地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第31回
愛知県愛西(あいさい)市のれんこんを訪ねて
愛知県北西部にある愛西市。中でも木曽川沿岸に広がる海抜0mの水郷地帯(旧立田村、旧八開村)は、砂まじりの粘土質のため、れんこん栽培に適しています。その歴史は古く、江戸時代に旧立田村の住職が田んぼに植えたのがはじまりといわれます。今回は169軒のれんこん農家を束ねる「JAあいち海部れんこんセンター」所長の伊藤功治(こうじ)さんの紹介で、水谷佳美(よしみ)さんのハウスを訪ねました。
(注)取材は2017年7月におこないました。
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露地+ハウスで1年中収穫できるれんこん
青々としたハス田が続く、愛西市の木曽川沿岸
東名阪自動車道「弥富IC」を降り、北へ車を走らせること約10分。直径30cm以上あるお皿のような葉を大きく広げたハス田が、見渡す限り続きます。愛西市の多くのれんこん農家では、露地栽培の期期(8月~翌年6月中旬)を除く約2ヶ月間(6月中旬~7月)、ハウス栽培をおこなっており、1年中収穫できます。
この日、水谷さんのハウスはまさに収穫まっさかり。従業員の皆さんがクワを使って1本ずつ、土かられんこんを丁寧に掘り起こしていました。
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取材で訪れた7月は、露地栽培用のハス田で、白やピンクのハスの花が咲き始めていました。土の中ではれんこんが収穫の時期を待っています。
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「JAあいち海部れんこんセンター」センター長の伊藤さん(後列右)と、れんこん農家の水谷さん(前列右)。
昔ながらの「クワ掘り」が継承されている愛西市
全国で栽培されているれんこんの多くは「水圧掘り」といって、ジェットポンプの水圧によって土を取り除きながられんこんを掘り出す方法で収穫しています。一方、「JAあいち海部れんこんセンター」では、クワを使い、手作業で土を掘って収穫する昔ながらの「クワ掘り」が継承されています。「水圧掘りもクワ掘りも、れんこんの味自体は変わりません。ただ、水圧掘りは土も一緒に洗い流された状態で出荷されますが、クワ掘りは土付きのまま出荷されます。土付きの方がれんこんの保存性は高いですね」と「JAあいち海部れんこんセンター」の伊藤さんは言います。
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ハウス内での収穫の様子。れんこんを傷つけないよう、そっと掘り起こします。
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長さ1m以上!太い杖のようなれんこんが姿を現しました。
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1本ずつ掘り出す「クワ掘り」は収穫に手間がかかりますが、土付きのまま出荷されるので保存性が高いのが特徴です。
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れんこんの豆知識
大きなハスの葉は太陽の光をたっぷり受けて光合成をおこない、つくりだした栄養(エネルギー)は茎を通じ、土の中のれんこん(地下茎)へ送られます。茎をカットすると、れんこんと同じ穴が!この穴は空気を送る重要な役目を担っています。
地元のれんこんを使ったお惣菜が並ぶ「はす工房」
れんこんが主役のヘルシーなお惣菜がずらり
愛西市の特産品であるれんこんを味わうなら、ぜひ立ち寄りたいのが、道の駅「立田ふれあいの里」内にある「はす工房」です。れんこん農家が運営しているため、新鮮なれんこんをたっぷり使ったパック入りのお惣菜が常時約15種類、店頭に並びます。
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旧立田村の「立田朝市」が前身の道の駅「立田ふれあいの里」。
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週末は途切れなくお客さまが訪れる「はす工房」。
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店頭にはれんこんのお惣菜1パック150円(税込)~が常時約15種類並びます。
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「れんこん蒲焼き」3個入300円(税込)はタレをつけていただきます。
飽きのこない家庭の味が人気のヒミツ
お惣菜の中でも人気は、れんこんのすり身を使ったもので、「れんこんコロッケ」2個入200円(税込)、「れんこん蒲焼き」3個入300円(税込)、「れんこんボール」6個入350円(税込)など。このほかハンバーグ、エビのはさみ揚げ、きんぴら、サラダ、ちらし寿司と、いずれもれんこんが主役のヘルシーなお惣菜ばかりです。
飽きのこない家庭の味が人気を呼び、週1回は足を運ぶ常連のお客さまも珍しくありません。
店の前には、無料でくつろげる休憩所が設けられており、購入したお惣菜をその場でいただくことができます。
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れんこんの美味しい調理法を知り尽くしたスタッフの皆さん。
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れんこんを使ったお惣菜ばかり。レシピのバリエーションに感動!
