地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第23回
静岡県菊川市(きくがわし)の芽キャベツを訪ねて
キャベツをそのまま小さくしたような芽キャベツ。火を加えるとほどよい食感と甘みが楽しめ、さまざまな料理との相性もいい野菜です。
静岡県は芽キャベツの収穫量、作付面積、出荷量とも全国1位の一大生産地で、中でも菊川市、掛川市(かけがわし)、御前崎市(おまえざきし)の生産量は、県全体の6割を占めています。
今回は芽キャベツを栽培している、藤澤治巳(ふじさわはるみ)さんを訪ねました。
(注)取材は2016年2月におこないました。
農食ツーリズムのコースはこちら
太い茎にぎっしりと芽吹く、小さな芽キャベツ
キャベツ畑とはまったく異なる育ち方
藤澤さんに案内された畑では、葉を茂らせた植物が畝(うね)に沿って並んでいました。大きな葉の下をのぞくと、太い茎から芽キャベツがぎっしりと芽吹いています。芽キャベツはアブラナ科の1年草で、茎に芽吹く「わき芽」の部分。明治初期ごろ、日本に輸入されて食べるようになり、静岡県で生産が盛んになったといわれています。
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芽キャベツの畑。大きな葉が茂っています。
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小さな実に、ぎゅっと美味しさが詰まっています。
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藤澤さんと、奥さまの千恵子さん。夫婦で仲良く栽培に取り組んでいます。
子持ち甘藍(かんらん)とも呼ばれ、贈答用にも
芽キャベツは、茎が長いほど数多く芽吹き、1株で50個~70個ほど収穫できます。
収穫はすべて手作業です。芽キャベツを摘み取るとき、ポキポキと小気味いい音を立てるため、奥さまの千恵子さんは「やみつきになる楽しい時間」と話してくれました。
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実を傷つけないよう、1つ1つ、丁寧に収穫します。
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鉢に植え替え、贈答用としても使われます。
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芽キャベツは直径2cm~3cmの大きさが収穫の目安。
雨と風が苦手で、寒さには強い
冬に旬を迎える芽キャベツは、真夏の8月ごろに苗を植えます。その後1ヶ月ほどで台風シーズンを迎えるため、せっかく植えた苗が強風で倒れてしまうことも。雨と風が苦手な芽キャベツですが、寒さには強く、霜が降りると甘味も増して、いっそう美味しくなります。
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収穫後は、太い茎が姿を現します。
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多雨に弱いため、おがくずを撒いて水はけを良くしています。
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「JA遠州夢咲」の増田和輝(ますだかずき)さん(左)、藤澤治巳さん(中央)、奥さまの千恵子さん(右)。
菊川市の豊富な食材をいただくなら、西欧料理「サヴァカ」
自然に囲まれた一軒家で本格フレンチを堪能
東名高速道路「相良牧之原IC」を降りて10分ほど走ると、田園と山に囲まれた一軒家レストラン、西欧料理「サヴァカ」があります。
「食材が豊富に揃う菊川の地で、地元の人に愛される西欧料理を」と語るオーナーシェフの山口祐之(やまぐちまさゆき)さんは、食材の産地まで足を運んで厳選するのはもちろん、食材ごとにベストなゆで時間や調理法を研究し、美味しさを引き出すことに情熱を注ぎます。
芽キャベツも菊川市産にこだわり、形や鮮度を重視して選びます。
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オープンから15年経った今では、地元の人をはじめ、関東からも多くの食通が通います。
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木のぬくもりの中に青いテーブルクロスが映える落ち着いた店内。
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オーナーシェフの山口祐之さん(右)と奥さまの正美さん。
オーナーの感性がいきる、芽キャベツのオリジナルコース
「サヴァカ」には決まったメニューがなく、来店客の好みに合わせたオリジナルコース(ランチ2,500円税抜~)を提供しています。
今回、特別に芽キャベツの創作料理3品を作っていただきました。いずれもシェフの創意工夫が細部にまで施され、味覚はもちろん目でも料理を楽しむことができます。
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「鴨のコンフィ~温菜サラダ仕立て」
鴨肉を中心に芽キャベツが彩りを添えます。 -
「ゆめかさごのポワレ~芽キャベツのソース」
