• 地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
    ※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。

  • カテエネ 農食ツーリズム
  • 第10回

    岐阜県関市の円空さといもを訪ねて

    岐阜県関市の特産品「円空さといも」は、甘みのあるもっちりとした食感が人気のさといもです。球体に近い丸い実が数多くなり、関市となじみの深い円空僧の彫った円空仏に似ていることから「円空さといも」という名がつけられました。
    今回は、生産農家の山籐操(やまとうみさお)さんの畑を訪ねました。
    (注)取材は2014年11月下旬におこないました。
  • 岐阜県関市の「円空さといも」

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見る・聞く栄養満点の水と土が生み出す、幻のさといも

親から子、子から孫と増えていく実

関市を含む岐阜県の小瀬地域は、長良川水系の豊かな水と良質な土壌に恵まれており、さといも栽培に最適な環境です。
11月下旬、収穫の時期を迎えた山藤さんの畑の畝(うね)をくわで掘り返してみると、何やら黒いかたまりがごろりと出てきました。これは「円空さといも」の集合体です。さといもは親いもから子いも、孫いもとつながって実がなるため、収穫時は1つのかたまりになっています。

  • 収穫に励む山藤さん(左)とJAめぐみの「関農業サポートセンター」の武藤保(むとうたもつ)(右)さん。

  • かたまりをほぐすと、大小さまざまな「円空さといも」が姿を現します。

  • 「円空さといも」とは?

    従来栽培していたさといもの中から、丸く大きな系統を育成・研究してつくられた希少価値の高い品種です。生産地や栽培に厳しい規定があり、贈答用としても人気を集めています。65軒の生産農家さんが美味しさを守っています(2015年11月現在)。

「より丸く、大きく育て」の親心

球体に近い「円空さといも」を育てるため、生産農家さんはさまざまな努力をされています。例えば、一般的なさといもはまず畝を作って種いもを植えますが、「円空さといも」は平地に植えます。そして親いも、子いもとなっていくたびに、土をかぶせる「土寄せ」という作業を繰り返し、畝を作っていくことで、球体に近い「円空さといも」が育ちやすくなります。こまめに雑草を取り除くのも、土の栄養がすべて実に届くようにするためです。

  • 収穫した「円空さといも」は、積み上げてビニールシートとわらをかぶせます。
    こうすると真冬でも霜から守ることができ、3月まで出荷が可能です。

  • さといもは子孫繁栄の縁起物として知られ、球体に近い「円空さといも」は、贈答用として人気です。

地元のお母さんが活躍!「JAめぐみのさといも選果場」

組合農家さんが作った「円空さといも」は、すべてこの選果場に集められます。
ベルトコンベアで流れてくる「円空さといも」を真剣な目で見つめるのは、ここで働く地元のお母さんたち。熟練の目で良質なものを見極め、手作業で選り分けていきます。

  • 生産農家さんが「円空さといも」を運び込む「JAめぐみのさといも選果場」。

  • 生長不良やキズの有無を見極め、規格外を取り除いていきます。

  • 専用の機械を使って2S、S、M、L、2L、3Lの6サイズに選別します。

  • 選別後は「円空さといも」専用の段ボールに詰められ、全国に出荷されます。

  • 岐阜大学の学生とつなぐ農業の輪

    円空さといも農業組合の皆さんは、5年ほど前から岐阜大学地域科学部の学生さんと、「円空さといも」の栽培体験を通じて農業に触れる授業を毎年8月20日前後におこなっています。
    集まった20数名の学生さんは雑草を抜いたり、追肥をまいたりしながら「円空さといも」の発育状況や栽培方法を学びます。慣れない畑作業にドロだらけになって取り組む学生さんと、それを見守る組合の皆さんは終始笑顔で、楽しそうに交流を深めていました。

  • 説明する組合長の手元を見つめる学生さんたち。さといもの生態に興味津々。

  • せっせと草抜き。「円空さといも」の大きな葉っぱが、陽射しを遮ります。

  • 「大きくて丸い実になれよ」と願いも込めて追肥します。

  • 恒例となった集合写真。みんなの頑張りで、作業は2時間ほどで終了しました!

