地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第22回
長野県東御市の「シナノグルミ」を訪ねて
長野県のくるみ生産量は全国1位で、約8割のシェアを誇ります。中でも長野県東部に位置する東御市(とうみし)では特に盛んで、年間の生産量は県全体の4分の1を占めています。
東御市のくるみは「シナノグルミ」と呼ばれます。実が大きく殻が薄いのが特徴で、道具を使えば簡単に割って実を取り出すことができます。
今回は「JA信州うえだくるみ部会」の部会長、唐澤邦芳(からさわくによし)さんの畑を訪ねました。
(注)2016年9月に取材をおこないました。
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100年先も実をつける、強くたくましい「シナノグルミ」
たわわに実る、緑色の果実
唐澤さんの畑は約300坪の広さで、樹齢18年を超える「シナノグルミ」の木が10本植えられています。木の高さは、剪定により4~5mに整えられていますが、枝は陽射しを遮るほどよく茂っています。
枝をよく見ると、緑色の果実がたわわに実っています。緑色の部分は外果皮(がいかひ)と呼ばれるもので、収穫期を迎えると亀裂が入り、その隙間から茶色い殻がのぞきます。外果皮の亀裂を確認したら、竹ざおなどでたたいたり、枝をゆすったりして落果させます。
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樹齢18年を超える「シナノグルミ」の木。
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竹ざおで枝をたたいて落果させる唐澤さん。
落果させて一面に散らばった「シナノグルミ」を、唐澤さんは緑色の外果皮をむきながら拾い集めます。「シナノグルミ」は染料としても使われるほど強力な色素を持っているので、作業中は手の着色を防ぐためゴム手袋が欠かせません。
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地面に落果した「シナノグルミ」。
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外果皮をむきながら、カゴに入れていく唐澤さん。
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収穫の多い日は10個以上のカゴがいっぱいになります。
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収穫したばかりの「シナノグルミ」は「生くるみ」と呼ばれ、新鮮で独特の食感が楽しめます。
天日干しで、天然の美味しさを守る
収穫した「シナノグルミ」はその日のうちに洗浄し、外果皮の残りや殻についた繊維質を取った後、10日~2週間ほど天日干しにします。自然乾燥させることで、「シナノグルミ」の脂肪分とタンパク質の酸化を防ぎ、じっくりとうまみを実に閉じ込めることができ、1年以上の長期保存が可能になります。
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洗浄機で殻についた繊維質を取り除きます。
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洗浄したばかりの「シナノグルミ」。
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10日~2週間ほど天日干しをすると、1個当たりの重量が約半分になります。
「シナノグルミ」の栽培に適した東御市
「シナノグルミ」は、江戸時代に中国から入ってきた「テウチグルミ」と、明治以降にアメリカから入ってきた「ペルシャグルミ」の自然交雑によるものです。東御市で生産が始まったのは大正初期といわれ、100年以上の歴史があります。
東御市は南への傾斜が多く、日当りが良いことから「シナノグルミ」の一大生産地となりました。
2014年には「JA信州うえだくるみ部会」が発足。栽培方法の均一化を図り、栽培技術の向上、高品質の安定化を進めています。
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東御市の年間晴天率は約70%!「シナノグルミ」の天日干しにも最適です。
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(左から)ご案内いただいた「JA信州うえだ」の唐澤幸司(からさわこうじ)さん、生産農家の唐澤さん、「JA信州うえだ」の北沢知明(きたざわともあき)さん。
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東御市で生まれた「シナノグルミ」
くるみの種類は世界に数百種類あるといわれ、日本では昔から「姫ぐるみ」や「鬼ぐるみ」が全国で栽培されていました。
東御市では昭和30年代に県や市、JAの職員が協力して優良品種の選抜、育成に取り組み、現在の「シナノグルミ」の品質を確立しました。
「シナノグルミ」を使った人気ご当地グルメ「くるみだれ手打ちそば」
「シナノグルミ」のペーストをそばつゆに溶いた「特製くるみだれ」
上信越自動車道「東部湯の丸(とうぶゆのまる)IC」から約5分の位置にある、道の駅「雷電(らいでん)くるみの里」には、信州の郷土料理が味わえる「お食事処 湯の丸」があります。
ここでは信州のご当地グルメとして有名な「くるみだれ手打ちそば(880円税込)」が人気です。味噌などで味つけした「シナノグルミ」のペーストを、そばつゆに溶いた「特製くるみだれ」に、そばをつけていただきます。
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ほんのりくるみの香りがする「特製くるみだれ」は、コシのあるそばとよく合います。
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「特製くるみだれ」は店の手作り。毎日使う分だけ、すり鉢で「シナノグルミ」をすりおろします。
「シナノグルミ」を使った、身体にうれしい「くるみおはぎ」
「くるみおはぎ」と味噌汁がセットになった「おはぎ定食(420円税込)」も人気メニューのひとつです。もち米を使ったおはぎに、細かく砕いた「シナノグルミ」と砂糖をまぶした「くるみおはぎ」は、地元の家庭でよく作られるおやつでもあります。
他にも、「シナノグルミ」を衣に混ぜた鶏の天ぷら「くる天2016(720円税込)」や、トンカツに「特製くるみだれ」をかけた「くるみ味噌カツ定食(880円税込)など、「シナノグルミ」を使った料理が揃っています。
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「くるみおはぎ」と味噌汁がセットになった「おはぎ定食」。「くるみおはぎ(1個140円税込)」は単品でも注文できます。
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地元のお母さんが中心となって営む「お食事処 湯の丸」。なつかしい味に出合えます。
特産品が豊富に揃う、道の駅「雷電(らいでん)くるみの里」
健康食材「シナノグルミ」を買いに行こう!
