地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第13回
日間賀島のタコを訪ねて
愛知県の三河湾に浮かぶ日間賀島は、周囲の海が水深2~3mと比較的浅めです。そのため、タコのエサとなるアサリやカニが集まりやすく、昔からタコ漁が盛んにおこなわれてきました。噛めば噛むほどうまみがあふれる日間賀島のタコは、島内にある60軒以上の旅館や民宿すべてで味わうことができます。
今回は日間賀島で「タコつぼ漁」をされている漁師の北川博司(きたがわひろし)さんを訪ねました。
(注)取材は2015年12月におこないました。
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二人三脚で約50年。夫婦でおこなう「タコつぼ漁」
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色が濃く、足が太くて短い、いきのいい日間賀島産のタコ
愛知県知多半島の師崎港から高速船で約10分。日間賀島は海岸沿いに民宿が並ぶ、のどかな島です。島内を散策すると、軒下に吊るされた、大きなタコの天日干しが至るところで見られ、タコが島民の暮らしに根づいていることがわかります。
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日間賀島にある3つの港のなかで、最も賑やかな西港。
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真っ赤なタコのモニュメントがお出迎え。
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タコ飯にすると美味しい天日干し。
正午近く、早朝から漁に出ていた北川さんの船が西港へ帰ってきました。船底に設けられたいけすの中には獲れたタコがぎっしり。北川さんが獲るのは真ダコという種類で、日本では食用として人気の高い品種です。特に日間賀島産のものは身体の色が濃く、足が太くて短いのが特徴です。
真ダコは年中獲れますが、ピークを迎えるのは7~8月。産卵を控え、うまみが増す時期でもあります。
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船底にいけすが設けられた「タコつぼ漁」の船。
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日間賀島育ちの真ダコは大きいもので6kg以上にもなるというから驚きです。
漁師の経験と知識がものをいう「タコつぼ漁」
北川さんの漁はタコつぼを使っておこなう「タコつぼ漁」。身を守る殻がないタコは、狭いところに隠れる習性があり、タコつぼを4~5日ほど海に沈めておくと、隠れ家を求めてタコが自らつぼに入り込む仕掛けです。
「タコつぼ漁」はつぼを仕掛ける場所が何より重要で、タコの生息地域や海底の地形などを知り尽くした漁師でなければ難しい漁法。島内でも「タコつぼ漁」をおこなうのはわずか7軒だけです。
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北川さんのタコつぼは1,000個ほど海底に沈めてあり、1度に200~300個をローテーションで引き上げます。
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タコはキレイ好きで、フジツボなどがついていると嫌がって入らないため、清掃が欠かせません。
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いけすのフタが開くと、よじ登って逃げ出そうとするいきのいいタコ。
とれたての鮮度を保ったまま届けます
獲れたタコの鮮度を守るため、船上で素早くしめてしまいます。夫婦の息の合った共同作業で、タコが逃げたり暴れたりする隙を与えません。
タコ漁には疑似餌を使って釣ったり、罠を仕掛けたかごで獲ったりする方法もありますが、「タコつぼ漁」はタコを傷つけずに捕まえることができるため、市場での価値が高く、「タコつぼ漁」のタコを選んで仕入れるホテルやお店もあります。
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北川さんと奥様の道子(みちこ)さん。寒い冬期以外は夫婦揃って漁に出ています。
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息の合ったコンビネーションで作業を進める北川さんご夫婦。
老舗料理宿「乙姫」と島唯一のタコ焼き屋「はっぴい」
西港のすぐ目の前!巨大いけすを眺めながらのタコ料理
西港から徒歩約1分の立地にある、5階建ての旅館が「乙姫」です。1階は新鮮な海鮮料理がいただけるお食事処になっており、宿泊客以外の方でも利用できます。
店内には大きないけすがあり、いつでも新鮮な魚介類がいただけます。
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「乙姫」は、日間賀島で創業から60年以上も続く老舗旅館です。
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大きないけすの中には、タコをはじめとする地元の魚介類がいっぱい!
