地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第24回
三重県尾鷲市(おわせし)の寒ブリを訪ねて
三重県尾鷲市は、黒潮の流れる海域、熊野灘(くまのなだ)に面しています。リアス式海岸という入り組んだ地形に黒潮が回流することで、1月初旬~2月にかけて脂ののった寒ブリがやってきます。熊野灘の荒い波で身が引き締まった寒ブリは、格別の美味しさです。今回は市内に9つある漁港の1つ、尾鷲市早田町(はいだちょう)にある早田港(はいだこう)を早朝に訪ねました。
(注)取材は2016年2月におこないました。寒ブリの収穫時期は年によって異なります。
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熊野灘の荒波が育む、天然の寒ブリ
寒ブリ漁は早朝が基本
午前7時、ようやく日が昇り始めた冬の早朝、早田港に漁船が帰ってきました。
港に着くなり、漁船から次々と魚が選別台の上に運ばれていきます。1匹ずつ重量を計った後、それぞれの水槽に入れられ、セリにかけられます。この日、10kg以上の大きな寒ブリも水揚げされました。
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入り江になっており、波の穏やかな夜明けの早田港。
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夜明けとともに、早田港に帰港する漁船。
寒ブリを傷つけない「定置網(ていちあみ)漁法」
早田港でおこなわれているのは、魚の集まる場所に網を仕掛ける「定置網漁法」です。かかった魚は引き上げるまで網の中で自由に泳げるため、ストレスがかかりにくく、傷つきません。さらに寒ブリは、すぐ氷水につけて仮死状態にする「氷締め」によって、鮮度を保ったまま運ばれます。
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船底の漁倉から引き上げられる寒ブリ。
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選別台に次々と運ばれていく。
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水揚げ後、すぐセリがおこなわれ市場に卸される。
時代とともに変化する、海の環境と寒ブリ
回遊魚のブリは、黒潮に乗って日本列島の周囲を周回していると考えられています。
熊野灘では年によって収穫量にバラつきがありますが、近年は毎年1月から5月の期間に、一定量のブリが獲れるようになりました。
早田港の漁を取り仕切る「株式会社早田大敷(はいだおおしき)」の社長、岩本芳和(いわもとよしかず)さんは「出荷した後も鮮度が落ちないよう、鮮度管理に力を入れた美味しい早田の寒ブリを全国に広めたい」と考え、2014年に「早田寒ブリまつり」を開催。その後は、毎年開催され、2016年の「早田寒ブリまつり」では、約1,000人が来場しました。
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7,500匹もの寒ブリがかかった大当たりの2014年の様子。
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株式会社早田大敷の社長、岩本芳和さん。
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「早田寒ブリまつり」実行委員であり、三重県尾鷲市地域おこし協力隊の石田元気さん(左)と青田京子さん(右)。
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「第4回 早田寒ブリまつり」
2017年3月25日 土曜日 開催早田港で獲れた天然ブリの解体ショーや鮮魚販売をおこなうイベント。ブリ丼や寒ブリべっこう寿司など、その場で調理、販売する他、来場者にふるまわれる大敷汁(おおしきじる)も大人気です。
開催場所
早田町コミュニティーセンター・魚市場
三重県尾鷲市早田町25
問い合わせ先 Tel:0597-29-2039(ビジョン早田実行委員会)
■車でのアクセス(早田町コミュニティーセンター)
紀勢自動車道「尾鷲南IC」から約20分
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漁師希望の若者と
人手不足の港を結んだ「早田漁師塾」高齢化が進む漁師の若返りを目指して始めた「早田漁師塾」は、県内外から漁師希望の若者を集め、4週間かけて漁の現場を体験してもらうというもの。漁師の基礎知識、漁村での生活に慣れることで、イメージとのギャップを埋められると好評で、「株式会社早田大敷」にも同塾の卒業生が3名入社しました。
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「漁師塾」を始めてから、漁師の平均年齢が40代へと若返りました。
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インフォメーション
早田港で水揚げされた鮮魚を通信販売で購入できます。
うみまかせ-三重県の鮮魚通販ホームページ
尾鷲の魚介類を満喫するなら「魚処 豆狸(まめだ)」
創業47年。地元に長く愛されるお店
JR紀勢本線「尾鷲駅」から東に向かって伸びる「尾鷲一番街商店街」の細い路地を歩いていくと、店先にたぬきの置物が飾られた「魚処 豆狸」を発見。尾鷲港の新鮮な魚介類が食べられると人気の、創業47年のお店です。
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通りに面したいけすでは、仕入れたばかりの魚が元気に泳ぎます。
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新鮮な魚介類を目当てに、県外からも多くの常連さんが訪れます。
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寒い時期の寒ブリがお好きだという、ご主人の中野雅弘(なかのまさひろ)さん。
新鮮な寒ブリをしゃぶしゃぶでいただく
寒ブリを食すならと、すすめていただいたのが「寒ブリのしゃぶしゃぶ鍋(1人前2,160円税込)」。脂がのった腹の部分をスライスして皿に盛りつけられた寒ブリは、淡いピンク色をしています。土鍋にはった特製ダシにさっとくぐらせ、白くなったところをいただきます。