れんこんの加工品も充実、道の駅「立田ふれあいの里」
朝収穫したばかりの新鮮なれんこんが並ぶ
「はす工房」のある道の駅「立田ふれあいの里」は「おいしい・楽しいがいっぱい」を合い言葉に、愛西市で生産された新鮮な農産物を豊富に揃えています。もちろん、特産品であるれんこんも、朝収穫したばかりの新鮮なものが並びます。「蓮根砂糖漬」「れんこんの味噌漬」など、れんこんを使った珍しい加工品も多く、お土産にもおすすめです。
また施設内には、愛西市の観光スポットなどを紹介した観光情報室も設置され、地域交流や情報発信の拠点としての役割も担っています。
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地元の農家さんが毎朝収穫物を持ち込む産直コーナー。
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鮮度のいいれんこんが山積みで売られています。1本400円(税込)~。
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「立田ふれあいの里運営連絡協議会」事務長の水谷洋治さん(左)とスタッフの皆さん。
事務長おすすめ、れんこん加工品
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「蓮根うどん」「蓮根ひやむぎ」各220円(税込)~。
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「蓮根砂糖漬」300円(税込)~。
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「れんこんの味噌漬」260円(税込)。
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アクセス&インフォメーション 道の駅「立田ふれあいの里」
愛知県愛西市森川町井桁西27 Tel: 0567-23-1011
営業時間 9時~18時
定休日 木曜、1月1日~3日
■車でのアクセス
東名阪自動車道「弥富IC」「長島IC」より約10分
道の駅「立田ふれあいの里」ホームページ
「愛知の小パナマ運河」と呼ばれる
「船頭平閘門(せんどうひらこうもん)」
船頭平閘門の開閉を体験できる「木曽川観光船」
木曽川をはじめ多くの河川が流れる愛西市には、「愛知の小パナマ運河」と呼ばれる国指定重要文化財「船頭平閘門(注)」があります。木曽、長良、揖斐の三川が分流され、水上交通が盛んだった明治時代、木曽川と長良川を船で行き交うことができるように設けられたもので、当時は商船や漁船などが多く往来しました。
この閘門の開閉を体験できるのが「木曽川観光船」です。
(注)閘門…水面に高低差のある河川や運河の間で水位調整する門のこと。
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「木曽川観光船」で風光明媚な木曽川をめぐります。
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コースの目玉は、長良川と木曽川を船で往来できるよう明治35年に建設された「船頭平閘門」。
木曽川と長良川の水位の違いを体験
「木曽川観光船」は「葛木港(かつらぎこう)」を出港し、木曽川を南へと下っていき、「船頭平閘門」の外でいったん待機します。木曽川と閘門の水位を同じ高さに調節すると、ゆっくり扉が開き、観光船は閘門の中で再び待機。長良川と閘門の水位を同じ高さに調節した後、長良川への扉が開き、ようやく長良川へ進むことができます。その日の川の水位にもよりますが、「船頭平閘門」を通過するのに、約15分~20分の時間を要します。
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取材で乗船した日は、前日の大雨の影響で通常より木曽川の水位が高くなっていました。
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船上でボランティアガイドの方が木曽川の歴史などを説明してくれます。
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船頭平閘門の中からの眺め。長良川への扉がゆっくりと開くところ。
木曽三川の歴史をたどる約3時間のコース
船頭平閘門を過ぎた所で下船し、「船頭平河川公園(せんどうひらかせんこうえん)」を散策したり、「木曽川文庫(きそがわぶんこ)」に立ち寄ったりして、自由な時間を過ごすことができます。その後、再び乗船して長良川をめぐった後、同じルートをたどって葛木港に戻る約3時間のコースとなっています。
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「船頭平河川公園」で下船します。
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公園内に、木曽三川の分流工事に貢献したオランダ人技師ヨハネス・デ・レーケの像があります。
