• 地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
    ※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。

  • カテエネ 農食ツーリズム
  • 第26回

    長野県安曇野(あづみの)市のわさびを訪ねて

    北アルプスの雪どけ水が安曇野の土地にしみ込み、1日70万トンもの水が湧き出る「安曇野わさび田湧水群(ゆうすいぐん)」。環境省の「名水百選」にも選ばれています。この豊かな湧水によって育まれる安曇野のわさびは、まさに大自然からの贈りものです。
    安曇野で祖父の代からわさび栽培を営み、信州わさび農業協同組合 組合長も務める、丸山光弘(みつひろ)さんのわさび畑を訪ねました。
    (注)取材は2017年2月におこないました。
  • 長野県安曇野(あづみの)市のわさび

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見る・聞く湧水が川のようにゆっくりと流れる、わさび畑

1年を通じて10℃~14℃に保たれる湧水が、わさびを育てる

海抜2,500メートル以上の峰々がそびえる北アルプス。そのふもとに広がる安曇野は、北アルプスの雪どけ水が地下水脈となってあちこちで湧き出しています。夏は35℃、冬はマイナス10℃と季節の温度差が大きい土地でありながら、年間を通じて10℃~14℃に保たれる湧水は、わさびの栽培にとても適しています。
好天に恵まれたこの日、丸山さんのわさび畑を訪ねると、約800坪のわさび畑がすっぽりとハウスに覆われていました。ハウスの中では、鮮やかな緑色をしたわさびの葉が豊かに生い茂り、畑の間を冷んやりとした湧水が川のようにゆっくりと流れています。

  • 北アルプスの雪どけ水が地下水脈となって湧き出す水は、年間を通じて10℃~14℃に保たれている。

  • 信州わさび農業協同組合 組合長の丸山光弘さん(左)と副組合長の有賀均(あるがひとし)さん(右)。

安曇野は、わさびを大きく育てる奇跡の土地

丸山さんが腰を少しかがめて生い茂った葉に手を伸ばし、1株のわさびを引き抜き、根元についた黒い砂や砂利を流水で洗い流します。すると、大きなわさびを真ん中に、小さなわさびがいくつも連なっていることが分かります。一般にわさびと呼んでいるのは、じつは茎が変形した根茎(こんけい)という部分で、栄養をしっかりと蓄えています。
安曇野のわさび畑の大きな特徴は、畑全体に、地中からミネラル豊富な湧水が湧きあがってくること。その湧水を求めて、わさびは茎と根を張ります。「この湧水は、チッ素や亜鉛といったミネラルのバランスがとても優れている。しかも水温が季節に左右されないので、暑さ、寒さを好まないわさびには最適です。安曇野はわさびを美味しく育てる奇跡の土地です」と丸山さんは目を細めます。

  • わさびの種類は数え切れないほどあり、丸山さんは地元の風土に合った品種を5~6種類選んで、栽培しています。

  • 1株ずつ引き抜いて収穫します。

  • 周囲の葉を取り除くと、りっぱなわさびが姿を現しました。

わさびは鮮度が命。朝収穫したら、すぐ出荷の準備

わさび畑の隣にある作業所にも案内していただきました。ここでは作業員の皆さんが、わさびの出荷の準備に追われていました。茎の周囲の葉を切り落とし、大・中・小とサイズを分け、さらに茎や葉の部分だけも束ねて出荷します。

  • 一刻でも早く出荷するため、黙々と作業する皆さん。

  • 葉を切り落としたわさびの根茎。

  • 茎の部分は塩漬けなどに人気です。

食べるわさびのメニューが豊富に揃う「レストラン大王(だいおう)」

安曇野では定番料理、わさびと薬味だけでいただく「本わさび丼」

約45,000坪の広大な土地でわさびを栽培している「大王わさび農場」。その敷地内にある「レストラン大王」は、自家産わさびを使ったメニューが豊富に揃います。一番人気は、自分でわさびをすりおろし、たっぷりのカツオ節、のり、ネギと一緒に、ごはんに混ぜていただく「本わさび丼(720円税込)」。シンプルな味付けだからこそ、わさびの辛味と香りがしっかり引き立つ、まさにわさびが主役の丼です。
すりおろした自家製わさびペーストをカレーに混ぜた「わさびカレー(930円税込)」は、カレーの辛味にわさびの辛味が加わった、オリジナルな味。「わさびは和風料理に使うもの」という概念がくつがえされる一品です。