食べるロングセラーの「円空さといも」メニュー

約30年変わらない味。「円ちゃん棒」が味わえる「とろろ庵四季」

「とろろ庵四季」で食べられる「円ちゃん棒(300円税抜)」は、「円空さといも」に米、鶏肉を混ぜたものを油で揚げて、外はカリッ、中はフワッの食感が楽しめる一品です。昭和63年に、町おこしの一環として婦人会の皆さんが開発したメニューで、約28年経った今も同じレシピで作られています。

  • 甘いタレのついた衣とスパイシーな中身が対照的な「円ちゃん棒」。

  • 山小屋風の店内で熊鍋・しし鍋など、いろり料理を楽しめる「とろろ庵四季」。

  • ご主人の上杉藤雅(うえすぎふじまさ)さんは元猟師。

  • 「円ちゃん棒」は、「奥美濃古地鶏」など関市原産食材にこだわっています。

  • アクセス&インフォメーション とろろ庵四季

    岐阜県関市下有知2922-2 Tel:0575-22-7765
    営業時間 17時~21時30分 金曜・土曜・日曜のみ11時30分~14時も営業
    定休日 水曜
    新しいウィンドウを開きますとろろ庵四季ホームページ
    ■車でのアクセス
    東海北陸自動車道「美濃IC」から約5分
    国道156号線「下有知追分」の信号を南東へ約600m進んだ右側
    ■電車でのアクセス
    長良川鉄道「関下有知駅」から北西へ徒歩約16分

「円空さといも」のもっちりとした食感をそのままコロッケに!

  • JAめぐみの「とれったひろば関店」では、「円空さといもコロッケ(1個135円税込)」が人気です。
    もっちりほくほくの「円空さといも」に、紅ショウガの風味を効かせた和風味に仕上がっています。12月~3月の期間限定販売です!

  • 「円空さといもの食感がコロッケにぴったりです」と、開発スタッフ一押しの自信作!

買う関市の「円空さといも」を買うならココ!

その日に出荷された「円空さといも」が店頭に並ぶ「とれったひろば 関店」

「円空さといも」は、一部の販売ルートを除き、市場で手に入りづらい商品ですが、「JAめぐみの」産地直売所「とれったひろば 関店」では出荷期間中(11月~3月)であればつねに販売されています。「食べる」で紹介した「円空さといもコロッケ」もここで買うことができます。

  • 「円空さといも」は11月から徐々に出回り、3月いっぱいまで販売されています。

  • 「JAめぐみの」から購入できる贈答用「円空さといも」。3kgで3,500円(税別)。収穫状況で価格は変動します。

  • 「円空さといも」は「JAめぐみの」からも購入できます。注文の受付は2015年11月から2016年1月20日まで、商品発送は2015年12月以降です。「JAめぐみの」に、TelまたはFaxでお申し込みください。

関市が誇るもう1つの旬、キウイフルーツも食べ頃です

「円空さといも」の出荷時期には、もう1つの名産である関市洞戸産のキウイフルーツも食べ頃を迎えます。海外産のイメージが強いキウイフルーツですが、昼と夜の温度差が大きい洞戸町では、糖度の高いキウイフルーツが採れるそうで、約30年も前からキウイフルーツを生産しています。

  • 洞戸産「キウイフルーツ」。甘さはもちろん、ビタミンCも豊富で身体にやさしい果物です。

  • スプーンですくえるほどやわらかく熟したら食べ頃です。

ミルクとキウイの良さを両立!高校生が開発したアイスクリーム

岐阜農林高校動物科学科の学生さんは、岐阜県の特産品を使ってさまざまなフレーバーのアイスクリームを開発しています。その1つ、洞戸産のキウイフルーツを使った、岐農乳アイス・キウイフルーツ味(1個250円税込)を見つけました。新鮮なミルクをたっぷり使ったアイスクリームの中に、キウイフルーツがさっぱりとした味わいをプラスしています。