この他、「寒ブリの刺身(1,080円税込)」や、東紀州の特産品マイヤーレモンをかけていただく「ブリの塩焼き(1,200円税込)」も人気です。
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その日に獲れた寒ブリを使う「寒ブリのしゃぶしゃぶ鍋」。
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寒ブリの腹部分の刺身。舌でとろけます。
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マイヤーレモンの酸味が、塩焼きのうまみを引き出します。
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アクセス&インフォメーション 魚処 豆狸
三重県尾鷲市栄町5-37 Tel:0597-22-1166
営業時間 11時~14時、16時30分~22時(ラストオーダー21時)
不定休
■車でのアクセス 紀勢自動車道「尾鷲北IC」から約2分
■電車でのアクセス JR紀勢本線「尾鷲駅」から徒歩約8分
百年以上続く伝統の味。「大瀬勇(おおせいさむ)商店」
熊野灘の魚介類のうまみを引き出す、干物や燻製
「尾鷲一番街商店街」の一角に、海産物を取り揃えている「大瀬勇商店」があります。ここは1902年の創業から4代続く老舗。社長の大瀬勇人(おおせゆうと)さんが手塩にかけて作る干物や燻製は、素材のうまみを引き出す伝統製法によるもので、昔ながらの尾鷲の味を守り続けています。
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社長の大瀬勇人さん(右)と、甥で5代目の邦裕(くにひろ)さん(左)。
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大きな冷凍ケースには、干物や燻製が並びます。
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「かつおの生節」は、通常のかつお節と違い、舌の上でとろけるほどやわらかい。
香ばしい珍味、「ぶりくん(燻製)スライス」
全国的にも珍しい「ぶりくん(燻製)スライス(600円税込)」は、「大瀬勇商店」で60年ほど前から作り続けている人気商品です。
ほどよく脂ののった10kg以上のブリを1ヶ月弱かけてじっくり燻製してスライスしたもので、口に入れると香ばしさが広がり、ハムのようにしっとりとやわらかい食感です。
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お中元やお歳暮としても人気の「ぶりくん(燻製)スライス」。
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自社の燻製工房で、燻製している様子。
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「ブリに捨てるところはない」という大瀬さん。内臓やカマ部分を美味しく加工した商品も販売しています。
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アクセス&インフォメーション 合資会社 大瀬勇商店
三重県尾鷲市栄町2-16 Tel:0597-22-0563
営業時間 10時~18時 不定休
■車でのアクセス 紀勢自動車道「尾鷲北IC」から約3分
■電車でのアクセス JR紀勢本線「尾鷲駅」から徒歩約10分
「熊野古道(くまのこどう)」の文化を学ぶ
「三重県立熊野古道センター」
6,549本の尾鷲ヒノキで造られた「三重県立熊野古道センター」
「三重県立熊野古道センター」は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」登録を機に、熊野古道の情報の収集・集積・発信を担うビジターセンターとして、2004年に建てられました。
平安時代から巡礼の道とされてきた「熊野古道」。その歴史や文化を伝える展示棟と、観光客の交流や情報発信の場所として役立つ交流棟の2つに分かれています。木目が美しい交流棟のロビーは、尾鷲ヒノキの心地いい香りで満たされ、熊野古道のさまざまな情報にふれることができます。
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直線的なデザインがモダンな「三重県立熊野古道センター」。
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交流棟のロビー。熊野古道を歩く前の情報収集に最適です。
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「熊野古道」の歴史や自然環境などを伝える展示棟。
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海外からの観光客も多く、多言語音声ガイドを導入。専用のペンでマークを押すと、外国語でアナウンスされます。
自然豊かな「熊野古道 伊勢路」を歩こう!
世界遺産として登録されているのは、伊勢神宮と熊野三山(くまのさんざん)を結ぶ「熊野古道 伊勢路」で、全長約170kmあります。
石畳とヒノキ林が美しい「馬越峠(まごせとうげ)」や、難所として知られる「八鬼山(やきやま)越え」など18ルートがあり、自然豊かな風景や動植物などを目当てに、毎年多くの観光客が訪れます。
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自然の石が敷き詰められた馬越峠の石畳。天狗倉山(てんぐらさん)など、絶景スポットも多い人気のルート。
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急な山道が続く難所として知られる「八鬼山越え」。苔むした石畳が美しい。
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ご案内いただいた「三重県立熊野古道センター」主任コーディネーターの宮本秀男(みやもとひでお)さん。
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「熊野古道」とは?
