• 地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
    ※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。

  • カテエネ 農食ツーリズム
  • 第5回

    静岡県掛川市の掛川茶を訪ねて

    静岡県はお茶の生産量が日本一です。中でも掛川市は、じっくり蒸した「深蒸し茶」の発祥の地で、全国茶の品評会などで数々の受賞をしています。2013年には世界農業遺産「静岡の茶草場農法」に認定され、自然と共存するお茶作りが注目を浴びています。今回は掛川市東部に位置する東山地区を訪ねました。美しい緑の茶畑から、150年以上も茶農家さんたちがこだわり続ける、上質のお茶作りをお伝えします。
  • 掛川茶

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見る・聞く茶葉の芯まで蒸しあげた掛川茶のふくよかな香り

新芽をひとつひとつ摘み取っていく、初摘み

掛川市東部に位置する東山は、栗ヶ岳(標高532m)のふもとに茶畑が広がるお茶の名産地として知られています。栗ヶ岳の頂上近くには、「茶」という文字が植樹によって大きく描かれ、今では東山のシンボルにもなっています。この地で親子3代にわたってお茶作りを営む東山茶業組合理事の萩原渉さんに、早朝の茶畑を案内していただきました。
訪れたのはゴールデンウィーク前の、ちょうど初摘みの日。麦わら帽子をかぶった萩原さんのご両親が、慣れた手つきで新芽をひとつひとつ摘み取っていました。通常は専用機械を使って刈り取りますが、初摘みだけは昔ながらの手摘みをおこない、「初もの」としてお茶市場へ出荷されます。明るい緑色をしたかわいらしい新芽は、見た目にもフレッシュで、まさに初もの!葉は日を追うごとに成長し、少しずつ深い緑色へ変わっていきます。立春から数えて八十八夜(5月2日頃)に摘み取る葉がもっとも美味しく、まろやかで深いうまみが出るといわれています。

  • 「茶」という文字が植樹で描かれた粟ヶ岳

  • 新芽をひとつひとつ摘み取っていく「初摘み」

  • 東山茶業組合理事の萩原渉さん(左)とご両親

葉肉が厚く、しっかりとした茶葉が特徴

昼夜の温度差が大きく、霧のよくかかる東山地区では、テアニンなどのうまみ成分がぎゅっとつまった茶葉ができます。しかも葉肉が厚く、しっかりとした茶葉に育つため、深蒸し茶にとても適していると萩原さんは言います。深蒸し茶とは、普通の煎茶より蒸し時間を2~3倍長くし、じっくり蒸したお茶のことで、掛川市の特産となっています。
お茶の質を決めるのは、生葉の品質に加え、「蒸す」「もむ」といった茶工場における製造工程も大きく左右します。「ほんの数秒、蒸し時間が違うだけで味は変わります。葉の状態に合わせて、機械を微妙にコントロールする茶工場の人たちは、まさに職人です」。
深蒸し茶は茶葉の芯まで深く蒸気を通すので、茶葉の形状がこわれ、一見粉が目立ちます。しかし、この粉状の中から甘みとふくよかな香りやうまみが引き出されるのです。良い茶葉の見分け方を萩原さんにうかがうと「青みがかった濃い緑色をしていて、手のひらにのせると重みを感じるものがいいですよ」と教えてくださいました。

  • 昼夜の温度差が大きい東山地区では、
    しっかりとした茶葉が育つ

  • 「蒸す」「もむ」などの工程を経た荒茶(あらちゃ)。
    さらに選別などの仕上げ加工を経て製品となる

  • 「二番茶」までしか収穫しないこだわり

    冬でも枯れず、年中緑を保つ茶樹(ヤブキタ種)は、八十八夜の頃に摘み取る「一番茶」、初夏の「二番茶」、盛夏の「三番茶」、秋の「四番茶」と、1年で4度まで収穫することができます。しかし東山茶業組合では、お茶の品質にこだわり、あえて「三番茶」は収穫しません。そこには「美味しい緑茶を飲んでほしい」という茶農家さんたちの思いが込められているのだと実感しました。
    高温・短時間でさらっといれても、ぬるめのお湯でじっくりいれても、きれいな緑色のお茶を出すことのできる深蒸し茶。さっぱり飲みたいときは高温のお湯で短時間、うまみや甘みを味わいたいときはぬるめのお湯でじっくりいれるのがポイントです。

  • ぬるめのお湯派の萩原さんはネコ舌ニャんだって!