  • わさび畑を眺めながら食事ができる「レストラン大王」。

  • ツーンと鼻にくる辛味とフレッシュな香り、口の中に残るほのかな甘味。わさびの奥深い味覚を存分に味わえる「本わさび丼」。

  • 「わさびカレー」に添えたジュースは、レモネードにすりおろしたわさびをのせた「わさびジュース(310円税込)」。

淡いグリーンが美しい「本わさびソフトクリーム」

「レストラン大王」の目の前にあるテイクアウトのコーナーで販売される「本わさびソフトクリーム(360円税込)」は、休日は長い行列ができるほどの人気ぶり。また、わさびのツブツブの食感が楽しめる「わさびコロッケ(210円税込)」は、小腹がすいたときにおすすめです。

  • 32年前からここで「本わさびソフトクリーム」を販売しています。

  • 淡いグリーンはわさび本来の色。ツーンとくる辛味はなく、わさびの香りが楽しめます。

  • カラッと揚がった「わさびコロッケ」。「大王わさび農場」のキャラクターである、わさびベア「ゆめちゃん」(注)と。

(注)「大王わさび農場」が黒澤明監督作品「夢」のロケ地だったことから「ゆめちゃん」と名付けられた

  • アクセス&インフォメーション 大王わさび農場 レストラン大王

    長野県安曇野市穂高3640 Tel: 0263-82-2118
    レストラン大王 営業時間 10時30分~15時(14時30分ラストオーダー) 年中無休
    大王わさび農場 営業時間 9時~17時20分(11月~2月は9時~16時30分) 年中無休
    入場無料
    新しいウィンドウを開きます大王わさび農場ホームページ
    ■車でのアクセス 長野自動車道「安曇野IC」より約10分
    ■電車でのアクセス JR大糸線「穂高駅」からタクシーで約10分

買う長野県内最大級のJA直売所「安曇野スイス村 ハイジの里」

わさび農家さんたちが毎朝、直接持ち込むわさび売り場

北アルプスの絶景を臨むようにして立つ「安曇野スイス村 ハイジの里」は、2016年6月にオープンした、長野県内最大級のJA直売所です。生産者とお客さまを結ぶ地産地消の拠点として、安曇野産の新鮮な食材が並びます。
ここでチェックしたいのが、安曇野のわさび農家の皆さんが毎朝、収穫したばかりのわさびや葉わさびを直接持ち込む、わさび売り場。新鮮で数も豊富なので、地元の方はもちろん、観光客の間でも話題を呼んでいます。

  • 北アルプスの山並みをイメージしたという建物。

  • わさび農家さんの名前入りなので、それぞれの味を比べるのも楽しい。1年中わさびを販売。

  • 午前中に売り切れてしまうこともあり、「こんなに売れるとは思わなかった」と話す、わさび農家の浅野満さん。

精米コーナーや北陸直送便による鮮魚売り場など、魅力あふれる店内

「安曇野スイス村 ハイジの里」のもうひとつの自慢が、安曇野産の美味しい米を、その場で精米して持ち帰れる精米コーナーです。常時5種類の米が1kg単位で購入でき、しかも七分づき、五分づき、三分づきなど、好みに合わせてつき加減を調節できると喜ばれています。金沢から新鮮活魚が毎日届く鮮魚売り場も人気です。

  • 精米したての美味しい米を購入できる精米コーナー。1kg当たり、玄米(280円税込~)、精米(290円税込~)。

  • 毎日、北陸直送便で、金沢から鮮魚が届きます。

  • 「安曇野スイス村 ハイジの里」センター長の後藤祐輔(ゆうすけ)さん(後列左)、「JAあづみ」営農経済事業部農業企画課 課長の丸山昌則(まさのり)さん(後列右から2人目)とスタッフの皆さん。

