地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第11回
牧之原市の自然薯を訪ねて
自然薯(じねんじょ)とは山に自生する山いもの一種です。かつては天然ものしか手に入らず、その高い栄養価から、山菜の王者として珍重されてきました。やがて人工栽培ができるようになり、静岡県の牧之原市でも自然薯の栽培が盛んにおこなわれています。今回は、牧之原市で15年近く自然薯を栽培されている本杉光雄(もとすぎみつお)さんの畑を訪ねました。
(注)取材は2015年1月と2015年9月におこないました。
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さまざまな工夫を凝らし、美味しさを保ってきた自然薯
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パイプの中で、まっすぐに育つ自然薯
天然の自然薯は地中深く伸びていくため、探すのも、掘り出すのも大変な作業です。ところが収穫時期に本杉さんの畑を訪れると、地中に埋められたビニールパイプの中から、自然薯がするすると出てきました。これは「中間マルチダクトシステム/静岡方式(栽培特許)」という栽培方法で、種いもを植えつけたビニールパイプを何層にも重ね、土の中に埋めることで、全長60cm以上に育った自然薯を簡単に掘り出せる画期的な方法です。
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中間マルチダクトシステム/静岡方式(栽培特許)
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掘り出したばかりの自然薯を手にする本杉さん。
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この栽培方法は、傷つけず、まっすぐ育てるためにたどり着いたものです。
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地上のつるが枯れる頃、地中では自然薯が収穫の時期を迎えます。
美味しい自然薯はいい「むかご」あってこそ
ビニールパイプの中に入れるものは、近くの山から採ってきた天然の無菌土と、選りすぐりの「むかご」で育てた種いもです。「むかご」とは、自然薯の葉のつけ根にできる球状の小さな芽です。
自然薯の栽培期間は「むかご」作りに1年、「むかご」から割りばしほどの種いもを育てるのに1年、種いもが収穫時期を迎えるまでに1年、合計3年かかります。本杉さんが特にこだわっているのは「むかご」作りです。質の良い「むかご」を育てるために専用の畑を設け、ネットをかぶせて害虫から守っています。
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害虫対策のため、目の細かいネットがかけられた「むかご」採取専用の畑。
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質の良い「むかご」を選び出すことで、美味しい自然薯を育てることができる。
9月に本杉さんの畑を訪ねると、つるが青々と茂っていました。自然薯は根から周りの養分を吸収する性質があるので、安全に考慮して化学肥料は使っていません。そのため本杉さんは足しげく畑に通い、害虫などが発生していないか目を光らせ、つるの様子をチェックします。
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トンネルのように生い茂る自然薯のつる。
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葉のつけ根に「むかご」を発見!
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たくましく育つ自然薯のつると、本杉さん。
農家さんの思いが実現!「農」を「食」でつなぐレストラン
自然薯づくしのレストラン「とろろ屋ととろ」
本杉さんの次男である本杉広樹(もとすぎひろき)さんは、両親が作った自然薯を直接消費者に届けたいという思いから、自然薯料理のレストラン「とろろ屋ととろ」を経営しています。「農を食でつなぐ」をコンセプトに、生産者の顔が見えるレストランとして、自然薯はもちろん、その他の食材もすべて静岡県内の農家さんから仕入れています。
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「とろろ屋ととろ」の前で本杉さんファミリーが勢揃い!3代そろって働く店内は、アットホームな雰囲気です。左がレストランを経営する本杉広樹さん。
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和モダンな「とろろ屋ととろ」の入口と店内。小さいお子さま連れでも安心なお座敷席は、掘りごたつになっています。
ねばりが絶品のとろろ汁
「とろろ屋ととろ」の看板メニューは、自然薯を皮ごとすりおろした「とろろ汁(単品600円税込)」。ねばりのある自然薯に、サバのだしを効かせたみそ汁を合わせた「とろろ汁」は、そのままでも、ごはんにかけても絶品です。地元特産の豚肉、金豚王(きんとんおう)と、とろろの組み合わせが絶妙の「金豚王カルビとろろ丼(1,730円税込)」も人気です。
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厚めにカットして甘辛く味つけした金豚王と、とろろの相性もバツグン。
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とろろ汁をたっぷりかけていただきます。
とろろ好きは迷わず注文!「とろろづくし御膳」
「とろろづくし御膳(2,380円税込)」は、とろろ汁をはじめ、工夫を凝らした自然薯の一品料理が4品並びます。「全て自然薯?」と首をかしげてしまうほど、さまざまな食感に驚かされます。
「とろろ汁」に使われるだしは地域でさまざまな違いがあるため、お客さまの希望があれば、サバ以外のだしで作った「とろろ汁」も提供しています。
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調理法を変えてさまざまな食感が楽しめる「とろろづくし御膳」。
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左からいそべ揚げとろろ、とろろのかばやき、むかごの天ぷら、とろろ漬けマグロ。
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本杉さん自慢の自然薯は、店頭で買うこともできます。
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使う道具は、おろし器とすり鉢。
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自然薯を金具でおろす。
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すり鉢でフワフワになるまで、すり続ける。
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だしを加えれば、美味しいとろろ汁の完成!