美味しいお茶の入れ方

食べるお茶どころ、掛川の名物。倉真温泉のお茶しゃぶしゃぶ

  • お茶が余分な脂を落とすので、さっぱりといただける

  • 余分な脂を落とすから、さっぱりといただける

    栗ヶ岳から西へ約2kmの山間にある静かな温泉地、倉真(くらみ)温泉には、お茶しゃぶしゃぶがいただける「翠月(すいげつ)」という温泉宿があります。「翠月」がお茶しゃぶしゃぶを始めたのは約6年前のこと。代表の前田鋭司さんが「掛川の名産であるお茶を使った料理ができないか」と考えて浮かんだのが、お茶しゃぶしゃぶでした。
    大皿に盛られたお肉、野菜と一緒に、深い緑のお茶がたっぷりと注がれた銀の鍋がテーブルに運ばれてくると、それだけでテンションが上がります。鍋のお茶が熱くなったところで、お肉をしゃぶしゃぶと湯通しし、さっと引き上げて口に含むと、お肉にお茶の香りがほのかにうつって新鮮な味わいです。「お茶が余分な脂を落としてくれるので、お肉をいくら食べても、さっぱりといただけるんですよ」という前田さんの言葉どおり、脂っこさを感じることなく、ついついお肉に手がのびます。つけ合わせの野菜も、お茶の香りが美味しさを引き立てます。ごまダレとポン酢ダレが用意されますが、まずはポン酢ダレでお茶の香りを楽しみながらいただくのがおすすめです。

昔から変わらない自然の風景が一番の宝物

倉真温泉で生まれ育った前田さんは、この土地が大好きと言います。温泉地の中心を流れる倉真川は、アユやヤマメが泳ぐ清流で、初夏になればホタルの美しい乱舞が楽しめます。「りっぱな観光施設はありませんが、昔から変わらない自然の風景が一番の宝物。ウォーキングコースやサイクリングコースもあるので、ぜひ倉真の自然とふれあってほしいですね」。栗ヶ岳の山頂へ通じる山歩きコースもあるので、詳しくは宿の方にお尋ねください。なお、東山と倉真温泉は、地図上では約2kmと近い距離ですが、車で約25分ほどかかります。

  • 緑豊かな自然の中にある倉真温泉「翠月」

  • 都会の喧噪から離れてのんびり過ごせる温泉宿

  • 生まれ育った倉真温泉が大好きという
    代表の前田鋭司さん

  • INFORMATION 倉真温泉「翠月(すいげつ)」

    静岡県掛川市倉真5325 Tel.0537-29-1021
    1泊2食 10,800円から
    食事(入浴込み) 5,400円から
    食事はすべてコース料理。お茶しゃぶしゃぶをご希望の方は金額が変わります
    お茶しゃぶしゃぶは牛肉・豚肉・鴨肉から選ぶことができます
    新しいウィンドウを開きます倉真温泉「翠月」のホームページ

    ■車でのアクセス
    東名高速道路/名古屋方面からは「袋井IC」から約30分
          /東京方面からは「掛川IC」から約20分
    新東名高速道路/「森掛川IC」から約25分

買う茶の焼印をしたかわいい茶文字まんじゅう

茶畑の風景を眺めながら、掛川茶でいっぷく

再び話を東山に戻し、美味しい掛川茶が飲める場所をご紹介します。栗ヶ岳の中腹にある「東山いっぷく処」です。のれんをくぐると、地元の皆さんが快く迎えてくださり、いれたての掛川茶をいただくことができます。ぬるめのお湯でじっくりいれた掛川茶は、玉露のような深みがあって、とてもまろやか。「お茶って、こんなに美味しいものだったんだ!」とうれしくなります。目の前には、色鮮やかな茶畑の風景がのどかに広がり、絶景を眺めながらのいっぷくは、まさに至福のひとときです。
「まずは足を運んでいただくのが一番。この美しい茶畑も掛川茶の商品のひとつですから」と笑顔で語る「東山いっぷく処」の山城みや子さん。その言葉に大きくうなずいてしまいました。店内では穴場スポットの情報や季節の情報も案内しているので、ハイキングやサイクリングの折には、ぜひ立ち寄りましょう。店の横にある駐車場(無料)に車を停め、栗ヶ岳の山頂を目指す方もたくさんいらっしゃいます。

