• 地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
    ※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。

  • カテエネ 農食ツーリズム
  • 第27回

    三重県鳥羽市の「的矢湾(まとやわん)あだこの岩がき」を訪ねて

    伊勢湾から流れ込む海水と、熊野灘(くまのなだ)の黒潮がぶつかる的矢湾は豊富なプランクトンに恵まれ、かきや真珠の養殖が盛んなエリアです。
    的矢湾の中でも外洋(太平洋)に近い畔蛸町(あだこちょう)で、天然の種かき(かきの幼生)を使った岩がき(夏がきとも呼ばれます)の養殖に成功。2007年からは毎年、伊勢神宮に奉納もされている「的矢湾あだこの岩がき」の養殖の現場を訪ねました。
    (注)取材は2017年3月におこないました。
  • 三重県鳥羽市の「的矢湾(まとやわん)あだこの岩がき」

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見る・聞くあだこの海は、プランクトンと栄養の宝庫

穏やかで美しい海の中で「的矢湾あだこの岩がき」は育つ

目の前に穏やかな海が広がる畔蛸町。船着き場に立って足元の海を覗き込むと、海水は澄んだエメラルド色をしていて、水深2mほどの海底では昆布がゆらゆらと揺れています。「きれいな海でしょう。あだこの海は外洋に近いから浄化されやすく、しかもプランクトンや栄養がたっぷり運ばれてくる。まさに海の森です」と「的矢湾あだこ岩がき協同組合」代表理事の上野善幸(よしゆき)さんと理事の北川聡(さとし)さんが口を揃えます。
さっそく組合員の方の漁船に同乗させていただき、「的矢湾あだこの岩がき」が養殖されている2kmほど先の沖へと向かいます。

  • 2007年に発足した「的矢湾あだこ岩がき協同組合」の皆さん。代表理事の上野善幸さん(前列右)と理事の北川聡さん(前列左)。

  • わずか数km先は太平洋の入口という海域が養殖場です。あだこの海を知り尽くしているからこそ、養殖に最適な場所を見極めることができます。

ふっくらとしてクセのない「若がき」の美味しさ

養殖場では浮き袋が何列にも連なり、浮き袋と浮き袋の間には5~6本のロープが吊るされ、それぞれのロープにほたての貝殻が数珠つなぎにぶらさがっているそうです。これらの貝殻に、海中でふ化した天然岩がきの幼生が付着すると、豊富なプランクトンをエサにぐんぐんと育ち、約2年半後には出荷サイズ(200~800g)まで成長します。
「養殖といってもエサを与えているわけではないから、天然と同じ。栄養豊富なあだこの海では、他の産地より1年ほど短い養殖期間で成長します。つまり殻が薄く、身だけが大きい『若がき』の状態で収穫できる。岩がき独特のクリーミーな味わいはもちろん、ふっくらとした身、クセのない味が自慢です」と上野さんは言います。
沈みがちな浮き袋の間のロープは、身が大きく成長し、重量が増えているサイン。そのうちの1本のロープを船上に引き揚げると、すみやかに下処理するため、急いで船着き場へ戻ります。

  • 1本のロープには海草類も付着しており、250kgという重さ。3人がかりで海中から引き揚げます。

  • 成長した海草類の様子からも、海の栄養の豊富さが分かります。

  • 船上にロープが引き揚げられた様子。

紫外線殺菌海水に18時間以上浸水して衛生管理

船着き場に船を停泊させると、船上にロープを引き揚げた状態のまま、高圧洗浄機で一気に海草類を洗い流します。すると、ほたての貝殻1枚ごとに、「的矢湾あだこの岩がき」が10個以上くっついた塊が次々と姿を現します。その1個1個を丁寧に切り離し、さらに殻の表面の付着物も取り除いていきます。すべて手作業のため、時間と根気のいる作業です。
下処理が終わると滅菌処理場へ運び、紫外線殺菌海水に18時間以上浸水し、生食でも安心して食べられる状態にします。