道の駅「雷電くるみの里」の農産物直売所には、道の駅の組合に加入した生産農家が栽培した「シナノグルミ(300g450円税込~)」や、とれたての生鮮野菜が並びます。「シナノグルミ」は、天日干しを終えた10月から店頭に並び始め、5月ごろまで買うことができます。
国産くるみは希少価値が高く、午前中に売り切れる日も珍しくありません。
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上信越自動車道「東部湯の丸IC」から近く、アクセスに優れる道の駅「雷電くるみの里」。
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売場に並ぶ「シナノグルミ」。12月ごろはもっとも豊富です。
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ご案内いただいた、道の駅「雷電くるみの里」駅長の清水俊文(しみずとしふみ)さん。
道の駅「雷電くるみの里」で人気のおみやげベスト3!
農産物直売所の隣にある売店では、くるみを加工したおみやげが揃っています。中でも人気の高い品を駅長の清水さんに紹介していただきました。
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第1位
「くるみの初恋(480円税込)」くるみを混ぜ込んだメレンゲが、ふんわりサクサク!
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第2位
「くるみゆべし(540円税込)」優しい甘さの餅にくるみの食感がよく合います。
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第3位
「くるみるく(12個入り1,360円税込)」キャラメルクリームとくるみの相性抜群!
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アクセス&インフォメーション 道の駅「雷電くるみの里」
長野県東御市滋野乙4524-1 Tel:0268-63-0963 Fax:0268-63-0966
農産物直売所、および売店の営業時間 8時~19時
年中無休
■車でのアクセス
東京方面より 上信越自動車道「小諸IC」から浅間サンラインを上田方面へ約5分
関西方面より 上信越自動車道「東部湯の丸IC」から浅間サンラインを小諸方面へ約5分
道の駅「雷電くるみの里」ホームページ
電話、ファックス、注文フォームで「シナノグルミ」の注文が可能です。詳しくは店舗までお問い合わせください。
北国街道(ほっこくかいどう)の
宿場町として栄えた「海野宿(うんのじゅく)」
歴史的な町並みが残る、風情あふれる宿場町
しなの鉄道「田中駅」から歩いて20分ほどの「海野宿」は、長野県と新潟県を結ぶ北国街道の宿場町です。海野宿は重要伝統的建造物群保存地区に選定され、今も江戸時代や明治時代に建てられた多くの家が現存しており、タイムスリップしたような気分を味わうことができます。
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「北国街道」は「中山道(なかせんどう)」と「北陸道」を結ぶ重要な街道で、佐渡からの金・銀の輸送、北陸大名の参勤交代、善光寺への参詣客などでにぎわいました。
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江戸時代は宿場町、明治以降には養蚕の町として栄えた海野宿。1986年に歴史的町並みが残る場所として、建設省より「日本の道100選」に選ばれています。
海野宿の中心には「海野宿歴史民族資料館」があり、海野宿の歴史や貴重な資料が展示されています。
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江戸時代後期の建物を復元した「海野宿歴史民族資料館」。
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街道沿住民の協力によって集められた、貴重な展示品の数々。
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明治時代の生活ぶりを復元した資料館内部。
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アクセス&インフォメーション 海野宿
長野県東御市本海野