  • アクセス&インフォメーション 安曇野スイス村 ハイジの里

    長野県安曇野市豊科南穂高5566-1 Tel: 0263-87-0812
    営業時間 9時~18時 定休日 毎月1日(5月、7月、10月は無休) (注)季節により変動あり
    ■車でのアクセス 長野自動車道「安曇野IC」より約4分
    ■電車でのアクセス JR大糸線「穂高駅」からタクシーで約15分

学ぶわさびについて学ぶなら「大王わさび農場百年記念館」

パネルと映像でわさびの魅力をわかりやすく解説

「食べる」の項目で紹介した「大王わさび農場」の創設者である深澤勇市(ふかざわゆういち)氏は、農作物に適さないとされた安曇野の土地を1917年から開拓し、わさび栽培を広めた先駆者です。その開拓100年を記念して建てられたのが「大王わさび農場百年記念館」です。
館内では、安曇野におけるわさびの歴史、わさびの命とされる水について、わかりやすくまとめたパネルが展示され、わさびについてじっくりと学ぶことができます。

  • 「大王わさび農場」総務部広報室 室長と「大王わさび農場百年記念館」館長を兼ねる濱重俊(はましげとし)さん。

  • モニターでは、季節によって表情を変える、わさび畑の美しい映像が流れます。

  • わさびの命とされる水について学べる「水のゾーン」。

厳しい開拓の歴史を物語る小高い丘

「大王わさび農場百年記念館」を見学した後、「大王わさび農場」を散策すると、厳しい開拓の歴史を垣間みることができます。そのひとつが「大王神社」のある小高い丘です。湿地帯だった土地を開拓するため、1日240人が地面を掘り下げ、土砂を積み上げてできたものです。

  • 北アルプスのふもとに広がる「大王わさび農場」。

  • 収穫や幸せを願う石像がいくつも見られる。

  • 守護神の「魏石鬼八面大王(ぎしきはちめんだいおう)」がまつられている「大王神社」。

  • アクセス&インフォメーション 大王わさび農場百年記念館

    長野県安曇野市穂高3640 Tel: 0263-82-2118
    開館時間 9時~17時20分(11月~2月は9時~16時30分) 年中無休 入場無料
    新しいウィンドウを開きます大王わさび農場ホームページ
    ■車でのアクセス 長野自動車道「安曇野IC」より約10分
    ■電車でのアクセス JR大糸線「穂高駅」からタクシーで約10分

作る今日はおうちで農食レストラン

今回はわさびを使ったレシピを紹介するニャ

からし、しょうが、とうがらしなど多くの香辛料の中で、高級食材とされるわさび。ツーンとくる辛味の正体はアリルイソチアシオネートというもので、優れた殺菌効果があります。すりおろして空気にふれると香りや辛味が強くなりますが、揮発性のため長持ちしないので、食べる直前に調理するのがポイントです。

蓮沼 あいさん

農食シェフ蓮沼 あい

食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイト新しいウィンドウを開きますhttp://ai-hasunuma.com

春キャベツのわさび
ザワークラウト風
わさびでアレンジした
ぴりっと辛いザワークラウト風
電子レンジを使って手軽に作れます。

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〈材料(4人分)〉
  • 春キャベツ 300g
  • サラダ油 適量
  • 厚切りハム 8枚
  • わさび 12g
A
  • 米酢 100cc
  • 水 100cc
  • ローリエ 1枚
  • 砂糖 大さじ2
  • 塩 小さじ1
  • 黒こしょう 少々
〈作り方〉
  1. 春キャベツは5mm幅のせん切りにし、耐熱皿に入れて塩(分量外)をふり、ふんわりとラップをかけ、電子レンジ500wで約4分加熱する。冷めたら水気をしぼる
  2. 鍋にAを入れて軽く沸騰させて火を止め、粗熱が取れたら1を混ぜて30分以上漬け込む(point1)
  3. フライパンにサラダ油を熱し、厚切りハムを焼く
  4. わさびをすりおろし(point2)、2に混ぜ、3の厚切りハムの上にのせ、ローリエを添える
おいしく作るポイント
ポイント1