牧ノ原市の特産品が揃う、JAハイナン「ほうせん館」
農家さんが持ち込む新鮮野菜がお買い得です!
JAハイナンほうせん館では、本杉さんが加入する生産農家さんの団体「牧之原自然薯ファミリー」の自然薯も取り扱っています。また、牧之原市内や吉田町など近隣の農家さんが育てた新鮮な旬の野菜やくだもの、特産品が並びます。
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大きな黄色の看板が目印のJAハイナンほうせん館。
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生産農家の皆さんが持ちこむ、りっぱな自然薯。
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本杉さんも加入する「牧之原自然薯ファミリー」。
花粉症の方におすすめ!幻のくだもの「じゃばら」
自然薯が出回る12月~1月は「じゃばら」もおすすめです。ユズやカボスの仲間ですが、生産量が少ないことから「幻のくだもの」と呼ばれることもあります。抗アレルギー作用があるとされるフラボノイド成分「ナリルチン」を多く含むため、花粉症に効くくだものとして注目されています。
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特産品の「じゃばら」は、花粉症対策に重宝されています。
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ほうせん館の藤田幸広(ふじたゆきひろ)店長(右)と、大井克己(おおいかつき)さん。
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「じゃばらポン酢(420円税込))「じゃばら果汁(500円税込)」などの加工品もおすすめです。
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アクセス&インフォメーション JAハイナン ほうせん館
静岡県牧之原市細江1986-1 Tel:0548-24-1177 営業時間 9時~18時 定休日 年中無休
■車でのアクセス
東名高速「吉田IC」から約15分、国道150号線沿いの大きな看板「ほうせん館」が目印
自然薯の販売は11月~1月(収穫状況によって変動します)。直接お電話にてお問い合わせください。
めずらしいお茶の博物館で、知らなかった魅力を発見!
お茶のことならなんでもわかる、お茶の博物館
牧之原市と近隣の島田市ではお茶栽培も盛んです。お茶と自然薯はいずれも水はけの良いところを好み、お茶栽培の閑散期に自然薯を栽培できることもあって、30年ほど前から両方を作る農家さんが増えました。
「とろろ屋ととろ」から徒歩1分のところにあるお茶の博物館「お茶の郷」では、牧之原のお茶だけでなく、世界のお茶の歴史や文化について学ぶことができます。
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お茶の博物館、日本庭園、おみやげどころなどが集まる「お茶の郷」。
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お茶の郷博物館の高原裕吾(たかはらゆうご)さん。
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見どころ1「世界のお茶」
世界30カ国、約90種類の茶葉が並ぶ展示室。
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見どころ2「石うす体験」
てん茶を石うすで挽く「石うす体験(入館料込)」。
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見どころ3「静岡のお茶の試飲」
金谷茶、島田茶、川根茶のいずれかを試飲できます。
見どころ4「日本庭園と茶室」
自由に散策できる日本庭園内には、茶人として有名な小堀遠州(こぼりえんしゅう)がデザインした茶室が復元されています(茶室入館料500円)。茶室では、お抹茶をいただきながら、お茶の先生のご指導による茶道体験ができます。
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季節で表情が変わる日本庭園は、海外からの観光客にも人気です。
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小堀遠州デザインを復元した茶室は、小粋な絵柄や彫りなどの演出が見どころです。
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本格的な作法で入れたお茶がいただける茶道体験(茶室入館料込)。