  • 山城みや子さんとスタッフの皆さん

  • 茶文字まんじゅう(80円)

  • 「東山いっぷく処」の周辺からの眺め

  • 「掛川茶」は
    ここで買うことができます。

    「東山いっぷく処」では、東山地区で作られた掛川茶を購入することができます。収穫時期によってさまざまな茶葉の種類があるので、お店の方にお茶の好みを伝えれば、ぴったりのものを選んでくれます。「茶」の焼印をした「茶文字まんじゅう」は東山名物ともいえる人気の品で、地元の皆さんが毎日作っています。この他、掛川茶をつかった「緑茶ようかん」なども人気です。また、「東山茶業組合オンラインショップ」でも、掛川茶を購入することができます。

  • 名物の「茶文字まんじゅう」と掛川茶の相性はぴったりニャ♪
INFORMATION 東山いっぷく処
  • 静岡県掛川市東山1173-2 Tel.0537-27-2266 営業時間 9時~16時 定休日 水曜日
    ■車でのアクセス
    東名高速道路「掛川IC」から約30分、新東名「島田金谷IC」から約15分
  • 新しいウィンドウを開きます東山いっぷく処ホームページ
INFORMATION 東山茶業組合オンラインショップ

学ぶ昔ながらの「茶草場農法」が2013年、世界農業遺産に認定

里山の自然と共存し、多様な動植物の生態系を守る

「東山の茶畑の周辺には、茶草場(ちゃぐさば)と呼ばれる、大小さまざまな自然の草地が点在しています。その面積は、茶畑面積180haに対して、7割にあたる130haと広大です。茶農家の皆さんは、晩秋の頃、茶草場に生えているススキやササを刈り取って乾燥させた後、細かく刻んで茶畑の畝(うね)に敷きつめていきます。これを「茶草場農法」といい、東山では何十年と継承されています。大変な作業ですが、茶畑に雑草が生えるのを防ぐことができ、また冬には防寒の役割をするので、茶葉が元気に育つのだそうです。
美味しいお茶を作るため、当たり前のように続けてきた「茶草場農法」ですが、里山の自然と共存し、多様な動植物の生態系を守ることにもつながっていることが高く評価され、2013年「静岡の茶草場農法」として世界農業遺産に認定されました。

  • ススキやササなどが自生する草地は
    茶草場(ちゃぐさば)と呼ばれる

  • 茶草場から刈り取った草を乾燥させた後、細かく刻む

  • 枯れ草を茶畑の畝に敷きつめることで、
    雑草が生えるのを防ぐ

作る今日はおうちで「農食レストラン」

今回はお茶を使ったレシピを紹介するニャ

お茶には、老化を防ぐ(抗酸化作用)カテキンが含まれ、コレステロールや中性脂肪を減らす働きもあります。さらにビタミンE、βカロテン、クロロフィルなどの栄養成分も含まれるため、食後にお茶を飲むことは健康維持のうえでも良い習慣といえます。身体にうれしい茶葉を、お茶として飲むだけでなく、調理にも活用してみました。