保存容器に入れておけば、わさびを混ぜなくても、常備菜として活躍します。

ポイント2

目の細かいおろし器で、「の」の字を書くようにゆっくりとすりおろすと、辛味や風味が増します。

春野菜と豚肉のわさび生春巻きわさびの風味が
ほんのり香る
春野菜たっぷり生春巻き。

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〈材料(2本分)〉
  • 豚肉(しゃぶしゃぶ用) 70g
  • サニーレタス 40g
  • 新タマネギ 30g
  • アスパラガス 2本
  • わさび 6g
  • ライスペーパー 2枚
わさびだれ
  • わさび(おろし) 6g
  • ナンプラー 小さじ2
  • 水 小さじ1
  • レモン汁 小さじ1
  • 砂糖 小さじ1/2~1
〈作り方〉
  1. たっぷりの熱湯に豚肉を入れてゆで、水にさらし、ざるに上げて水気を切る。ゆでるとき、酒少々を加えると、豚肉の臭みが取れます
  2. サニーレタスはせん切りにする。新タマネギはスライスする。アスパラガスはライスペーパーで巻きやすいように、半分に切って塩ゆでする。わさびは皮をむき、せん切りにする(point1)
  3. ボウルに水(分量外)を入れ、ライスペーパーを1枚ずつくぐらせて戻す。その上にサニーレタス、豚肉、アスパラガス、新タマネギ、わさびをそれぞれ2等分にしてのせて、きつく巻く(point2)
  4. 3を4つに切って盛り付ける。「わさびだれ」を添える
おいしく作るポイント
ポイント1

わさびをせん切りにするときは、食感を楽しむため、周囲の皮をむきましょう

ポイント2

ライスペーパーのざらっとしている面を内側にすると具を巻きやすく、また舌ざわりがなめらかです。

わさびいなり甘く味付けした油揚げと
わさびの辛さが絶妙!
行楽などのお弁当にもぜひ。

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〈材料(12個分)〉
  • 米 2合
  • 油揚げ 6枚
  • わさび 16g
  • 白ごま 適量
  • 黒ごま 適量
合わせ酢
  • 酢 大さじ3
  • 砂糖 大さじ2
  • 塩 小さじ1
A
  • しょうゆ 大さじ4
  • 砂糖 大さじ3
  • みりん 大さじ4
  • 酒 大さじ1
  • 水 300cc
わさびしょうゆ
  • わさび(おろし) 6g
  • しょうゆ 小さじ1/2弱
わさび海苔
  • わさび(おろし) 6g
  • 海苔の佃煮 6g
〈作り方〉
  1. 米は洗ってざるに上げ、すし飯の目盛りまで水を入れて炊飯する。ボウルに「合わせ酢」の調味料を入れ、砂糖と塩が溶けるまでよく混ぜておく
  2. 油揚げを半分に切って袋状に開き(point1)、たっぷりの湯で1~2分油抜きをする。ざるに上げ流水をかけた後、手のひらに取って水気をしぼる
  3. 鍋にAを入れてひと煮立ちしたら2を並べ、落とし蓋をして中火で10分、油揚げを裏返し、さらに10分煮る。様子を見ながら水分を飛ばすように煮る。バットに取り出して粗熱を取る
  4. わさびをみじん切りにする
  5. 炊きあがった白飯に1の「合わせ酢」、4を混ぜ合わせ、12等分にしておく。3を両手ではさむようにして軽くしぼってから広げ、中にすし飯を詰め(point2)、口の部分を内側にひっくり返す
  6. 「わさびしょうゆ」「わさび海苔」の材料をそれぞれ混ぜ合わせ、5にのせる。その上に、白ごま、黒ごまを飾る
おいしく作るポイント
ポイント1

まな板の上に油揚げをのせ、めん棒などで軽くのばすと、きれいな袋状に開きます

ポイント2

あらかじめ、すし飯を軽く丸めておくと、油揚げの袋に入れやすくなります

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