地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第7回
長野県下伊那郡天龍村の「ていざなす」を訪ねて
長野県下伊那郡にある天龍村は、長野県の南端に位置し、愛知県、静岡県との県境にあります。特産品として愛されている「ていざなす」は、信州の伝統野菜にも登録されている歴史ある野菜です。長さ約25㎝、重さ500g以上の大きな実が特徴で、熱を加えると甘みが増し、とろけるような食感が楽しめます。
今回は「ていざなす」を栽培されている天龍農林業公社さんを訪ねました。
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夏の陽射しを浴び、たわわに実る特産品
大きさにびっくり!つやつやの「ていざなす」
天龍農林業公社さんの畑は、天竜川を見下ろす山の斜面に点在しています。同社の渡邉純(わたなべじゅん)さんにご案内いただいた畑では、5列の畝(うね)に「ていざなす」の木が並んでいました。盛夏を迎えて豊かに生い茂る葉っぱのかげに、大きな紫色の実がたくさんなっています。大きいものでなんと1kgにもなる「ていざなす」ですが、幹や茎は華奢で細いため、4本の添え木をして支えます。
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水分の蒸発を防ぐマルチシートで覆われた畑。細かい水分調整で、みずみずしい「ていざなす」に育てます。
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渡邉さんの顔よりも大きい!1本で500mlのペットボトル以上の重さです。
大きく育つために必要な光と温度
「ていざなす」は毎年4~5月に苗を植え、およそ1ヶ月後に花が咲き、実をつけます。収穫基準の重さは500g~600gですが、気温20℃以上でなければ大きく育ちません。そのため、日照時間が短かったり、平均気温が低かったりすると、収穫時期に大きく影響するそうです。
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直径5㎝ほどの薄紫色の「ていざなす」の花。渡邉さんは、めしべとおしべの長さを比べただけで、養分が行き届いているか見極めることができます。
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花が落ち、ふくらみ始めた「ていざなす」。ここから収穫基準まで大きくなるのに約25日かかります。
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収穫を間近に控えたつやつやの「ていざなす」。
「ていざなす」ってどこからきたの?
「ていざなす」は明治20年頃に、田井澤さんという農家さんが東京の種屋から取り寄せた種を使って育てたのがはじまりで、「たいざわさんのナス」という呼び名がなまった名称といわれています。
信州の伝統野菜として注目されるようになり、現在は地元の販売だけでなく、東京のレストランなどに出荷されています。
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商標登録された「ていざなす」のパッケージ。
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自信作を手に微笑む天龍農林業公社の渡邉さん。
天龍村の「ていざなす」をもっと知ってもらうために
天龍農林業公社の畑は、もともと地元の農家さんが使っていた土地がほとんどです。高齢化の進む天龍村では、農業を続けられなくなった農家さんが増え、使われなくなった棚田や畑の荒廃化が問題となっていました。天龍農林業公社はこうした土地を借り受け、「ていざなす」をはじめ、「伍三郎(ごさぶろう)うり」などの伝統野菜栽培をおこなっています。
また、「ていざなす」をもっと多くの人に食べてもらいたいと、さまざまな商品を企画、開発しています。年内には、丸ごとオーブンでじっくり焼いた「ていざなす」を、真空パックの冷凍にして美味しさを閉じ込めた商品を発売予定です。
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冷凍食品として商品開発中の「焼きていざなす」。
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取材にお邪魔したとき、スタッフの皆さんが、とれたての「ていざなす」をフライに調理されていました。
おすそわけをいただくと、外はサクサク、中身はとろとろ!
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JR平岡駅から徒歩約10分の天龍農林業公社。
「ていざなす」をはじめ、とれたての野菜や自社商品を買うことができます。 -
とっても仲のいい天龍農林業公社の皆さん。
天龍村の特産にこだわった「レストラン龍泉」
素材の味で勝負!「ていざなす定食」
JR平岡駅に直結している「ふれあいステーション龍泉閣」の1階にある「レストラン龍泉」では、季節限定(7月下旬~10月頃)で「ていざなす定食(税込730円)」をいただけます。半分に切った「ていざなす」を油に通し、特製の肉味噌をたっぷりとかけたメインメニューは、料理長を務める太田久志(ひさし)さんが工夫を凝らした自信作です。甘辛い味噌が「ていざなす」に良く絡み、ごはんがすすみます。
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大きな「ていざなす」は半分でもボリューム満点!毎年心待ちにしている常連客もたくさんいるそうです。
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JR平岡駅直結の「レストラン龍泉」。村民はもちろん、観光客にも愛されているレストランです。
「地物を美味しく味わってほしい」が生んだ、特別メニュー
料理長の太田さんは、元々フレンチ専門のシェフとして活躍されていた方で、なるべく地域の特産品のアピールとなるようなメニュー作りを心がけています。
太田さんがおすすめするもう一品は、「信州サーモン丼(税込820円)」です。長野県の特産である信州サーモンがたっぷりと使われており、豪華で食べ応えのある丼です。
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刺身でも食べられる新鮮な信州サーモンを、
太田さん独自の方法で下ごしらえし、もちっとした
食感に仕上げました。 -
料理長の太田久志さん。料理人歴はなんと40年の大ベテランです。
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アクセス&インフォメーション レストラン龍泉
長野県下伊那郡天龍村平岡1280-4 ふれあいステーション龍泉閣1階(平岡駅直結)
Tel:0260-32-1088 営業時間 11時~14時 16時30分~20時 定休日 年中無休
■車でのアクセス
中央道「飯田山本IC」から約50分
■電車でのアクセス
JR飯田線平岡駅直結(豊橋駅より特急伊那路にて1時間40分)
JR平岡駅に直結!地元の野菜もおみやげも揃います
天龍村のおみやげを買うならココ!