葉を散らして揚げた芽キャベツが食感にアクセントを加えます。 -
「芽キャベツのフリット~ボルチーニソース」
芽キャベツを包むのは炭を混ぜて焼いたパンの粉。
お母さんたちが大活躍!「ミナクルふれあい菊川の里」
お客さまとのふれあい第一。清潔感あふれる店内
東名高速道路「菊川IC」から車で5分ほど走った住宅街に「ミナクルふれあい菊川の里」があります。
3年前に改築した店内では、近隣の農家さんが朝一番に持ち込む生鮮野菜が並びます。
芽キャベツはサイズごとに分けられているので、使う料理によって大きさを選ぶことができます。
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近隣の農家さんが持ち込んだ生鮮野菜が並ぶ店内。
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芽キャベツの出荷量は1月~2月がもっとも豊富です。
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ご案内いただいた、店長の栗山祐樹(くりやまゆうき)さん。
愛情こもった手作り惣菜が買える「かあちゃん工房」
「ミナクルふれあい菊川の里」の店内には、「JA遠州夢咲女性部」の皆さんが立ち上げた「かあちゃん工房」があり、地元の野菜をふんだんに取り入れた手作りのお惣菜が人気です。芽キャベツが旬の時期には、「芽キャベツのフリット(180円税込)」や「芽キャベツの肉巻きフライ(200円税込)」が並びます。
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芽キャベツと旬の野菜をさくっと揚げた「芽キャベツのフリット」。
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豚肉にくるんだ芽キャベツの甘さが際立つ「芽キャベツの肉巻きフライ」。
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美味しいお惣菜を作ってくれる「JA遠州夢咲女性部」の皆さん。
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アクセス&インフォメーション ミナクルふれあい菊川の里
静岡県菊川市加茂5780 Tel: 0537-35-3111
営業時間 8時30分~16時30分
定休日 水曜
■車でのアクセス 東名高速道路「菊川IC」から約5分
■電車でのアクセス JR東海道本線「菊川駅」からタクシーで約10分
貴重な代官屋敷(だいかんやしき)と梅を堪能!
約180本の梅の木と樹齢400年の大木が迎えるお庭
東名高速道路「菊川IC」から車で20分ほど走ると立派な外堀に囲まれた「黒田家代官屋敷」が見えてきました。4世紀半もの間、菊川の地を統括していた黒田家の屋敷で、現在も子孫の方々が暮らしています。1973年に母屋と長屋門が重要文化財に指定され、菊川市の観光名所となっています。
通常、見学が許されているのは門前までですが、自治団体が開催する「代官屋敷梅まつり」(2月)の期間は広い庭を開放。色とりどりに咲く梅の木や、樹齢400年以上の大木などを鑑賞することができます。
また、屋敷前にある茶房「暁風庵(ぎょうふうあん)」は、梅まつりの期間のみ営業するもので、手作りの干し芋やお茶、工芸品などを販売しています。
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約180本の梅の木が見られる庭。梅まつりの期間中(2月)のみ公開されています。
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この地域に伝わる、陶器で焼いたひな人形「焼きびな」も飾られていました。
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黒田家の黒田和子さん(中央)と、「暁風庵」を手伝われている皆さま。
町の名士、黒田家の歴史を学ぶ「黒田家代官屋敷資料館」
屋敷の横にある「黒田家代官屋敷資料館」は、黒田家が菊川の地を治めてきた経緯や歴史を学ぶことができます。
黒田家が所蔵する鎧兜(よろいかぶと)などの武具や美術品、調度品といった、歴史的価値の高い品々を数多く展示しています。
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代官屋敷のとなりにある「黒田家代官屋敷資料館」。
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貴重な品々が並ぶ館内。2010年におこなわれた改修工事の様子も展示されています。
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館内奥に鎮座する鎧兜は、今にも動き出しそうな迫力。
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アクセス&インフォメーション 黒田家代官屋敷資料館
静岡県菊川市下平川862-1 Tel: 0537-73-7270(資料館受付)
開館時間 10時~16時
定休日 月曜、祝日の翌日、年末年始
(注)梅まつり期間中の開館時間は9時~16時(無休)
入館料 150円(中学生以下、市内在住者は無料)
