「柏森駅」から徒歩約20分
今日はおうちで農食レストラン
大根は、その名のとおり肥大化した根の部分を食する野菜です。市場に出回っている主な品種は「青首大根」といわれるもので、大根おろしなどの生食はもちろん、幅広い料理で活躍します。今回は大根を揚げる、煮る、焼く、3つの調理法によるアイデアレシピをご紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(2~3人分)〉
- 大根 300g(約1/3本)
- 小麦粉 大さじ3
- 片栗粉 大さじ3
A
- 生姜のすりおろし 1/2片
- にんにくのすりおろし 1/2片
- しょうゆ 大さじ1
- 塩 小さじ1/4
- カレー粉 小さじ1
〈作り方〉
- 大根はよく洗い、皮ごと小さめの乱切りにする
- Aの調味料を全て袋に入れて合わせ、1の大根を加える。全体を混ぜ合わせたら10分置く(Point1)
- 2の汁気を切ってバットなどに出し、キッチンペーパーで軽く汁気を拭き取ってから、小麦粉と片栗粉を合わせたものをまぶす
- 180℃の油で、こんがり茶色に色づくまで揚げる(Point2)
おいしく作るポイント
大根に調味料がしみ込むよう、上から少し押さえつけるようにしてなじませます
衣がはがれないよう、軽くゆすりながら揚げます
〈材料(4人分)〉
- 豚肉のスペアリブ 小8本(700g)
- 大根 300g(約1/3本)
- 生姜 1片
- にんにく 2片
- サラダ油 小さじ1
- 酒 1/2カップ
- 水 4カップ
- しょうゆ 大さじ1
- ごま油 小さじ1
- 大根おろし 250g(1/4~1/3本)
- 塩こしょう 小さじ2
- こしょう 適量
- クレソン 適量
〈作り方〉
- 豚肉のスペアリブに塩少々(分量外)をまぶして30分置き、熱湯でさっとゆでる。表面が白くなったら取り出し、ゆで汁は捨てる
- 大根は厚めに皮をむき、1.5cm厚のいちょう切りにする。生姜はスライスし、にんにくはつぶしておく。サラダ油を強火で熱した鍋に大根を入れ、焦げ目をつける(Point1)
- 2の鍋のサラダ油をさっと拭き、1の豚肉のスペアリブ、2の生姜とにんにくを入れ、酒と水を加えて中火にかける。煮立ったらアクを丁寧にすくい取り、蓋をして弱めの中火で40分煮る
- 3の豚肉のスペアリブと大根が柔らかく煮えたら、しょうゆ、ごま油を加え、大根おろしを汁ごと加える。塩こしょうで味をととのえる
- 器に盛り、こしょうをかけ、クレソンを添える
おいしく作るポイント
大根全体に焼き目をつけることで、煮崩れを防ぎます
〈材料(6個分)〉
- 大根 200g(約1/4本)
- 青のり 大さじ1
- 片栗粉 大さじ2
- 塩 少々
- ごま油 大さじ2
- 大根おろし 150g(約1/6本)
- ゆかり 小さじ1・1/2
- 万能ねぎ 適量
〈作り方〉
- 大根は3cmの長さに切り、皮ごと5mmの細切りにする
- ボウルに1の大根、青のり、片栗粉、塩を加えて混ぜ合わせ、半量をごま油を熱したフライパンに入れる。直径10cm程度の円形が3個できるように形をととのえ、中火で両面を焼く(Point1)。残りの半量も同様に焼く
- 2を器に盛り、水分を軽く切った大根おろしとゆかりを混ぜ合わせてのせ、小口切りにした万能ねぎを散らす
おいしく作るポイント
軽く押さえつけるようにして、焼き色がつくまで両面をこんがりと焼きます
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「大和屋守口漬総本家」の「粕炊き煮のもと」「粕漬のもと」各5袋入(1袋95g)を5名さまにプレゼント!
締切日 4月14日(日)
名古屋市中区栄3丁目15-1 大和屋本店内 Tel:052-251-8821
営業時間 11時~14時半(オーダーストップ)
無休(年末年始を除く)
■電車でのアクセス
名古屋市営地下鉄「栄駅」より徒歩約6分