地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第6回
愛知県知多半島の牛乳を訪ねて
愛知県では約320戸の酪農家が年間185,931トンもの生乳を出荷しています(2015年4月現在)。中でも知多半島と渥美半島に多くの酪農家が集まり、乳牛を飼育しています。今回は愛知県酪農農業組合の飯田義男さんの案内で、愛知県東浦町の「原田牧場」、大府市の「知多農場」を訪ねました。いずれの牧場でも、酪農家の皆さんの愛情を受けながら、乳牛たちがすくすくと育っていました。
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お母さん牛と酪農家が協力し合って生まれる美味しい牛乳
県内の乳業メーカーに美味しい生乳を届ける「原田牧場」
昭和36年から乳牛を育てている「原田牧場」は、知多半島の付け根のあたり、知多郡東浦町にあります。光が差し込む明るい牛舎では、白黒模様でおなじみの乳牛(ホルスタイン種)が左右1列になって、のんびりとくつろいでいました。手を差し出すと興味深そうに近づいてくる乳牛、怖がって顔を背ける乳牛など反応はさまざまです。ここには52頭の乳牛が飼われ、1日で約1,200Lの生乳(せいにゅう)が搾られます。搾乳は朝夕2回、12時間ごとに専用の器具を使っておこないますが、最初に必ず、3代目原田拓芳(たくよし)さんと母のやす代さんが1頭ずつ手で搾って異常がないか確認するのが日課となっています。
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親子3代にわたって続く原田牧場
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光が差しこむ明るい牛舎
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鼻をすり寄せてくる人なつっこい乳牛たち
当たり前のことですが、搾乳は出産後のお母さん牛しかできません。そのため、乳牛の出産を人工授精でコントロールし、一定量の生乳を通年出荷できるように調整しています。2歳ころに初産を経験し、1頭あたり2~3回出産します。妊娠中の乳牛は牛舎を分けたり、出産後は体調に気づかったりと、人間の産前産後と同様、細やかなケアが欠かせません。「牛同士が気持ちよく過ごせるように工夫するのも酪農家の大切な仕事です」と拓芳さん。朝4時に起床し、1頭ずつ観察することで、ちょっとした変化も見逃しません。
牛舎の中を歩くと、お母さん牛の後ろに、生後間もない小さな子牛を何頭も見つけました。じつは出産後1~2週間の「初乳」は栄養価が高いので、子牛に飲ませるために親子一緒に過ごしています。
搾乳された牛乳は、そのままでは飲むことができません。愛知県内の牛乳工場へ運ばれ、細菌や抗生物質の有無など厳しいチェック受けた後、加熱殺菌を経て、各乳業メーカーの「牛乳」として、愛知県内のスーパーやコンビニの店頭に並びます。このように各乳業メーカーの多くは、販売する地域の牧場で搾乳された生乳を製品化し、地産地消しています。
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牛の生年月日、出産日を管理するボード
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出産が近い牛を気遣う3代目の拓芳さん
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右から愛知県酪農農業組合の飯田義雄さん、原田牧場
の原田芳房さん、拓芳さん、やす代さん
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牛乳パック上部についている
ツメのワケ上部のツメは生乳だけで作られた純粋な牛乳(無調整)であることの証。カルシウムの追加や低脂肪牛乳など、何らかの加工がされているものは「加工乳」に属し、ツメはありません。
搾りたての牛乳を提供するために再開した「知多農場」
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妹の山本厚子さん(左)と姉の伊藤孝子さん(右)
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次に案内していただいたのは、原田牧場からクルマで20分ほどのところにある「知多農場」(大府市)です。もともと明治24年創業の歴史ある牧場でしたが、いったん休業。しかし、この牧場で幼少時代を過ごし、牛と触れ合ってきた姉妹が、「搾りたての生乳を、牛乳や乳製品にして、直接お客さまに届けられる牧場を作りたい」と一念発起して、牧場と直販所を併設した施設を平成23年にオープンしました。飼育担当の姉・伊藤孝子さんは、実家の牧場を約30年間手伝ってきた経験をいかし、楽しみながら酪農業を営んでいます。「乳量が少ないので、ジャージー牛を飼う酪農家は少ないのですが、濃厚で美味しい牛乳をたくさんの人に味わってほしくて、うちはジャージー牛にこだわっています」と目を細めます。
放牧場では、カウベルをつけた乳牛が、カランコロンと高らかな音を鳴らしながら元気に走り回っていました。その愛らしいこと!ここで飼われているのは、子牛を含めた約10頭のジャージー牛。茶色の毛並みと、くりくりとした愛らしい目が特徴です。飼育担当の姉・伊藤孝子さんに仕事の楽しみをうかがうと「育てた赤ちゃん牛がやがて出産を迎えてお母さん牛になるまで、家族のように寄り添って見守れることがうれしいですね」と答えてくださいました。
牛乳はお母さん牛あってのものですが、牛が安心して過ごせる環境を守っているのは酪農家の皆さん。牛と人間が協力しあってこそ美味しい牛乳は生まれるのだと実感しました。
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牧場を元気に走り回るジャージー牛
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好奇心旺盛で近寄ってきてくれます
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新鮮な草が大好物!