「いらっしゃいませ!」と気持ちよく声をかけてくれるのは、「ふれあいステーション龍泉閣」2階にある売店を取り仕切る、「小梅の会」代表の熊谷明美(くまがいあけみ)さんです。「小梅の会」は、天龍村で生産が盛んな龍峡小梅(りゅうきょうこうめ)農家さんの会です。天竜川沿いにあるうぐす梅園には、約80本もの龍峡小梅の木が植えられており、2月の終わりから3月にかけて、美しい花と香りを楽しむことができます。この売店では「ていざなす」をはじめとした地元のとれたて新鮮野菜や、「小梅の会」で漬けた梅干しや手作りの栃餅などを買うことができます。
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JR平岡駅に直結した「ふれあいステーション龍泉閣」の2階にある売店。
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「小梅の会」代表の熊谷明美さん。カリカリと歯切れのいい食感が人気の「梅の里の小梅漬(税込500円)」を手ににっこり。
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カゴいっぱいに並んだ「ていざなす」(税込210円)。一度に20本ほど購入するファンも多いとか。
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天龍村特産のゆずを使ったドレッシングやジャムも人気です。
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アクセス&インフォメーション ふれあいステーション龍泉閣 売店
長野県下伊那郡天龍村平岡1280-4 ふれあいステーション龍泉閣2階(平岡駅直結)
Tel:0260-32-3055 営業時間 8時~17時30分 定休日 12月31日、1月1日
■車でのアクセス
中央道「飯田山本IC」から約50分
■電車でのアクセス
JR飯田線平岡駅直結(豊橋駅より特急伊那路にて1時間40分)
ふれあいステーション龍泉閣ホームページ
天龍村ウォーキングで「秘境感」を満喫!
絶景を楽しみながら、歩いて村めぐり
天龍村を囲む美しい山々と天竜川の景色を楽しむなら、平岡ダム湖畔と十方峡を回るウォーキングコースがおすすめです。JR平岡駅からはじまる10.5kmのコースを、3時間ほど歩いて回ります。天龍村役場振興課の市川拓馬さんに、ウォーキングコースのビューポイントをご案内いただきました。
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天龍村役場振興課の市川拓馬さん。大自然に囲まれた天龍村の「秘境感」が何よりも魅力だと教えてくれました。
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緑が深くて気持ちのいいウォーキングコース。
満島神社(みつしまじんじゃ)
JR平岡駅から出発した道は山に向かう坂道へと続きます。コース沿いの町並みや景色を楽しみながら、30分ほど歩いたところで見えてくるのが、「満島神社」です。神社の横の道路に立つと、天気のいい日は遠くに南アルプスが一望できるそうです。
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神々しい鳥居と大木が守る満島神社。木々が陽射しを遮るためかひんやりとしていて、坂道を登った息を整える場所として最適です。
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満島神社でおこなわれる秋祭りは、村指定民族文化財に指定されており、村を上げての盛大なお祭りとして有名です。
平岡ダム
満島神社からは、急な山道を進む上級者コース、迂回して進む初級者コースと2通りに分かれていますが、どちらを選んでも次は「平岡ダム」にたどり着きます。ダムの上の天端(てんば)(注)は通行可能で、山々に囲まれた天竜川の絶景が楽しめます。
(注)ダムや堤防の一番高い部分
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平岡ダムは、下流にある平岡水力発電所の取水用ダムとして純国産エネルギーである水力発電に活用されています。
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ダムの上の天端からの景色。天気のいい日は美しい山々と、エメラルドグリーンの水面が楽しめます。
平岡橋
平岡ダムを通り過ぎると、山に沿ったゆるい下り坂が続きます。汗ばんでいた背中もひんやり冷える、薄暗いトンネルを2つ通り過ぎると、見えてくるのが「平岡橋」です。眼下におだやかな天竜川が山間に吸い込まれるように流れていきます。
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車も通行できる平岡橋。ここで一息つけばゴールまではもうすぐ!