「熊野古道」は熊野三山と呼ばれる「熊野本宮大社(ほんぐうたいしゃ)」、「熊野速玉大社(はやたまたいしゃ)」、「熊野那智大社(なちたいしゃ)」をお参りする参詣道(さんけいみち)。お伊勢参りをすませたあと、熊野三山に向かうために熊野古道を歩きました。江戸時代には1年に約3万人もの人が歩いた記録が残っています。
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アクセス&インフォメーション 三重県立熊野古道センター
三重県尾鷲市向井12-4 Tel:0597-25-2666
開館時間 9時~17時
休館日 12月31日、1月1日(その他メンテナンス等により休館の場合あり)
入館料 無料
■車でのアクセス 紀勢自動車道「尾鷲北IC」から約10分
■電車でのアクセス JR紀勢本線「尾鷲駅」から路線バス「紀伊松本行き」にて約10分、「熊野古道センター前」下車
今日はおうちで農食レストラン
冬に旬を迎えるブリは、脂がのって、煮ても焼いても美味しい食材。また、ブリの脂には不飽和脂肪酸のEPAやDHAが含まれています。今回は、揚げる、蒸す、焼く、3通りの調理方法によるレシピを紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(2人分)〉
- ブリ切身 2切れ
- 塩 ふたつまみ
- こしょう 少々
- 酒 大さじ2
- 片栗粉 大さじ2
- 水菜 適量
赤味噌ソース
- 赤味噌 30g
- だし 50ml
- みりん 大さじ1
- 酒 大さじ1
- 砂糖 大さじ1
〈作り方〉
- ブリの切身に塩、こしょう、酒をまぶし(Point1)、10分置いたら片栗粉をまぶす
- フライパンに高さ1cmほど油を入れて180度に熱し、1を入れて両面がカラッとするまで揚げる(Point2)
- 赤味噌ソースの調味料を小鍋に入れ、時々混ぜながら熱し、とろみがついたら火から下ろす
- 皿に長さ5cmくらいに切った水菜と2のブリを盛りつけ、3の赤味噌ソースをかける
おいしく作るポイント
塩、こしょう、酒でブリの臭みを取り除きます。このひと手間が、ブリをより美味しくいただくコツです
食べやすいように一口サイズにカットして揚げるのもおすすめです
〈材料(2人分)〉
- ブリ切身 2切れ
- 塩 ふたつまみ
- 酒 大さじ2
- にんにく 2片
- ねぎ(白い部分) 1/2本分
- 春菊の葉 適量
- 生姜 1片
- ごま油 大さじ2
A
- オイスターソース 小さじ2
- 醤油 大さじ1
- 酢 大さじ1
〈作り方〉
- ブリは塩をまぶして10分置いたら水気を拭く(Point1)。皿に並べて酒をまわしかけ、スライスしたにんにくを散らす
- フライパンにふきんを入れて水を注ぎ、耐熱皿をひっくり返して置く。その上に1を乗せ、フタをして中火にかける。湯気が上がってから約10分蒸す(Point2)
※蒸し器を使わずに蒸す方法としてご紹介しています - ねぎは細く切って白髪ねぎにする。生姜は細く切って針生姜にする。白髪ねぎと春菊の葉は水にさらし、パリッとしたら水気を拭く
- 2の上に、白髪ねぎ、春菊、針生姜をこんもりと盛り付ける
- Aの材料を混ぜ合わせて4にかけ、フライパンでアツアツに熱したごま油を回しかける
おいしく作るポイント
キッチンペーパーなどで水気と一緒に臭みをしっかり拭き取ると、より美味しく蒸し上がります
ブリの厚みによって蒸し上がる時間が異なるので、様子を見ながら調整しましょう
〈材料(2個分)〉
- ブリ切身 2切れ
- 塩 ふたつまみ
- こしょう 少々
- オリーブオイル 大さじ2
- 食パン(6枚切り) 4枚
- マヨネーズ 大さじ2
- マスタード 小さじ2
- レタス 2枚
- トマト 1/2個
- 紫玉ねぎ 1/4個
- レモンスライス 適量
〈作り方〉
- ブリは塩をまぶして10分置いたら水気を拭く。こしょう、オリーブオイルをかけて15分ほど漬け込む
- 1をフライパンで両面に焼き色がつくまで焼く(Point1)
- 食パンは焼き色がつくまでトースターで焼き、マヨネーズとマスタードを塗る
- 適度な大きさにちぎったレタス、スライスしたトマトと紫玉ねぎを3に乗せ、2のブリ、レモンスライスを乗せて食パンではさむ
- 4をラップで包んでから半分にカットする(Point2)
おいしく作るポイント
弱火でじっくり焼くと、香ばしく仕上がります
ラップに包むことで、具が飛び出すのを防ぎ、きれいにカットすることができます
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5名さまに「ぶりくん(燻製)スライス」1袋をプレゼント!
締切日 3月14日(火)
三重県尾鷲市早田町25
問い合わせ先 Tel:0597-29-2039(ビジョン早田実行委員会)
■車でのアクセス(早田町コミュニティーセンター)
紀勢自動車道「尾鷲南IC」から約20分