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若女将の鈴川博子(すずかわひろこ)さん。料理の食べ方などを気さくに教えてくれます。
素材のいきる「タコしゃぶ」や「タコの丸ゆで」がおすすめ
タコ料理の人気No.1は「タコしゃぶ」。薄くスライスしたタコの身をお湯にさっとくぐらせ、ポン酢をつけていただきます。ほどよい弾力がある身は噛めば噛むほどにうまみがあふれ、タコ本来の美味しさを堪能できます。
家族や仲間とシェアして食べたい、「タコの丸ゆで(1皿2,000円~)」は、タコ1匹を丸ゆでにした豪華な一品。ハサミで少しずつ切り分けながらいただきます。
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タコしゃぶ(一人前800円税抜)。お湯にくぐらせて身がきゅっと締まったところをいただきます。
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大皿の上で足をくるくると巻いたタコは迫力満点。
タコの大きさは食べる人数に合わせて選んでくれます。
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アクセス&インフォメーション 乙姫
愛知県知多郡南知多町日間賀島西港
Tel:0569-68-2107 営業時間(1階のお食事処)11時30分~14時30分
休業日 不定休
■師崎港からのアクセス
名鉄海上観光船「高速船」で約10分、「日間賀島西港」から徒歩約1分
選び抜いた日間賀島産のタコで作る、オリジナルな「タコ焼き」
西港から島の中心に向かって10分ほど歩くと、島唯一のタコ焼き屋、おやつショップ「はっぴい」があります。開店は23年前。オーナーの鈴木のり子さんが「島の子どもたちが気軽に立ち寄れるお店を」と開いたのが、タコ焼き屋でした。
学校が終わると、子どもたちが続々と来店。タコ焼きを頬張る子どもたちの成長を感じるのが、何よりも幸せと鈴木さんはいいます。
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信頼するタコつぼ漁師さんから、味も大きさも納得のいく日間賀島産のタコだけを仕入れています。
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生地はいつでも同じ味わいになるよう季節ごとに割合を変え、キャベツや天かすなどをブレンド。
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穴の中ではひっくり返さず、タコの形に焼き上げるオリジナルなタコ焼き!
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オーナーの鈴木さん。タコ焼きを焼きながらの軽妙なトークも観光客に大人気。
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店内で目を引く真っ赤なタコのぬいぐるみ
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アクセス&インフォメーション おやつショップ はっぴい
愛知県知多郡南知多町大字日間賀島一本松61-1
Tel:0569-68-2053(電話による事前注文も可能)
営業時間 10時~16時(売切れにより、早まることがあります。お電話でお問い合わせください)
定休日 火曜・その他(タコの仕入れ状況によって休業する日があります)
■師崎港からのアクセス
名鉄海上観光船「高速船」で約10分、「日間賀島西港」から徒歩約10分
島に来たら必ず立ち寄りたい、お土産屋さんと手焼きせんべい
日間賀島のお土産はここ!「かもめ売店」
「乙姫」の隣にある「かもめ売店」では、日間賀島の豊富な海の幸を使用した人気のお土産が揃っています。
島の特産品のタコとフグをかたどった「多幸(タコ)まんじゅう(600円税抜)」は店内の工房で作られ、平日の午前中には、まんじゅうの焼きあがる香ばしい香りが店内を満たしています。
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大人気!島のタコを使用した「漁師自慢タコめしの素(700円税抜)」。
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「タコの塩辛(650円税抜)」や「タコわさ(650円税抜)」などのおつまみもおすすめ。
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平日の午前中、店内の工房で焼き上げる「多幸まんじゅう」。
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人気商品だけあって、山積みで売られています。
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「かもめ売店」のスタッフの皆さん。
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アクセス&インフォメーション かもめ売店
愛知県知多郡南知多町日間賀島西浜5 Tel:0569-68-2870
営業時間 8時~17時 定休日 年中無休
■師崎港からのアクセス
名鉄海上観光船「高速船」で約10分、「日間賀島西港」目の前
店内の工房で焼き上げる手焼きせんべい「鈴円本舗(すずえんほんぽ)」
かもめ売店の2軒隣にある「鈴円本舗」では、日間賀島の新鮮なタコをふんだんに練り込んだ「豊(ゆたか)10枚箱入り617円税込」が人気です。
「豊」の他にも、島で獲れる赤しゃエビを練り込んだ「恵(めぐみ)8枚箱入り617円税込」や、赤しゃエビのうまみをそのまま楽しめる「エビ姿焼き(1袋648円税込)」もおすすめです。
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店の奥が工房となっており、毎日作りたての手焼きせんべいを買うことができます。
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一番人気の「豊」。タコの風味が香る、ぱりっとした軽い食感で食べやすいせんべいです。
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鈴円本舗の看板娘さんとパチリ!