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天竜川と山の重なりが織りなす風景は、まさに「秘境」そのもの。
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天龍村の村鳥
「ブッポウソウ(仏法僧)」ブッポウソウは、緑青色の羽根が美しい渡り鳥です。毎年5月上旬に天龍村へ渡来し、7月下旬頃まで子育てしながら過ごします。村内には地元の小学生が作った巣箱が約30個設置され、天龍村役場のホームページでは、巣箱内でのヒナの成長の様子を写真で公開します。
天龍村では「ブッポウソウ写真コンテスト」も毎年開かれています。詳しくは天龍村役場までお問い合わせください。 -
INFORMATION 天龍村役場
長野県下伊那郡天龍村平岡878番地 Tel:0260-32-2001 Fax:0260-32-2525
天龍村役場ホームページ
今日はおうちで「農食レストラン」
「ていざなす」はアクが少なく、みずみずしくてやわらかいのが特徴です。皮をむいて薄く切れば、カルパッチョなど生のままでも美味しくいただけます。また、焼いたり、揚げたりすると、とろっとした食感になります。和洋中と、どんな料理とも相性が良く、さまざまな調理を楽しめるのも「ていざなす」の魅力です。「ていざなす」の代わりに一般のナスを使ってもいただける3品をご紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(4人分)〉
- ていざなす 1/2本
- 豚バラ肉 200g
- 塩、こしょう 各少々
- サラダ油 大さじ1
つけ合わせのソース
- ケチャップ 大さじ2
- ウスターソース 大さじ2
〈作り方〉
- 「ていざなす」は縦半分に切り、4等分にしてスティック状にする
- 1に塩、こしょうを振りかけ、豚バラ肉を巻きつける(Point1)
- フライパンにサラダ油を熱し、2を並べる。あまり動かさず、焦げ目をつけながら弱めの中火でじっくり焼く(Point2)
- ケチャップとウスターソースを混ぜてソースを作り、3に添える
おいしく作るポイント
豚バラ肉ができるだけ均一になるように端から巻きつけると、焼きムラがなく仕上がります
豚バラ肉の巻き終わりの部分を下にして並べ、しっかり焼きつけてからひっくり返すと、豚バラ肉がはがれません
〈材料(2人分)〉
- ていざなす 1/3本
- トマト 1個
- ベーコン 2枚
- モッツァレラチーズ 1/2個
- オリーブオイル 大さじ4
- バジル 2枚
〈作り方〉
- 「ていざなす」は縞目に皮をむき、8mm幅にスライスする。トマト、モッツァレラチーズも8mm幅にスライスする。ベーコンは半分に切る
- フライパンにオリーブオイルを熱し、「ていざなす」が重ならないように並べ、やわらかくなるまで両面を焼く(Point1)
- 耐熱容器に「ていざなす」、トマト、ベーコン、モッツァレラチーズを重ね、オーブントースターで焼く(Point2)
- 仕上げにオリーブオイルをかけ(分量外)、バジルを添える
おいしく作るポイント
「ていざなす」の上の面にもオリーブオイルをかけると、裏返したときスピーディに焼けます
チーズがとろけるまでオーブントースターで焼く。3分~5分が目安です
〈材料(2人分)〉
- ていざなす 1/2本
- ミートソース缶 1缶
- ゆできしめん 1袋
- ミックスチーズ 80g
- 塩、こしょう 各少々
- オリーブオイル 大さじ4~5
- みじん切りのパセリ 適宜
〈作り方〉
- 「ていざなす」は長さを半分に切り、7mm幅にスライスする
- フライパンにオリーブオイルを熱し、「ていざなす」を並べて両面を焼いて取り出す
- 同じフライパンにオリーブオイル少々を足し、さっと洗って水気を切ったきしめんの半量を入れ、中火で焦げ目がつくまで焼きつける(Point1)
- 3の上にミートソース、「ていざなす」、残りのきしめん、ミートソース、「ていざなす」の順に重ね、ミックスチーズをのせる(Point2)
- フタをして、チーズが溶けるまで加熱したら、みじん切りのパセリを散らす
おいしく作るポイント
フライ返しなどで、きしめんを押しつけるようにして焼きつけます
ミートソース、 「ていざなす」、きしめんは均一になるように広げましょう
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「ていざなす2本」を5名さまにプレゼント!
締切日 10月12日(月)
(注)天候などの関係で、収穫基準より小ぶりになることもありますのでご了承ください。
長野県下伊那郡天龍村平岡961番地 Tel:0260-32-1160
営業時間 8時~17時 定休日 土曜、日曜、祝日
■車でのアクセス
中央道「飯田山本IC」から約50分
■電車でのアクセス
JR飯田線平岡駅から徒歩約10分(豊橋駅より特急伊那路にて1時間40分)
販売時期:7月下旬~10月中旬(気候などにより、変動する場合があります)
※「ていざなす」は、電話注文でのお取り寄せも可能です。