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日替わりで「茶道体験」の講師を務める、遠州流で志戸呂焼 利陶窯の窯元でもある青嶋利陶(あおしまりとう)先生。
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アクセス&インフォメーション お茶の郷
静岡県島田市金谷富士見町3053-2 Tel:0547-46-5588 休館日 火曜(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
開館時間 博物館・庭園 9時~17時(入館は16時30分まで) 茶室「縦目楼」 9時30分~16時(入館は15時30分まで)
入館料 博物館 高校生~大人600円、小中学生300円、茶室 1人500円(年齢、人数による割引はございません)
■車でのアクセス
東名高速「相良牧之原IC」から約10分
■電車でのアクセス
JR金谷駅下車、タクシーで約5分、または徒歩で約30分
(注)2016年5月30日(月)から、リニューアル工事のため、全館休館となります。
今日はおうちで「農食レストラン」
自然薯は漢方薬の原料に使われるほど栄養豊富な食材です。ビタミンやミネラルの他、消化酵素のアミラーゼがたくさん含まれ、消化吸収をうながします。また「ディオスゲニン」という成分は美白効果があり、女性にうれしい食材として注目されています。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(2人分)〉
- 自然薯 70g
- 牛乳 80g
- ミックスチーズ 80g
- 白みそ 小さじ2
野菜
- スナップえんどう 8本
- アスパラ 4本
- ジャガイモ 1個
- プチトマト 4個
- フランスパン 適量
〈作り方〉
- スナップえんどう、アスパラ、ジャガイモはそれぞれ好みの固さにゆでておく
- 鍋に牛乳とチーズを入れて溶かし(Point1)、すりおろした自然薯と白みそを加えて混ぜる(Point2)
- 器に盛りつけ、野菜を添える
おいしく作るポイント
牛乳を加熱しながらチーズを溶かすと、なめらかに仕上がります
白みそ、自然薯の順に加え、なじむまでよく混ぜます
〈材料(2人分)〉
- 自然薯 10cm
- 鶏ささみ 2本
- オクラ 5本
- プチトマト 5個
- フリルレタス 1/2個
- 水菜 1束
- すりゴマ 大さじ1
A
- 塩、こしょう 各少々
- 酒 大さじ1
自然薯ドレッシング
- 自然薯 10g
- 和風ドレッシング 大さじ2
〈作り方〉
- 鶏ささみはフォークで数ヶ所穴をあけ、Aの材料をふりかけてラップし、600wのレンジで約1分半加熱する
- 鶏ささみが少し冷めたら、手でさく(Point1)
- 自然薯は皮をむいて短冊切りに、オクラはさっとゆでて斜め薄切りにする。水菜は5cmの長さに切る
- プチトマトを半分に切り、フリルレタスと一緒に器に盛りつける。2、3をのせてすりゴマをかける
- 和風ドレッシングにすりおろした自然薯を加えて混ぜ(Point2)、サラダにかける
おいしく作るポイント
鶏ささみは、手でさける温度になるまで、そのまま冷やします
自然薯とドレッシングが分離しないようよく混ぜます
〈材料(2人分)〉
- 自然薯 20cm
- 鮭切身 2切れ
- 水 100ml
- ゴマだれ 適量
- 三つ葉 1/2束
鮭の下味
- 酒 大さじ1
- 塩 小さじ1/2
- こしょう 少々
〈作り方〉
- 鮭は下味をつけて10分おく
- 自然薯は皮をむいて2cmの厚さで斜め切りにし、フライパンに並べる
- 1の鮭は水気を拭き(Point1)、自然薯の上に並べて、水を加える
- 沸騰したら(Point2)弱火にし、約8分蒸す
- 器に盛りつけてゴマだれをかけ、三つ葉を刻んで散らす
おいしく作るポイント
鮭は、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ります
臭みが出ないよう、沸騰するまで強火で加熱します
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「牧之原の自然薯(約800g)」を3名さまにプレゼント!締切日 2016年2月7日(日)
静岡県島田市金谷富士見町3172 Tel:0547-32-9637 営業時間 10時~22時(水曜は16時まで) 定休日 木曜
自然薯農家れすとらん とろろ屋ととろホームページ
■車でのアクセス
東名高速「相良牧之原IC」から約10分
■電車でのアクセス
JR金谷駅下車、タクシーで約5分、または徒歩で約30分
ホームページで自然薯のお取り寄せも可能です。売り切れしだい終了となります。
株式会社イージービー農家直売所ホームページ