  • 岐阜農林高校動物科学科の学生さんのポスターと、牛のイラストが目印です。

  • 良質なミルクとキウイフルーツをたっぷり使用したアイスクリームは、ほのかにキウイ色です。

  • アクセス&インフォメーション ファーマーズマーケット「とれったひろば 関店」

    岐阜県関市小屋名1436 Tel:0575-27-1255
    営業時間 9時~17時 定休日 火曜
    新しいウィンドウを開きますファーマーズマーケット「とれったひろば関店」ホームページ
    ■車でのアクセス
    東海北陸自動車道「関IC」から約10分

    「JAめぐみの」からも「円空さといも」を取り寄せることができます。
    Tel:0575-23-8115 Fax:0575-22-4248

学ぶモダンなたたずまいの「関市円空館」といやしの円空仏

「円空さといも」の名前の由来となった、微笑みの円空さん

円空僧は江戸時代初期の僧で、地元の方には親しみをこめて「円空さん」と呼ばれています。64年間の生涯で、岐阜県を拠点に北海道から近畿地方の諸国を行脚(あんぎゃ)しながら、なんと約12万体もの仏像を彫ったといわれています。
円空さんの彫った仏像は「円空仏」とよばれ、円空さんが訪れた各地の寺社や仏閣に数多く残されています。病や災害に苦しむ庶民のために彫られたものも多く、関市だけでも330体ほどが確認されています。

  • モダンな雰囲気の「関市円空館」。約30体の「円空仏」が保管され、円空さんの自刻像も展示されています。

  • 丸い頭とやさしい微笑みを浮かべた表情が特徴的な円空仏。

  • 「関市文化財保護センター」の森島一貴(もりしまかずき)さん。

美しい竹林の散策も楽しめます

「関市円空館」がある関市の池尻地区は、円空さんが晩年を過ごされ、生涯を終えたとされる場所です。駐車場から関市円空館までは竹林になっており、途中に円空さんのお墓があります。時間にすると約3~5分の散策ですが、木漏れ日の山道はとても静かで、さわやかな自然の空気に包まれ、神聖な気持ちが高まります。

  • 駐車場から散策路への案内板があり、ここから竹林の中を5分ほど歩きます。

  • 木漏れ日が美しさを際立たせる散策路。秋の間は写真のように紅葉が楽しめます。

アクセス&インフォメーション 関市円空館

岐阜県関市池尻185 Tel:0575-24-2255 開館時間 9時~16時30分
休館日 月曜(祝日を除く)・祝日の翌日(土曜・日曜・祝日を除く)・年末年始(12月29日~1月3日)・臨時休館(年に1回、燻蒸処理のため休館します)
入場料 大人200円(団体20人以上150円)・中学生以下無料
新しいウィンドウを開きます関市円空館ホームページ
■車でのアクセス
東海北陸自動車道「関IC」から約15分

作る今日はおうちで「農食レストラン」

今回は松本一本ねぎを使ったレシピを紹介するニャ

さといもは水分が多いため、さつまいもや山いもと比べるとエネルギー量は半分以下というヘルシーな食材です。独特のぬめりにはムチンやガラクタンが含まれており、胃腸の働きを活性化させて免疫力も高めてくれるので、病気予防に効果的といわれています。

蓮沼 あいさん

農食シェフ蓮沼 あい

食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイト新しいウィンドウを開きますhttp://ai-hasunuma.com

さといもの
ジンジャーポタージュ
さといもを細かくつぶした、クリーミーなポタージュ。
ミキサーを使わず、さといもの下処理はレンジで簡単に。
ショウガたっぷりの身体があたたまる一品です。