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アクセス&インフォメーション 鈴円本舗
愛知県知多郡南知多町日間賀島西浜28 Tel:0569-68-9110
営業時間 8時~17時 定休日 元旦のみ
■師崎港からのアクセス
名鉄海上観光船「高速船」で約10分、「日間賀島西港」から徒歩約1分
「日間賀島資料館」で学ぶ、日間賀島の昔と今
古き良き日間賀島をかいま見る資料館
日間賀島西港から徒歩約15分の場所にある「日間賀島資料館」は、島の経済を支えた漁業の歴史を中心に、島民の生活文化を学ぶことができます。
タコ漁のコーナーでは、昭和初期に使っていたタコつぼなどの貴重な漁具が展示されています。タコつぼは年代の古いものから並んでおり、縦置きから横起きへ、材質も陶器からプラスチックへと、形状や材質が時代に沿って変わっているのがよくわかります。
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1988年設立の日間賀島資料館。年代物の貴重な漁具が並びます。
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当時使っていた漁具や漁法、島の日常を切り取った写真が展示されています。
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古い順に並んだ歴代のタコつぼ。形も材質も時代に沿って進化しています。
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ご案内いただいた、日間賀島観光協会の鈴木甚八(すずきじんぱち)会長。
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アクセス&インフォメーション 日間賀島資料館
愛知県知多郡南知多町日間賀島東側83 Tel:0569-68-2388
営業時間 9時~17時 休館日 年末年始 入館料 無料
■師崎港からのアクセス
名鉄海上観光船「高速船」で約10分、「日間賀島東港」または「日間賀島西港」から徒歩約15分
今日はおうちで農食レストラン
タコは、高たんぱくで低カロリーのヘルシーな食材です。ビタミンAやビタミンB群、ビタミンEを含み、疲労回復や老化防止などの作用があります。たんぱくな味なので、いろいろな味つけを楽しめるのも魅力。今回は、刺身、ゆでる、揚げるの3つの調理法で、タコの美味しさを引き出します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(2個分)〉
- タコ刺身 100g
- オレンジ 1/2個
- グレープフルーツ 1/4個
- キウイ 1/2個
- 水菜 適量
- しょうゆ 適量
にんにく油
- オリーブオイル油 大さじ1・1/2
- にんにく 1片
〈作り方〉
- オレンジ、グレープフルーツは皮をむいて房を食べやすい大きさに切る。キウイは皮をむいて5mm幅の半月に切る。水菜は2cm幅に切る
- 器にフルーツとタコを交互に盛りつけ(Point1)、水菜をのせる
- にんにく油を作る。フライパンにオリーブオイル、みじん切りにしたにんにくを入れ、にんにくが焦げないよう弱火でじっくり炒める
- 3を2に回しかけ(Point2)、お好みでしょうゆ少々をかける
おいしく作るポイント
彩りよく並べるのがコツ。甘夏、いよかんなどの柑橘系もおすすめです
アツアツのにんにく油を回しかけることで、香ばしさが引き立ちます
〈材料(2人分)〉
- タコ(生) 100g
- 万能ねぎ 30g
- 水菜 50g
- 三つ葉 10g
- 菜の花 50g
A(ナムルたれ)
- しょうゆ 大さじ2・1/2
- ごま油 小さじ2
- おろしにんにく(チューブ)
小さじ1/2 - おろししょうが(チューブ)
小さじ1/2 - 白いりごま 小さじ1
- 一味唐辛子 小さじ1/4
- ごはん 300~400g
- 卵黄 2個分
〈作り方〉
- タコはたっぷりの湯で2~3分ゆでる。冷水であら熱を取り(Point1)、小さめのぶつ切りにする
- 万能ねぎ、水菜、三つ葉、菜の花は3cmの長さに切り、熱湯に塩(分量外)を加えたら、菜の花(全量)と他の野菜の半量を1分ほどゆでて冷水に取り、水気を絞る。(残りの野菜は生のまま使う)
- ボウルにAの材料を混ぜ合わせてナムルたれを作り、1のタコ、2の野菜を入れてさっと混ぜる(Point2)
- 器にごはんを盛りつけ、2の残りの野菜をのせる(Point3)
- 4に3を盛りつけ、卵黄を添え、よく混ぜていただく
(注)ゆでタコを使う場合は、1の作業を省きます
おいしく作るポイント
ゆでたタコを冷水に取ると身がプリッと締まります。冷水の中で、吸盤の汚れもしっかり洗いましょう
野菜の半分はゆで、残りは生のままいただくことで、2つの食感を楽しみます
セロリや山菜など、お好みの野菜を加えてもOKです
〈材料(2人分)〉
- ゆでタコ 150g
- 塩、こしょう 各少々
- 酒 小さじ1
- 片栗粉 適量
たれ
- しょうゆ 大さじ2
- みりん 大さじ2
- 酒 大さじ1
- 砂糖 大さじ1
- おろしにんにく 小さじ1/4
- 粗挽き黒こしょう 小さじ1/2
- 白ごま 小さじ1
- 揚げ油 適量
〈作り方〉
- 下処理したタコを大きめの一口大に切る(Point1)。塩、こしょう、酒をよく揉み込んで下味をつける(約10分)
- たれの材料を鍋に入れて火にかける(Point2)
- 1に片栗粉をまんべんなくまぶし、180℃の油で揚げる(Point3)
- 揚げたタコを2に入れ、たれをよくからめる。粗挽き黒こしょう、白ごまを加え器に盛りつける
おいしく作るポイント
数カ所に切り目をいれておくと食べやすくなります
焦がさないように注意しながら、少しトロッとするまで弱火~中火で煮つめます
揚げすぎると固くなるので、さっと揚げるのがコツ
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多幸まんじゅうとせんべい「豊」セットを5名さまにプレゼント! 締切日 4月14日(木)
【日間賀島のタコのお取り寄せ】
日間賀島のタコは、ほとんど島内で消費され、あまり市場には出回りません。お取り寄せの場合、冷凍のみとなります。
いの丸水産 ホームページ
時期や天候などによって売り切れの場合があります。詳しくはホームページでご確認ください。