  • 船上で海草類を洗い流す北川さん。

  • 洗浄して付着物を取り除くと、「的矢湾あだこの岩がき」が姿を現します。

  • 船着き場から300mほどの所にある滅菌処理場。

  • 滅菌処理場では、厚生労働省の基準より厳しい衛生管理体制を敷いています。

  • 「的矢湾あだこの岩がき」は
    「三重ブランド」に認定されています。

    「三重ブランド」認定制度は、「自然を生かす技術(人と自然の力)をコンセプトとし、県内外の有識者による三重ブランド認定委員会によって(1)コンセプト(2)独自性・主体性(3)信頼性(4)市場性(5)将来性の5つの認定基準により厳しく審査しています。真珠、松阪牛、伊勢えび、あわびなど17品目が認定されています(2017年3月現在)。

    新しいウィンドウを開きます三重ブランドホームページ
  • 「的矢湾あだこ岩がき協同組合」がつくった
    オリジナルブランド「海女の知恵」

    保湿力に優れるアルギン酸やフコイダン(ヌメリ成分)を豊富に含む「めかぶ」は、昔から海水で傷んだ海女の髪にうるおいとつやを与えてきました。その天然パワーに着目してつくられたのが、あだこの海の「天然めかぶ抽出エキス」を配合した「海女の知恵」です。

    シャンプー(左)、トリートメント(右)、いずれも200ml(1,890円税込)

食べる「的矢湾あだこの岩がき」づくしの贅沢なコース

養殖する地元漁師が開いた、かき小屋

一般にはほとんど出回らない「的矢湾あだこの岩がき」を味わうなら、「的矢湾あだこ岩がき協同組合」の北川さんが運営する「民宿北川」のかき小屋「幸吉丸(こうよしまる)」がおすすめです。
畔蛸町で生まれ育った北川さんは9代目の漁師で、18年前「的矢湾あだこの岩がき」の養殖研究をスタートさせた5名の有志の1人。養殖が軌道に乗ってからは、父親が開いた「民宿北川」の敷地内にかき小屋をつくり、「的矢湾あだこの岩がき」をはじめとする地の物づくしの食事を提供しています。

  • かき小屋の名前「幸吉丸」は6代目が所有していた船の名前。室内も船をイメージしています。

  • 「的矢湾あだこの岩がき」をふんだんに使った「岩がきコース(4,500円税別)」。

「的矢湾あだこの岩がき」8個をさまざまな調理法で存分に味わう

「岩がきコース」では、「的矢湾あだこの岩がき」の2Lサイズ(300~400g)が8個も使われ、生がき、焼がき、フライ、みそチーズ焼、つくだ煮、釜飯と、さまざまな調理法で楽しむことができます。お米やもずくなども地元あだこ産にこだわり、まさに地産地消の贅沢なコースです。

  • 近くの山で切った木の炭で調理する焼がき。

  • クリーミーな味わいがたまらない生がき。

  • お米も「的矢湾あだこの岩がき」もふっくらと炊きあがった絶品の釜飯。

  • アクセス&インフォメーション 民宿北川 かき小屋「幸吉丸(こうよしまる)」

    三重県鳥羽市畔蛸町169 Tel:0599-33-6112
    営業時間 10時~19時(完全予約制) 不定休
    (注)1週間前までに要予約
    ■車でのアクセス 伊勢二見鳥羽ライン「松下JCT」、第二伊勢道路「鳥羽南・白木IC」約15分
    ■電車でのアクセス 近鉄・JR「鳥羽駅」から送迎あり(約30分)
    (注)送迎は事前の連絡が必要です。4名さま以上。

買う養殖場のすぐそばにある直売所

直売所だから、通常より安い価格で提供

「見る・聞く」で紹介した滅菌処理場に併設されているのが、「的矢湾あだこの岩がき」の直売所です。「的矢湾あだこの岩がき」のブランドを証明するため、1つ1つにタグ(商標登録)をつけて販売します。サイズはM(1個200~250g 380円税込)から4L(1個500g以上 900円税込)まであり、MとL(1個250~300g 470円税込)が特に人気です。
全国各地の料亭・レストランや旅館・ホテルなどで取り扱われているほか、電話・FAX注文により全国の「的矢湾あだこの岩がき」ファンや、一般のお客さまの元へ直接発送されています。

