地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第29回
岐阜県岐阜市の「岐阜えだまめ」を訪ねて
「大粒で実がしっかりつまっていて、甘みがあって美味しい」と評判の「岐阜えだまめ」は、「JAぎふ」の主要産物の1つです。長良川北部に位置する岐阜市の島(しま)、則武(のりたけ)、合渡(ごうど)地区を中心に、現在200軒以上の農家さんが栽培しています。中でも島地区は、100軒以上の農家さんが集まる「岐阜えだまめ」の主力生産地。この地で50年近く「岐阜えだまめ」を栽培する古田直士(ただし)さんの畑を訪ねました。
(注)取材は2017年5月におこないました。
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手作業で選別し、出荷後も品質をキープ
収穫期を迎えた「岐阜えだまめ」のハウストンネル
JR「岐阜駅」・名鉄「名鉄岐阜駅」から北西に車を走らせること約20分。収穫期を迎えた古田さんの畑に案内していただきました。ハウストンネルの中は、豊かに生い茂った株が一面を埋め尽くし、地面が見えないほど。葉をかき分けるようにして畝の間をそろりそろりと進みながら、土の匂いと枝豆の匂いを全身に吸い込みます。
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「岐阜えだまめ」は6月末まではハウストンネルで栽培、7月以降は露地で栽培されます。
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株の下を覗き込むと、サヤがぶらさがっているのが分かります。
枝豆の栽培に適した島地区の土壌
古田さんが慣れた手つきで1株を畝から抜き取ると、明るい緑色のサヤが姿を現しました。サヤは柔らかいうぶ毛に覆われ、見るからに新鮮です。
「長良川に近い島地区の畑は、砂壌土(注)といって透水性が高く、しかも根が張りやすいのが特徴で、枝豆の栽培にとても適しているんですよ」とJAぎふ営農部園芸畜産課代理の仲村憲明(なかむらのりあき)さんが説明してくれました。
(注)砂壌土(さじょうど)とは、砂土(さど)より粘土の多い土壌のことで透水性に優れる。
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収穫に適した期間はわずか3日間と短いので、古田さんは毎朝収穫に追われます。
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仲村さん(左)、古田さん(中央)、JAぎふ組織部協同活動課主任の杉山健一さん(右)。
収穫後の温度管理も大切な仕事
収穫した「岐阜えだまめ」は、車で10分ほどの作業場に運び、枝豆ピッカーという専用の機械で、枝からサヤをもぎ取ります。「20年ほど前までは機械がなかったから、1つ1つ手でもぎ取っていました。今では想像できませんね(笑)」と古田さん。さらに、形や色が良くないものを取り除き、搬入先の「えだまめ選果場」でも厳しいチェックを受けた後、「岐阜えだまめ」は主に西日本へ出荷されます。
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枝豆ピッカーで、枝からサヤをスピーディにもぎ取ります。
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形や色の良くないサヤを手作業で取り除きます。
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手作業で選別された「岐阜えだまめ」。まさに粒揃いです。
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水洗いした後、「えだまめ選果場」に搬入されます。
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「岐阜えだまめ」とは?
「JAぎふ」のブランド商品の1つで、西日本ではシェア1~2位の出荷量を誇ります。ハウストンネル栽培と露地栽培に加え、時期に合わせて約15種類の品種を切り替えることで、4月下旬~11月中旬まで長期間の出荷が可能です。また、害虫や強風の被害に対応した防虫ネット栽培によって、化学農薬を約3割削減。鮮度保持フィルムを採用した袋が出荷後も品質をしっかりとキープします。
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「岐阜えだまめ」を使ったロングセラーの和菓子
枝豆の香りや食感を楽しめる「枝豆まんじゅう」
枝豆といえば塩茹でが最もポピュラーないただき方ですが、「岐阜えだまめ」を使ったロングセラーの和菓子があると聞き、和菓子処「緑水庵」鏡島店を訪ねました。迎えてくださったのは代表取締役社長の藤吉一郎さん。「今から20年前、地元の特産品を使った和菓子を開発しようと、枝豆あんを薄皮で包んだ「枝豆まんじゅう」を作って販売したところ美味しいと好評になり、今ではうちの定番商品となりました」。
差し出された「枝豆まんじゅう」を2つに割ると、きれいな緑色をした枝豆あんがたっぷり入っています。枝豆の香りや食感を活かすため、あえて粒を残し、甘さは控えめにした素朴な味わいです。お土産はもちろん、子どものおやつにもおすすめです。
この他、古代米を使った「黒米大福」は、中に入っている枝豆あんがよりなめらかで甘みが強く、枝豆あんのベースは同じでも、違った味わいが楽しめます。
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「枝豆まんじゅう」5個入り540円(税込)。
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「黒米大福」1個130円(税込)。抹茶セットにすると430円(税込)。
※抹茶セットは上生菓子各種230円(税込)からもお選びいただけます。
枝豆あんができるまで