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木曽三川の治水に関する文献、資料などが展示されている「木曽川文庫」。
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木曽川観光船
運航期間 3月25日(土)~11月19日(日) 土曜・日曜・祝日のみ運航
(注)運航期間は2017年のものです。電話で先着順に受け付けます。天候や潮の関係などにより中止する場合があります。
運航ルート 葛木港~船頭平閘門~長良川~船頭平閘門~葛木港
定員 12名(大人)
所要時間 約3時間(1日1便)出航時間は9時30分
乗船料金 大人1,000円、小学生以下500円、幼児無料問い合わせ:愛西市観光協会
Tel: 0567-55-9993
営業時間 9時~17時(木曽川観光船の受付時間は16時まで)
定休日 木曜
愛西市観光協会ホームページ
今日はおうちで農食レストラン
れんこんにはビタミンCのほか、消化を助けるムチン(粘り成分)、老化防止に役立つとされるポリフェノールなどの栄養素が含まれています。今回は、すりおろしてつくねにした「ふわふわ」感や油で揚げた「しゃきしゃき」感、炊き込みご飯にした「ほくほく」感、粘り成分を活かした「とろみ」感、さまざまな食感を楽しむレシピを紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(10個分)〉
- れんこん(スライス用) 150g
- れんこん(すりおろし用) 150g
- 鶏ひき肉 150g
- パクチー 1束
- 塩 小さじ2/3
- ナンプラー 大さじ1
- こしょう 少々
- 片栗粉 大さじ3
- サラダ油 大さじ1
たれ
- ナンプラー 大さじ1.5
- 砂糖 大さじ2
- 酢 1/4カップ
- 水 大さじ2
- 唐辛子(小口切り) 1本
〈作り方〉
- スライス用のれんこんは皮をむいて3mm厚に20枚スライスする。すりおろし用のれんこんは皮をむいてすりおろしておく
- パクチーは葉を摘んで、茎は細かく切っておく
- ボウルに鶏ひき肉と塩を入れて粘りが出るまでよく混ぜ、1のすりおろしたれんこん、2のパクチーの茎、ナンプラー、こしょうを入れてよく混ぜる
- 1のスライスしたれんこんの水気を拭き、全体に片栗粉をまぶし(point1)、余分な粉を叩いたら3のたねを10等分にしてれんこんで挟む
- フライパンにサラダ油を熱し、4の両面を中火で焼く。焼き色がついたら弱火にし、蓋をして5分加熱する
- たれの材料を混ぜて5に加えて中火にし、時々返しながら汁気がなくなるまで煮る
- 器に盛りつけてパクチーの葉を添える
おいしく作るポイント
内側にもしっかり片栗粉をまぶすことで、つくねがはがれることを防ぎます
〈材料(4人分)〉
- れんこん 200g
- 米 2合
- ブロックベーコン 180g
- 酒 大さじ1
- 塩 小さじ1
- 醤油 大さじ1
〈作り方〉
- れんこんは皮をむいていちょう切り(point1)にして水にさらし、ベーコンは1.5cm角に切る
- 米はといで30分以上水に浸して炊飯器の内釜に入れる。酒、塩、醤油を入れてから水を加えて2合の目盛りに合わせ、1のれんこんとベーコンを加えて炊飯する(point2)
- 炊き上がったら器に盛り付ける
おいしく作るポイント
炊き込みご飯の具材としては、やや大きめの1cm厚にすると、よりほくほく感が楽しめます
れんこんやベーコンの量はお好みで。しめじなどキノコ類を加えても美味しく仕上がります
〈材料(4人分)〉
- 豚バラ肉(塊) 200g
- 塩 小さじ2/3
- れんこん 200g
- 三つ葉 1束
- だし 600ml
- 酒 大さじ2
- 醤油 小さじ2
- 黒こしょう(粗挽き) 適量
〈作り方〉
- 塩豚を作る。豚バラ肉に塩をすり込んでラップで包み、冷蔵庫で寝かせる(point1)
- 1の塩豚を3mm厚にスライスする。れんこんはすりおろす。三つ葉はざく切りにする
- 鍋に油を引かずに2の塩豚を入れて弱火でゆっくりと加熱し、全体に色が変わったら油を拭き取る
- 3にだしと酒、醤油を加えて蓋をして10分煮たら、2のすりおろしたれんこんを加え、とろみがつくまで加熱する(point2)
- 器に盛り付けて三つ葉をのせ、黒こしょうを加える
おいしく作るポイント
できれば1晩寝かせると塩味が豚バラ肉にしみ込んで旨みがアップします
熱を加えることで、とろみが出てきます。れんこんの種類や時期によってとろみが十分つかないこともあるので、その際は片栗粉を適宜加えましょう
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「箱入りれんこん(約2kg)」を3名さまにプレゼント!
締切日10月15日(日)
愛知県愛西市森川町井桁西27 道の駅「立田ふれあいの里」内 Tel:0567-25-8001
営業時間 9時~18時
定休日 木曜、1月1日~3日
■車でのアクセス
東名阪自動車道「弥富IC」「長島IC」より約10分
はす工房ホームページ