(注)中学生以下の方は年齢がわかるもの、市内在住者の方は住所がわかるものをお持ちください。暁風庵
営業日 土曜、日曜(梅まつりの期間中(2月)のみ毎日)
■車でのアクセス 東名高速道路「菊川IC」から約20分
■電車でのアクセス JR東海道本線「菊川駅」から静鉄ジャストライン「平田本町」下車、徒歩約5分
[お詫び]「約180本の梅の木」に関して、一時、間違った記述がされておりましたことをお詫び申し上げます。
今日はおうちで農食レストラン
芽キャベツはアブラナ科の一年草で、キャベツの変種とされています。直径2cm~3cmほどの小さな実ですが、ぎゅっと美味しさが詰まっており、キャベツの3倍~4倍ものビタミンCを豊富に含んでいます。見た目も丸くてかわいらしいので、料理のアクセントにもなります。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(2人分)〉
- 芽キャベツ 10~12個
- サラダ油 大さじ3
- おろしにんにく 1片分
- おろししょうが 1片分
- ローリエ 1枚
- 赤唐辛子 1本
- 水 1/2カップ
- 塩 小さじ1/2
- トマトケチャップ 大さじ2
- カレー粉 大さじ2
- はちみつ 大さじ1.5
- ガラムマサラ 小さじ1/2
〈作り方〉
- 芽キャベツは外側の皮を1~2枚むき、茎に十文字に切り込みを入れる(Point1)。さっと洗いザルにあげる
- 鍋にサラダ油を熱し、にんにく、しょうが、ローリエ、赤唐辛子を入れ香りがたつまで弱火で炒める
- 2に1、水、塩、トマトケチャップ、カレー粉、はちみつを加え、フタをして弱火で20分~30分煮る。途中で2、3回かき混ぜる(Point2)
- 仕上げにガラムマサラを加えて混ぜる。好みでハーブ(分量外)を飾る
おいしく作るポイント
茎に十文字に切り込みを入れておくと火が通りやすくなり、むらなく調理できます
カレー粉がこげないよう2、3回かき混ぜます
〈材料(2人分)〉
- 芽キャベツ 6~8個
- ブロッコリー 3~5房
- ミニトマト 3~5個
アンチョビチーズソース
- にんにく 1片
- 玉ねぎ 1/2個
- マッシュルーム 6個
- バター 10g
- アンチョビ 2枚
- 白ワイン 大さじ1
- クリームチーズ 100g
- 牛乳 70ml
- 塩 ふたつまみ
- こしょう 適量
〈作り方〉
- 芽キャベツは外側の皮を1~2枚むき、茎部分に十文字に切り込みを入れる。芽キャベツがかぶるくらいの湯を沸かし、塩少々(分量外)を入れて5~6分茹でる(Point1)。茹で上がったら冷水に浸し、ザルにあげ、水気をきる。ブロッコリーも同様に茹でる
- にんにくと玉ねぎはみじん切り、マッシュルームはスライスする
- フライパンにバターを溶かし、にんにく、アンチョビを入れ香りがたつまで弱火で炒める。玉ねぎを加え、しんなりするまでじっくり炒めたらマッシュルームも加える
- マッシュルームもしんなりしたら白ワインを加え少し煮詰める。クリームチーズ、牛乳を入れ混ぜ合わせ、味を見ながら塩を加えこしょうで味を整える(Point2)
- 器に芽キャベツ、ブロッコリー、ミニトマトを盛りつけ、4のアンチョビチーズソースにつけていただく
おいしく作るポイント
塩茹ですることで、芽キャベツの苦みが取れ、ほんのり甘みが出ます
吹きこぼさないよう、火加減に注意して、ゆっくり温めましょう
〈材料(6個分)〉
- 芽キャベツ 6個
- 小麦粉 適量
- 白いりごま 15g
- 黒いりごま 15g
- サラダ油 大さじ1
- 卵黄 2個
- 柑橘系(レモン、すだちなど)
A
- 合挽肉 200g
- 玉ねぎ(みじん切り) 1/4個
- 卵 1個
- パン粉 20g
- 塩 ひとつまみ
- こしょう 少々
B(つくねたれ)
- しょうゆ 大さじ3
- みりん 大さじ3
- 砂糖 大さじ2
〈作り方〉
- 芽キャベツは外側の皮を1~2枚むき、茎部分に十文字に切り込みを入れる。芽キャベツがかぶるくらいの湯を沸かし、塩少々(分量外)を入れて5~6分茹でる。茹で上がったら冷水に浸し、ザルにあげ、水気をきる
- ボウルにAを入れ、ねばりが出るまでよく混ぜ合わせる
- 1の全体に小麦粉をはたき、6等分した2で包む(Point1)、
- 白いりごま、黒いりごまを別々のバットに入れ、3を転がしながら全体につける
- フライパンにサラダ油を熱し、ごまが焦げないように4を弱火でじっくり焼き、中まで火を通す(Point2)
- 小鍋にB(つくねたれ)の調味料を合わせて火にかける。煮立ったら弱火にし、少しとろみがつくくらいまで煮詰める
- 焼きたての5に、6のつくねたれをからめて串に刺す。卵黄、柑橘系(レモン、すだちなど)を添える
おいしく作るポイント
両手でキャッチボールをするようにして空気をしっかり抜きます
丸い形がくずれないよう、フライパンをゆすりながらゆっくり炒めます
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芽キャベツ300gを5名さまにプレゼント!
締切日 2月14日(火)
静岡県菊川市沢水加791-11 Tel: 0537-37-1820
営業時間 ランチ11時30分~14時30分(ラストオーダー13時30分)
ディナー18時~21時30分(ラストオーダー20時30分)
定休日 月曜
西欧料理「サヴァカ」ホームページ
■車でのアクセス 東名高速道路「相良牧之原IC」から約10分