「岐阜えだまめ」を大釜で茹で、サヤから豆を手作業で取り出し、ペースト状にした後、砂糖を加えてあんにします。
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大釜で茹でる。
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豆をサヤから取り出す。
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砂糖を加えてあんにする。
和菓子に加えて洋菓子も豊富に揃う
和菓子処「緑水庵」は岐阜県下に7店舗を展開する和菓子の店です。カステラ生地に求肥を包んだ「飛あゆ」をはじめ、季節の上生菓子や柏餅、羊羹のほか、ロールケーキやプリンゼリーといった洋菓子も豊富に揃っています。今回お訪ねした鏡島店には喫茶スペースも設けられ、店頭で販売されている商品を、オリジナルの「緑水茶」と共に、店内でいただくこともできます。
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何10種類ものオリジナル商品が揃う和菓子処「緑水庵」。
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代表取締役社長の藤吉さん(左から2番目)とスタッフの皆さん。
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長良川の鮎を模した鮎菓子「飛あゆ」1個110円(税込)。
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プリンとゼリーをミックスした「プリンゼリー」1個250円(税込)。
毎朝新鮮な野菜が並ぶ直売所
「JAぎふ」が運営する「おんさい広場 真正(しんせい)」
「おんさい広場」は地元の農家さんと地域をつなげることを目的に「JAぎふ」が運営するもので、岐阜県下に3店舗あります。その1つ「おんさい広場 真正」は、約400軒の地元の農家さんとネットワークを持ち、毎朝新鮮な野菜が農家さんから直接持ち込まれます。
枝豆が旬を迎える7~8月は、「岐阜えだまめ」に限らず、さまざまな農家さんの枝豆が店頭に並ぶので、食べ比べてみるのもおすすめです。
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「おんさい広場 真正」の「おんさい」は岐阜の方言で「いらっしゃい」を意味します。
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新鮮な野菜を目当てに、開店前からお客さまが並ぶこともあります。
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7~8月は、枝豆のコーナーを拡大して販売します。
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店長の森勝紀(かつのり)さん(中央)とスタッフの皆さん。
「おんさい広場 真正」のおすすめアイテム
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岐阜の特産品である柿にバターとはちみつを加えた「柿畑(かきバタ~け)」180g1,000円(税込)。
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岐阜県本巣市が発祥とされる「真桑瓜(まくわうり)」を使った「真桑瓜アイス」1個164円(税込)。
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岐阜県産の新鮮な米8種類を1kg単位で精米できるコーナー。精米も含めて1kg348円~(税込)。
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アクセス&インフォメーション おんさい広場 真正
岐阜県本巣市宗慶467-1 Tel:058-323-6351
営業時間 9時30分~17時
定休日 年末年始
■車でのアクセス
名神高速道路「大垣IC」より約35分
おんさい広場 真正ホームページ
体感型の「長良川うかいミュージアム」
1,300年以上続く「長良川鵜飼(ながらがわうかい)」
毎年5月11日から10月15日まで、金華山(きんかざん)のふもとでおこなわれる「長良川鵜飼」は、1,300年以上前から続く伝統文化です。全国12カ所で鵜飼がおこなわれていますが、「長良川鵜飼」は国の重要無形民俗文化財に指定され、「ユネスコ無形文化遺産」の代表リスト登録を目指しています。また、6人いる鵜匠は「御料鵜飼(ごりょううかい)(注)」が認められるなど、格式の高さが際立ちます。
(注)鵜匠が禁漁区である「御料場」で皇室に納める鮎を捕ること。シーズン中、年8回おこなわれる。
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「長良川鵜飼」は宮内庁式部職鵜匠(くないちょうしきぶしょくうしょう)によっておこなわれ、鵜を飼いならして鮎を捕る鵜匠は国家公務員に属します。
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「長良川鵜飼」の舞台となるのは、金華山のふもとを悠々と流れる長良川。
原寸大で鵜飼の様子をリアルに映し出す「ガイダンスシアター」
「長良川鵜飼」について楽しみながら体感できるのが「長良川うかいミュージアム」です。一番の人気は、原寸大で鵜飼の様子がスクリーンに映し出される「ガイダンスシアター」です。まるで自分が屋形船に乗って、川の上から鵜飼を見学しているような気持ちになります。
その他、歴史についてクイズで学べるコーナーや鵜匠の世界を紹介するコーナーなど見所満載で、鵜飼を実際に見学したことのある方もない方も、ぜひ立ち寄りたい施設です。