お問い合わせ先 0268-62-1111(東御市観光協会)
年中無休
■車でのアクセス 上信越自動車道「東部湯の丸IC」から国道18号を約10分
■電車でのアクセス しなの鉄道「大屋駅」または「田中駅」から徒歩約20分。または、JR・しなの鉄道「上田駅」からタクシーで約30分
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アクセス&インフォメーション 海野宿歴史民俗資料館
長野県東御市本海野1098 Tel:0268-64-1000
入館料 大人(高校・大学生含)200円/人、団体(20名以上)150円/人 小人(小・中学生)100円/人、団体(20名以上)50円/人
開館時間 9時~17時(10月~4月は16時まで)
休館日 12月21日~2月末日
■車でのアクセス 上信越自動車道「東部湯の丸IC」から国道18号を約10分
■電車でのアクセス しなの鉄道「大屋駅」または「田中駅」から徒歩約20分。または、JR・しなの鉄道「上田駅」からタクシーで約30分
生活の中で愛されるガラス製品を作る「ガラス工房 橙(だいだい)」
海野宿を歩いていると、白と橙の美しいのれんが目を引く「ガラス工房 橙」を見つけました。
店内には、器やグラスなど彩り豊かなガラス作品が並んでいます。温かみのあるフォルムと、機能性を備えた作品は、すべてオーナーでガラス作家の寺西将樹(てらにしまさき)さんと、奥さまで同じくガラス作家の真紀子(まきこ)さんの手によるもの。1階奥にあるガラス工房で、お2人は日々制作に没頭しています。
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ガラス作品が並ぶ店内。美しい色彩やさまざまな造形を眺めているだけで楽しい。
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昭和の面影が残る2階のカフェ。食器やランプは寺西さんご夫妻の手作り。
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「生活の中で使いやすく、長く愛されるものを作りたい」と語る寺西将樹さん。
「シナノグルミ」から生まれた「クルミガラス」
「ガラス工房 橙」で人気のオリジナル作品のひとつが、東御市の特産品である「シナノグルミ」を使った「クルミガラス」シリーズです。殻を焼いてできた灰をガラスの材料に混ぜて作るもので、淡い緑色を帯びた色合いが特徴です。
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「クルミガラス」シリーズ(2,000円税抜~)はプレゼント用にも人気です。
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仲良くお店を営む寺西将樹さん(右)と奥さまの真紀子さん(左)。
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アクセス&インフォメーション ガラス工房 橙
長野県東御市本海野1071-3 Tel:0268-64-9847
営業時間 10時~17時
不定休(9月、12月、1月、2月は不定休のため、事前に電話でご確認ください)
ガラス工房 橙ホームページ
■車でのアクセス 上信越自動車道「東部湯の丸IC」から国道18号を約10分
■電車でのアクセス しなの鉄道「大屋駅」または「田中駅」から徒歩約10分。または、JR・しなの鉄道「上田駅」からタクシーで約15分
今日はおうちで農食レストラン
ヨーロッパや中国では、貴族の美容食として愛好されたというくるみ。体内で合成できないオメガ3脂肪酸(必須脂肪酸)を豊富に含むほか、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルも含む、栄養価の高い食材です。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(2人分)〉
- くるみ(実) 30g
- 焼きそば麺 2袋
- もやし 60g
- 春菊 100g
- にんにく(みじん切り) 小さじ1
- しょうが(みじん切り) 小さじ1
- 卵(目玉焼き用) 2個
- 豚肉(こま切れ) 100g
- ごま油 大さじ1.5
- レモン 1/4個
A
- ナンプラー 大さじ1.5
- オイスターソース 大さじ1
- ケチャップ 小さじ2
- 砂糖 小さじ2
- レモン汁 小さじ2
- 塩・こしょう 適量
〈作り方〉