今日はおうちで「農食レストラン」
牛乳は、骨・歯をつくるカルシウムやビタミンのほか、タンパク質も豊富に含まれます。また、和食に不足しがちの脂肪分やカルシウム、うまみ・コクをプラスすることから、最近は和食に牛乳を加える「乳和食(にゅうわしょく)」も注目を浴びています。今回は、中華レシピに牛乳を加えたカテエネ風「乳中華」と手作りチーズをご紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
http://ai-hasunuma.com
〈材料(2人分)〉
- ナス 1本
- オクラ 3本
- ミニトマト 3個
- エビ 8~10尾
- ネギ(みじん切り) 大さじ2
- ショウガ(みじん切り) 小さじ1
- 片栗粉 大さじ1
- オリーブオイル 大さじ1
- 牛乳(仕上げ用) 適量
A
- 牛乳 100ml
- トマトケチャップ 大さじ4
- 酢 大さじ2
- 砂糖 大さじ1
- 豆板醤 小さじ1/2
- 塩、こしょう 各少々
〈作り方〉
- ナスは縞模様になるようピーラーで皮をむき、1cmの輪切りにし、オクラは塩(分量外)で板ずりして斜め半分に切る。ミニトマトはへたを取る
- エビは殻をむき背わたを取ったら片栗粉でもみ洗いし、キッチンペーパーで水気をふき取って塩・こしょうをふる
- ボウルにAの調味料の材料を混ぜ合わせておく(Point1)
- フライパンにオリーブオイルを熱し、中火でネギ、ショウガを炒め、香りが出たらナスを加える。ナスに焼き色がついたらエビ、オクラも加えてさっと炒める
- 4に3の合わせ調味料を加え(Point2)、トマトを入れて味をからめる
- 汁気がなくなってきたら皿に盛りつけ、仕上げに牛乳(分量外)をかける
おいしく作るポイント
あらかじめ調味料を混ぜ合わせておくと、炒めるときに味ムラが出ません
食材に焼き色がついてから調味料を入れ、味をしっかりとつけましょう
〈材料(2人分)〉
- 中華麺 2玉
肉みそ
- ひき肉 200g
- ニンニク(みじん切り) 小さじ1
- ネギ 大さじ3
- オリーブオイル 小さじ2
- 豆板醤 小さじ1
- しょうゆ 大さじ2
- 砂糖 小さじ1
- 塩、こしょう 各少々
- 中華麺 2袋
スープ
- 牛乳 100ml
- 水 3カップ
- ガラスープの素 大さじ1
- しょうゆ 小さじ1
- 味噌 小さじ2
- アサツキ、高菜漬け、紅ショウガ 各適量
〈作り方〉
- 肉みそを作る
フライパンにオリーブオイルを熱し、ニンニク、ネギのみじん切りを炒め、香りがたったらひき肉を加えて色が変わるまで炒める。豆板醤、しょうゆ、砂糖を加え、汁気がなくなるまで煮詰める - スープを作る
鍋に牛乳以外のスープの材料を入れて火にかける。煮立ったら牛乳を加えて温める(Point1) - 中華麺を茹でる
別の鍋で、たっぷりの湯で中華麺を茹で、ザルに取って水気を十分に切る - 器に麺を入れ、2のスープをかけ、1の肉みそ、高菜漬け、紅ショウガ、アサツキをトッピングする(Point2)
おいしく作るポイント
牛乳を沸騰させないように、火加減を調節しましょう
こんもりと盛って、最後にアサツキをかけると見た目の美味しさもアップします
〈材料(2人分)〉
- 牛乳(できれば高脂肪牛乳※) 600ml
- 生クリーム 30cc
- レモン汁 10cc
- 塩 少々
- イチジク 1個
- グラニュー糖 大さじ1
- クラッカー 適宜
※乳脂肪分4.0%以上
〈作り方〉
- 鍋に牛乳、生クリーム、レモン汁、塩を入れ、最初は中火で、沸騰したらとろ火にする。白いふわふわ(リコッタチーズ)が浮き(Point1)、液に透明感が出てきたら、布でこして常温で冷ます(Point2)
- リコッタチーズにグラニュー糖を入れて混ぜ合わせる(Point3)。角切りにしたイチジクと一緒にグラスに盛りつけたら冷蔵庫で冷やす
- クラッカーなどを添える
※イチジクのかわりに、キウイ、ピーチなどもおすすめです
おいしく作るポイント
煮すぎると固くなってしまうので液が透明になったら火を止めましょう
布でこし、軽く絞るようにして水気を切りましょう
ヘラなどを使ってグラニュー糖がなめらかになるまで混ぜ合わせます
愛知県岡崎市美合町字並松1番地62 Tel.0564-53-2450
うまいぞ牛乳!東海酪農業協同組合連合会(略称:東海酪連)ホームページ