蓮沼 あいさん

農食シェフ蓮沼 あい

食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。

エビのお茶フリッター茶葉が彩りと香ばしさを添える一品。
小麦粉にビールを加えて揚げることで
サクッと仕上がります。

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〈材料(2人分)〉
  • エビ 10尾
  • ビール 100cc
  • 小麦粉 60g
  • 塩 ひとつまみ
  • 茶葉 大さじ1強
  • 揚げ油
  • 片栗粉 大さじ1
つけ合わせの調味料(各適量)
  • 茶葉塩(軽く煎った茶葉+塩)
  • 茶葉マヨネーズ
    (軽く煎った茶葉+マヨネーズ)
〈作り方〉
  1. エビは殻をむき、背ワタをとって片栗粉でもみ洗いし(Point1)、キッチンペーパーで水気をふき取る。塩・こしょうをふる
  2. 茶葉をビニール袋に入れ、手で軽くもみ(Point2)、細かくする
  3. ボウルに小麦粉、塩、2の茶葉、ビールを入れて混ぜる
  4. エビを3にくぐらせて170~180℃の油でカラッと揚げる
  5. つけ合わせの調味料はフライパンで軽く煎った茶葉(Point3)と塩、茶葉とマヨネーズを混ぜ合わせる

※高温で揚げるので、ビールを衣に加えてもアルコール分は蒸発するため、お子さまも安心して食べられます。

おいしく作るポイント
ポイント1

片栗粉に汚れが吸着するよう、しっかりつけてもんだ後、流水ですすぎます

ポイント2

粉茶のように細かくなるまで、ビニール袋の上からもみます

ポイント3

茶葉を軽く煎ることで香りがいっそう引き立ちます

お茶香るゆで豚前日に茶葉と酒に漬け込んでおけば
あとは30~40分煮るだけの簡単レシピ。
ふわっと広がるお茶の香りが食をそそります。

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〈材料(4人分)〉
  • 豚バラ肉(ブロック) 300g
  • 塩 大さじ1
  • 砂糖 小さじ2
  • 茶葉 漬け込み用 小さじ2
       煮込み用 大さじ2
  • 酒 大さじ1
  • オリーブオイル 小さじ1
  • レタス、プチトマト 適宜
A
  • 軽く煎った茶葉、塩、
    オリーブオイル 各適量
〈作り方〉
  1. 豚バラ肉の両面に塩、砂糖をすりこむ。ジッパー付きの袋に豚肉を入れ、茶葉、酒を加え冷蔵庫で半日(6時間以上)漬け込む(Point1)
  2. 鍋にオリーブオイルを入れて中火で温めてから、1の全面に焼き色をつける。鍋の中の、余分な油はキッチンペーパーで拭き取る
  3. 豚肉が隠れるくらいの水とパックに入れた茶葉を入れ、沸騰直前で弱火にし30~40分煮る(Point2)
  4. 3のあら熱を取ってスライスし、レタス、プチトマトと一緒に器に盛りつけ、Aを混ぜてかける

※あまった豚肉は煮汁につけておくのがおすすめです(Point3)

おいしく作るポイント
ポイント1

しっかり漬け込むことで、茶葉の色と香りが豚肉にしみ込みます

ポイント2

沸騰すると茶葉の香りが飛んでしまうので、直前に火を弱めましょう

ポイント3

スライスして煮汁につけておけば、いっそう味がしみ込みます

緑茶のパンナコッタ抹茶とはひと味違う、緑茶のスイーツ。
牛乳や生クリームとの相性もよく
おもてなしにもぴったりです。

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〈材料(プリン型4~5個)〉
  • 牛乳 200ml
  • 茶葉 大さじ2
  • グラニュー糖 40g
  • 粉ゼラチン 4g
  • 生クリーム 80g
トッピング
  • 生クリーム 50g
  • グラニュー糖 小さじ1
  • 茶葉 適量
〈作り方〉
  1. 器に牛乳大さじ2、粉ゼラチンをふり入れ溶かす
  2. 鍋に残りの牛乳、茶葉、グラニュー糖を入れ弱火で6~7分煮て(Point1)、ザルでこす(Point2)
  3. 1を入れ溶かし混ぜる
  4. 3に生クリームを加え、軽く水でぬらしたグラスに注ぎ、冷蔵庫で固まるまで(約1時間)冷やす
  5. 生クリームとグラニュー糖をボウルに入れて6分立てのホイップ状にし、固まった4の上にのせ、軽く煎った茶葉をトッピングする
おいしく作るポイント
ポイント1

沸騰すると茶葉の香りが飛んでしまうので弱火でしっかりと煮出すのがコツ

ポイント2

茶葉のえぐみが出ないよう、ぎゅっとしぼらないようにしましょう

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