  • 滅菌処理場に併設された「的矢湾あだこの岩がき」の直売所。

  • 生産者によってタグの色が異なるため、一目で生産者が分かります。

  • 電話・FAXでの注文は、受注後に殺菌作業をおこなうため、発送まで3日かかります。

  • アクセス&インフォメーション 「的矢湾あだこの岩がき」の直売所

    三重県鳥羽市畔蛸町前浜
    注文・問い合わせ先 的矢湾あだこ岩がき協同組合 Tel:0599-33-7888 FAX:0599-33-7889
    販売時期 4月~7月末日 不定休
    (注)スタッフが不在のときもあるため、直接お買い求めになる場合は、事前に電話をしてから訪問することをおすすめします。
    ■車でのアクセス 伊勢二見鳥羽ライン「松下JCT」、第二伊勢道路「鳥羽南・白木IC」約15分
    ■電車でのアクセス 近鉄・JR「鳥羽駅」下車、かもめバス(国崎行き)「畔蛸口」下車(約40分)

学ぶ海女(あま)の文化に触れ、海女小屋を体験

全国で最も海女の多い町、相差町(おうさつちょう)

畔蛸町の隣にある相差町は、昭和30年代から素潜りで漁をする海女が活躍し、今も約100名の海女が存在する、全国で最も海女の多い町です。2017年3月、「鳥羽・志摩の海女漁の技術」が国の重要無形民俗文化財に指定されてからは、さらに注目が集まっています。
相差町を訪れたら、まず立ち寄りたいのが「相差海女文化資料館(おうさつあまぶんかしりょうかん)」です。等身大の海女ジオラマや昔の道具などが展示され、海女の文化に触れることができます。

  • 海女が活躍する相差町は周囲を海に囲まれています。

  • 静かな町中にある「相差海女文化資料館」。

  • 海女の作業風景を再現したジオラマも展示されています。

  • アクセス&インフォメーション 相差海女文化資料館

    三重県鳥羽市相差町1238 Tel:0599-33-7453
    開館時間 9時~17時(入館料無料)
    休館日 年末年始
    ■車でのアクセス 伊勢二見鳥羽ライン「松下JCT」、第二伊勢道路「鳥羽南・白木IC」より約20分
    ■電車でのアクセス 近鉄・JR「鳥羽駅」下車、かもめバス(国崎行き)「相差」下車(約35分)、徒歩約5分

現役の海女の方と話をしながら囲炉裏で食事を

海女の世界に興味を抱いた方におすすめなのが、海女小屋体験です。海から上がった後、海女が冷えた身体を温める海女小屋「相差かまど」で、現役の海女の方と話をしながら食事を楽しむことができます。
「相差かまど」は「相差海女文化資料館」から車を5分ほど走らせた岬に2軒あり、囲炉裏で海女の方が焼き貝などをふるまってくれます。

  • 白い磯着を身に付けた海女の方が迎えてくれます。

  • 囲炉裏を囲みながら、あわび獲りのコツなど貴重な話が聞けます。

  • 海女歴45年の中村千津子さん(写真右)と同43年の小崎たみ江さん。お2人とも相差町出身。

  • インフォメーション 海女小屋「相差かまど」の海女小屋体験

    予約・問い合わせ先 Tel: 0599-33-7453(相差海女文化資料館)
    (注)前日の17時までに要予約(最低人数4名) 電話受付時間 9時~17時
    ランチタイム:11時30分~14時/1時間程度(1名3,500円税込)
    ティータイム:10時(注)・15時/1時間(1名2,000円税込)
    (注)海女漁がある場合は、時間が変更となりますので事前にお問い合わせください。
    新しいウィンドウを開きます海女小屋「相差かまど」ホームページ

作る今日はおうちで農食レストラン

今回はかきを使ったレシピを紹介するニャ

かきは「海のミルク」とも呼ばれ、亜鉛・銅などのミネラルやビタミンB群、タウリンなどを豊富に含む、まさに栄養の宝庫です。シンプルな「生がき」「焼がき」も美味しいのですが、今回はチヂミ、春巻き、ちゃんちゃん焼き風のアイデアレシピを紹介します。

蓮沼 あいさん

農食シェフ蓮沼 あい

食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイト新しいウィンドウを開きますhttp://ai-hasunuma.com