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〈材料(4人分)〉
  • さといも 正味200g
  • タマネギ 1/2個
  • ショウガ 3片
  • 水 150ml
  • 牛乳 300ml
  • 生クリーム 100ml
  • 固形ブイヨン 1個
  • みそ 小さじ1
  • 塩 小さじ1/2
  • こしょう 少々
  • オリーブオイル 大さじ1
  • バター 15g
トッピング
  • クルトン、オリーブオイル、イタリアンパセリ 各適量
〈作り方〉
  1. さといもを洗って半分に切り、耐熱ボウルに入れてラップをし、600wのレンジで6分ほど加熱する
  2. 1がやわらかくなったら、さっと冷水につけて皮をむく(Point1)
  3. ショウガはよく洗って皮ごと千切りにし、タマネギはみじん切りにする
  4. 鍋にバターとオリーブオイルを入れて熱し、ショウガをやや中火で炒める
  5. 香りがたったらタマネギを加えて炒め、透明になったら2のさといも、水、固形ブイヨンを加えてフタをし、ときどき混ぜながら8分ほど煮る。
  6. さといもをフォークでつぶし(Point2)、牛乳、生クリーム、みそを加えて温め(Point3)、塩こしょうで味を整える
  7. 器に盛りつけ、クルトン、オリーブオイル、イタリアンパセリを飾る
おいしく作るポイント
ポイント1

冷水につけると実と皮の間にすきまができ、ツルンと簡単にむくことができます

ポイント2

フォークの背を使って細かくなるまで押しつぶします

ポイント3

沸騰させないように気をつけながら、なじませるように数回に分けて入れます

さといもと鮭の炊き込みごはん秋の味覚を代表するさといもと鮭を使った一品。
炊飯器を使うので手軽なうえ、ホクホクした炊きあがりが絶品です。

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〈材料(4人分)〉
  • 米 2合
  • さといも 6個
  • 塩鮭 2切れ
  • いくら 1パック(38g)
  • 三つ葉 1/3束
  • バター 20g
  • 酒 大さじ1
  • 淡口醬油 大さじ1・1/2
  • 昆布 1枚(7cm×10cm)
〈作り方〉
  1. 米をとぎ、お好みの水加減にした後、昆布を入れて30分ほど置く
  2. 鮭は酒を回しかけて10分置き、キッチンペーパーで水気を拭き取ってから、油少々(分量外)を熱したフライパンで焼く(Point1)
  3. さといもの皮をむいて1cmの厚さに輪切りし、塩少々でもみ、水で洗ってぬめりを取る(Point2)
  4. 1から水を大さじ1・1/2を取り除き、淡口醬油を加えて、2の鮭と3のさといもをのせて炊く
  5. 炊きあがったら昆布を取り除き、バターを加えて混ぜる(Point3)
  6. 茶碗に盛りつけて三つ葉といくらをのせる
おいしく作るポイント
ポイント1

酒をかけることで生臭さを消します

ポイント2

粘りが出てくるまでもみこみ、ぬめりを取り除きます

ポイント3

鮭は骨を取ってほぐしてから混ぜ合わせると食べやすくなります

さといもの磯辺揚げ風カラッと揚がったさといもの磯辺揚げ風は紅ショウガと青のりをよく効かせた和風な味わい。
さといも本来の香りと風味が楽しめる一品です。

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〈材料(4人分)〉
  • さといも 6個
  • 天ぷら粉 50g
  • 水 50cc
  • 青のり 小さじ1
  • 紅ショウガ 50g
  • 塩 少々
〈作り方〉
  1. さといもはたわしで皮をこそげ取り、半分に切る。大きいものは4等分する。耐熱容器に入れてラップをし、600wのレンジで4分ほど加熱する(Point1)
  2. ボウルに天ぷら粉と青のり、紅ショウガ、水を入れて混ぜ、あら熱を取った1を加えて混ぜる(Point2)
  3. フライパンに高さ2cmほど油を入れて180℃に熱し(Point3)、2をカラッとするまで揚げる
  4. 全体に塩をふって器に盛りつける
おいしく作るポイント
ポイント1

たわしを使って皮をこそげ取ると、さといもの香りが逃げず、風味良く仕上がります

ポイント2

衣はさといもとからみやすいよう、やや濃い目に作ります

ポイント3

油を少なめにした揚げ焼きがおすすめです

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    締切日 2016年1月13日(水)

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