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鵜飼の魅力を広め、伝え、鵜飼文化を護ることを目的に設立された「長良川うかいミュージアム」。
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絵巻物型のスクリーンで鵜飼を体感できる「ガイダンスシアター」。
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本物の約4倍サイズの鵜の模型やパネルで、鵜の生態が分かる展示室。
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施設内を丁寧に案内してくださった副館長の小川裕幸(ひろゆき)さん。
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アクセス&インフォメーション 長良川うかいミュージアム
岐阜県岐阜市長良51-2 Tel:058-210-1555
開館時間 5月1日~10月15日は9時~19時、10月16日~4月30日は9時~17時
休館日 年末年始、5月1日~10月15日(一部指定日を除く)は休館日なし、10月16日~4月30日(祝日の場合は翌平日)は毎週火曜日
展示室観覧料 大人500円(団体1人400円)、小人250円(団体1人200円)、団体は20名以上
■車でのアクセス
東海北陸自動車道「岐阜各務原IC」「関IC」より約20分
名神高速道路「岐阜羽島IC」より約40分
■電車でのアクセス
JR「岐阜駅」・名鉄「名鉄岐阜駅」から、岐阜バスN系統路線もしくは市内ループ線「鵜飼屋」下車、徒歩6分
長良川うかいミュージアムホームページ
今日はおうちで農食レストラン
きれいな緑色をした枝豆は、たんぱく質、カロテン、ビタミンB1、食物繊維、鉄分などを含み、豆と野菜の栄養成分を兼ね備えた栄養バランスの優れた食材です。定番レシピは塩茹でですが、今回はディップにしたり、サヤ付きのまま炒めたりと、アイデアレシピを紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(15個分)〉
- 枝豆 200g(サヤ付き400g)
- 絹ごし豆腐 30g
- にんにく 1片
- オリーブオイル 大さじ2
- 白練りごま 大さじ1
- 塩 小さじ1/2
- バケット 1/2本
- バター 適量
- モッツァレラチーズ 2個(200g)
- プチトマト 15個
- 飾り用枝豆 適量
はちみつレモン
- レモン 1個
- はちみつ 50g
※輪切りにしたレモンとはちみつを混ぜて1時間以上置く。
〈作り方〉
- 鍋に1ℓの湯を沸かし、沸騰したら40gの塩(分量外)と枝豆を加え、7分ほど茹でて(point1)ザルに上げる。粗熱を取り、サヤから実を取り出す
- 1の枝豆、はちみつレモン、絹ごし豆腐、にんにく、オリーブオイル、白練りごま、塩をブレンダーにかけてペースト状になるまで混ぜる(point2)
- バケットを約1cmにスライスしてバターを塗り、軽くトーストする。上に約5mmにスライスしたモッツアレラチーズと大さじ1くらいの2、ピックに枝豆2粒、プチトマトの順に刺したものをのせる
おいしく作るポイント
アクをすくい取りながら、通常の塩茹でより少し長め(約7分)に茹でます。
ペーストの状態はお好みで。絹ごし豆腐と白練りごまの代わりに、ごま豆腐でもOK
〈材料(2人分)〉
- 枝豆 150g(サヤ付き)
- 塩 40g
- にんにく 1片
- えび 6尾
- ザーサイ 30g(ビン詰めのスライス)
- 片栗粉 大さじ1
- サラダ油 大さじ1
- 醤油 大さじ1
〈作り方〉
- 枝豆はサヤの両端をはさみで少し切り落とす(point1)。にんにくはみじん切りする
- ボウルに枝豆と塩を入れ軽く揉むように混ぜる。鍋に1ℓの湯を沸かし、沸騰したら枝豆を塩ごと加え、5分ほど茹でてザルに上げる
- えびは殻を剥き背わたを取ったらボウルに入れ、片栗粉、水大さじ2(分量外)を加えてよく揉み込む。汚れが浮いてきたら流水でよく洗い流し、ザルに上げ、キッチンペーパーなどで水気をしっかり切る
- フライパンにサラダ油、にんにくを入れて中火に熱し、2の枝豆を加えて炒める(point2)。3のえび、ザーサイを加えて炒め合わせ、えびの色が変わったら醤油を回しかける。全体をからめ、器に盛り付ける
おいしく作るポイント
サヤの両端を3~5mm切り落とすと、炒めたときに味がしっかりと付きます
にんにくの香りが出てきたら枝豆を加えます。枝豆を炒めることで香ばしさが引き立ちます
〈材料(4人分)〉
- 米 2合
- 枝豆 75g(サヤ付き150g)
- たこ(茹でだこ) 170g(2~3本)
- 生姜 1片
- 酒 大さじ1
- 醤油 大さじ1と1/2
- 塩 小さじ1/2
- 昆布 10cm角1枚
〈作り方〉
- 米はといで30分水に浸す
- 鍋に1ℓの湯を沸かし、40gの塩(分量外)と枝豆を加え、1分ほど茹でてザルに上げる。粗熱を取り、サヤから実を取り出す
- たこを2cm大の乱切りにする。生姜は皮を剥き細く千切りにして針生姜にし、水にさらす
- 炊飯器に水気を切った1の米、酒、醤油、塩を入れ、2合の目盛りまで水を加えてさっと混ぜる。2の枝豆、3のたこ、昆布を加えて普通に炊く(point1)
- 炊き上がったら、昆布を除いて3の針生姜を加えて混ぜる
おいしく作るポイント
濃いめや、薄めの味がお好みの場合は、酒や醤油の量を調節しましょう
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「岐阜えだまめ(6袋)」を5名さまにプレゼント!
締切日 8月15日(火)
岐阜県岐阜市西荘2丁目6 Tel:058-255-3003
営業時間 9時~19時
定休日 元旦
■車でのアクセス
名神高速道路「岐阜羽島IC」より約25分
■電車でのアクセス
JR「西岐阜駅」より徒歩約10分
和菓子処 緑水庵 ホームページ(「枝豆まんじゅう」はホームページからも購入できます。)