かきと万能ネギのチヂミかき1個ずつにして焼く
かわいらしいチヂミ。
韓国海苔で風味豊かに。

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〈材料(6個分)〉
  • かき 6個
  • 小麦粉 適量
  • 万能ネギ 30g
  • 溶き卵 2個分
  • 韓国海苔 小4枚
  • サラダ油 小さじ2
  • 酢じょうゆ 適量
  • 塩・こしょう 適量
〈作り方〉
  1. 下処理したかき(point1)に、塩・こしょうをして、小麦粉を薄くまぶす。万能ネギは小口切りにする
  2. 溶き卵と万能ネギ、3~4cm角にちぎった韓国海苔を混ぜ合わせ、1のかきを加える
  3. フライパンにサラダ油を熱し、かき1個と万能ネギ、韓国海苔をスプーンですくってのせ、弱めの中火で両面を焼く(point2)
  4. 器に盛り、酢じょうゆでいただく
おいしく作るポイント
ポイント1

3%の塩水でかきを「ふり洗い」し、キッチンペーパーでしっかり水気を拭きます
(注)他の2品も共通です

ポイント2

焼きすぎるとかきの身が縮んでしまうため、両面がカリッと焼けたらOK

かきと生ハムと
クリームチーズの春巻き
クリーミーなかき&クリームチーズ
甘めの白みそとの相性はバツグン!
おつまみにもおすすめです。

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〈材料(6個分)〉
  • かき 6個
  • 個包装のクリームチーズ 45g(3個)
  • 生ハム 約40g(6枚分)
  • 春巻きの皮 3枚
  • 白みそ 15g
  • 小麦粉 適量
  • 塩・こしょう 適量
  • 揚げ油 適量
〈作り方〉
  1. 下処理したかきに、塩・こしょうをして小麦粉を両面に薄くまぶす。クリームチーズは縦半分に切る
  2. 生ハムで1のクリームチーズを1個ずつ包む
  3. 春巻きの皮を対角線で切って三角形にし、頂点を上にして置く。中央より少し手前に白みそを塗り、2、1の順にのせ、春巻きの皮で巻き(point1)、同量の水(分量外)で溶いた小麦粉でとめる
  4. 160度の油で時々返しながらゆっくりと揚げ、周りが色づいてきたら170度にしてきつね色になるまで揚げる(point2)
おいしく作るポイント
ポイント1

春巻きは、手前、左、右と四角く折りたたんで巻きます

ポイント2

最初は低めの160度でゆっくり揚げることでカリッと仕上がります

かきのちゃんちゃんホイル焼きちゃんちゃん焼きとは
鮭などの魚を使った北海道の郷土料理。
魚をかきにアレンジした一品。

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〈材料(2人分)〉
  • かき 6個
  • キャベツ 100g
  • タマネギ 80g(1/2個)
  • ニラ 40g
  • ニンジン 50g
  • モヤシ 100g(1/2袋)
  • 塩・こしょう 適量
  • バター(無塩) 20g
A
  • みそ 大さじ2
  • オイスターソース 大さじ1
  • 砂糖 小さじ2
  • 酒 大さじ1/2
  • 水 大さじ1/2
〈作り方〉
  1. 下処理したかきに、塩・こしょうをする。キャベツは太めのせん切り、タマネギは5mm幅の輪切り、ニラは7cm、ニンジンはせん切りにし、モヤシはできればひげ根を除く。ボウルにAを混ぜ合わせる
  2. アルミホイル(45~50cmの長さ)の中央に1の野菜の1/4、かき3個をのせ、Aの1/4をかける。さらに1/4の野菜をのせ、1/4のAをかける。アルミホイルの四隅を折りたたんで包む(point1)。同じものをもう1つ作る
  3. フライパンに2をのせて水を50ml加えて蓋をし(point2)、弱めの中火で15分ほど蒸し焼きにする。アルミホイルごと器に移し、アルミホイルを開いて、仕上げにバターをのせる
おいしく作るポイント
ポイント1

かきを野菜で包むことで旨味が染み込み、野菜から出るスープも美味しくいただけます

ポイント2

フライパンに水を入れなくてもホイル内は蒸し焼きになりますが、フライパンの表面を守るために水を入れておくと安心です

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