- 殻つきくるみは、殻を割って実を取り出しておく(Point1)。焼きそば麺は電子レンジで30秒ほど温めておく。もやしはひげ根をとる。春菊は5cm幅に切る。にんにく、しょうがはみじん切りにする
- ボウルにAをよく混ぜ合わせておく。目玉焼きを2個作る
- フライパンにごま油、にんにく、しょうが、くるみを入れ中火で熱する。香りがたったら豚肉を炒め、火が通ったら春菊(茎の部分)ともやしを加えてさっと炒める
- 3に焼きそば麺を加え、水大さじ2(分量外)を入れてよくほぐし(Point2)、Aを入れて全体になじむまでよく炒める。最後に春菊(葉の部分)を加えて塩・こしょうで味を整え、さっと混ぜ合わせる
- 器に盛りつけ、2の目玉焼きをのせ、くし切りにしたレモンを添える
おいしく作るポイント
殻の境目に刃を入れると簡単に割れます。脱殻したくるみを使っても美味しくできます
水(大さじ2)は麺の中央に入れ、麺を蒸すようにしてよくほぐしましょう
〈材料(4枚分)〉
- くるみ(実) 30g
- かぼちゃ 70g
- 牛乳 80cc
- 卵 4個
- ホットケーキミックス 150g
- 砂糖 大さじ2
- サラダ油 適量
- レモンの皮 2~3片
- くるみ 適量
- ミント 適量
ソース
- 無塩バター 20g
- メープルシロップ 大さじ2
- レモン汁 小さじ2
〈作り方〉
- 殻つきくるみは、殻を割って実を取り出しておく。くるみはフライパンで乾煎りする。かぼちゃは一口大に切り、キッチンペーパーを敷いた耐熱皿に入れてラップをし、電子レンジ(600Wで1分半)で加熱する。ボウルに加熱したかぼちゃを移し、フォークで粗めにつぶし冷ましておく
- ソースを作る。耐熱容器に無塩バター、メープルシロップを入れ、電子レンジで30~40秒加熱したらレモン汁を混ぜる
- 生地を作る。牛乳、卵黄(4個分)を入れてホイッパーで混ぜ、ホットケーキミックスを加えてなめらかになるまで混ぜる。1のかぼちゃも加えてざっくり混ぜ合わせる
- メレンゲを作る。卵白(4個分)を別のボウルに入れ、砂糖を加えてツノが立つまで混ぜる
- 3に4のメレンゲを加えてホイッパーで混ぜ(Point1)、最後に1のくるみを加えてゴムベラで混ぜて整える
- フライパンを熱してサラダ油を薄くなじませ、ぬれ布巾の上にいったん置いてから、5の生地の1/4の分量を流し入れる。弱めの中火にかけ、両面焼く(Point2)。残りの生地も同様に3枚、焼く
- 焼きたての上に、千切りにしたレモンの皮、くるみ、ミントをトッピングし、2のソースを添える
おいしく作るポイント
メレンゲは泡がつぶれないよう、半量ずつ生地に加えて混ぜると、ふんわり仕上がります
片面3分焼き、裏返して焼く。両面がきつね色になったら取り出します
〈材料(約10個分)〉
- くるみ(実) 50g
- オートミール 70g
- 薄力粉 30g
- 三温糖(または上白糖) 30g
- 塩 ひとつまみ
- サラダ油 大さじ2
- 水 大さじ2
- レーズン 20g
〈作り方〉
- 殻つきくるみは、殻を割って実を取り出しておく。くるみはフライパンで乾煎りし冷ましてから、ジッパーつきの袋に入れ麺棒で軽くたたいて砕く(Point1)。オーブンは160℃に温めておく
- ボウルにオートミール、薄力粉、三温糖、塩を入れ、手でよく混ぜる
- 2にサラダ油を加え、サラダ油に粉をなじませるように手で混ぜ合わせる。そぼろのようになったら両手ですり合わせて、全体にさらさらになるまでダマをつぶす
- 3に水を加えゴムベラでざっくり混ぜ合わせる。粉っぽさがなくなったら、くるみ、レーズンを加え混ぜる
- 水でぬらした手に生地を大さじ1ずつとり、丸型に整え(Point2)、軽くつぶして1cmの厚さにする
- 天板に並べ160℃のオーブンで35~40分焼く。ざくざくとした食感を楽しむため、完全に冷まして固くなってからいただく
おいしく作るポイント
2~3mmにあらめに砕くと、ざくざくとした食感が楽しめます
手のひらでぎゅっと握って形を整えましょう
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「シナノグルミ」約300gを5名さまにプレゼント!
締切日 1月15日(日)
長野県東御市滋野乙4524-1 Tel:0268-63-0963
「お食事処 湯の丸」の営業時間 7時~19時
年中無休
■車でのアクセス
東京方面より 上信越自動車道「小諸IC」から浅間サンラインを上田方面へ約5分
関西方面より 上信越自動車道「東部湯の丸IC」から浅間サンラインを小諸方面へ約5分