• 地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
    ※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。

  • カテエネ 農食ツーリズム
  • 第40回

    三重県桑名市の桑名産はまぐりを訪ねて

    江戸時代に徳川家へ献上されるなど、古くから名産品と珍重される桑名産はまぐり。そのほとんどは、木曽三川の河口近くにある赤須賀(あかすか)漁港で水揚げされます。木曽三川と伊勢湾の海水が混じり合う栄養豊富な環境で育つはまぐりは、殻が大きく、身がふっくらして詰まっているのが特徴です。今回は赤須賀漁港を拠点とする「赤須賀漁業協同組合」を訪ねました。
    (注)取材は2018年4月中旬におこないました。
  • はまぐり

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見る・聞く絶滅寸前の桑名産はまぐりを復活させた「赤須賀漁業協同組合」

「赤須賀の奇跡」と呼ばれる、桑名産はまぐりの復活

赤須賀漁港は約450年前から漁を営む歴史ある漁港で、はまぐり漁が盛んにおこなわれてきました。ところが干潟の埋め立てなどにより、昭和40年代に3,000トンあったはまぐりの漁獲量が年々減少。危機感を募らせた「赤須賀漁業協同組合」は約30年前から、はまぐりの稚貝を育てる種苗(しゅびょう)生産と稚貝の放流を始めました。平成7年には漁獲量が1トン未満まで激減したものの、約10年前から少しずつ増加し始めました。こうした地道な努力による桑名産はまぐりの復活は「赤須賀の奇跡」とも呼ばれます。
朝10時、漁を終えた漁船が続々と港に戻ってきました。漁師の皆さんは水揚げしたばかりのはまぐりを殻ごとホースの水で洗うと、大きなネットに入れ、漁港内にある競り(せり)の会場へ運んでいきます。

  • 赤須賀漁港では、底引き網によるはまぐり漁とシジミ漁が中心。約80人の漁師のうち、半分以上がはまぐり漁を営んでいます。

  • 1回の漁獲量を1艇あたり20kg(時期により変動)に制限することで、赤須賀の貴重な資源であるはまぐりを守っています。

  • 「赤須賀漁業協同組合」青壮年部研究会会長の和藤健一さん(中央)と皆さん。

育った海の環境などによって殻の模様が決まる

10時30分に競りが始まりました。会場の中央には約10人の仲買人が一列に座り、目の前に1つずつ差し出されるネット入りのはまぐりを真剣なまなざしで見つめ、無言で値をつけます。
はまぐりの殻をよく見ると、黒っぽいものや白っぽいもの、縞模様などさまざま。「育った海の環境などによって殻の模様が決まるので、1つ1つ、全て異なるんです。人間の顔や指紋みたいなものですね」と漁師の1人が教えてくれました。

  • 真剣なまなざしで値づけをする仲買人の皆さん。

  • 競りの価格は大きさや模様、時期などによって変動します。1kg5,000円の高値で競り落とされることも。

  • はまぐりの「ハ」の字の模様がある中サイズ(約50g)が特に人気です。

    • 約30年前から取り組む、はまぐりの種苗生産と稚貝の放流

      昭和51年、「赤須賀漁業協同組合」内に研究会が誕生し、はまぐりの種苗生産を続けています。毎年、木曽三川の河口付近に100~200万個の稚貝を放流しますが、無事に育つのは100個のうちわずか1個。漁獲できる大きさになるまで3年かかるとされます。全国の漁業組合の中で唯一、はまぐりの種苗生産に取り組む「赤須賀漁業協同組合」では、徹底した出漁制限・漁獲規制など、組合員一丸となってはまぐりを大切に守り育てています。
      その努力の結果2017年3月、「桑名のはまぐり」として「三重ブランド」に認定されました。

    • 種苗生産施設での作業風景

    • 地元の小学生たちと稚貝を放流している様子

    • ●新鮮なはまぐりの見分け方

      ・殻が固く閉じている
      ・殻につやがある
      ・貝全体がふっくらしている
      ・はまぐり同士をぶつけると、澄んだ音がする

食べる水揚げされた新鮮なはまぐりを味わう

市場価格のほぼ半値で桑名産はまぐりを堪能できる食堂「はまかぜ」

赤須賀漁港のすぐ目の前にある「はまぐりプラザ」は、「赤須賀漁業協同組合」や三重県、桑名市などが共同で8年前に設立した施設です。桑名産はまぐりを広くPRすることを目的とし、種苗生産を紹介するパネルコーナーなどが設けられています。
「はまぐりプラザ」に足を運んだ際、ぜひ訪れたいのが2階の食堂「はまかぜ」です。ここでは、赤須賀漁港で水揚げされたはまぐりを市場価格のほぼ半値で味わうことができます。

  • 桑名産はまぐりを広くPRすることを目的に誕生した「はまぐりプラザ」。

  • 赤須賀漁港を見下ろしながら食事ができる絶好のロケーションです。

  • 理事長の水谷博之さん(右)とスタッフの皆さん。

桑名産はまぐり8~9個を使った「焼きはまぐり定食」

「はまかぜ」で一番人気の「焼きはまぐり定食」2,000円(税込)は、桑名産はまぐり8~9個を使った贅沢なもの。焼きはまぐり(5個)、はまぐり磯辺揚げ(2~3個)、はまぐりフライ(1個)など、はまぐりづくしでボリューム満点です。
軽く食事をしたいなら「はまぐりうどん」800円(税込)もおすすめです。はまぐりの出しがよくきいたスープは、最後まで飲み干したい美味しさです。

  • 「焼きはまぐり定食」は桑名産はまぐりの魅力を知ってもらうためリーズナブルな価格に設定。「本当に桑名産ですか?」とお客さまから尋ねられることもあるほど。

  • 焼きはまぐりは殻がはじけないようアルミホイルで包んで焼くのがコツです。

  • はまぐりの香りが食をそそる「はまぐりうどん」。

  • アクセス&インフォメーション 食堂「はまかぜ」

    三重県桑名市赤須賀86-21 はまぐりプラザ2階 
    Tel:0594-22-6010
    営業時間 11時30分~13時30分(売り切れ次第終了)
    定休日 火曜、12月29日~1月3日(はまぐりプラザ休館日)
    ■電車でのアクセス
    JR・近鉄「桑名駅」より三重交通バス「赤須賀」下車 徒歩約3分
    ■車でのアクセス
    伊勢湾岸自動車道「湾岸桑名IC」より約10分、東名阪自動車道「桑名IC」より約10分
    新しいウィンドウを開きますはまぐりプラザホームページ

買う約120年の歴史がある老舗「貝増(かいます)商店」

桑名産はまぐりを生きたまま水槽に入れて販売

競りの会場から歩いて約5分の所にある「貝増商店」赤須賀店では、4代目を継ぐ服部高明さんが、競りで手に入れた桑名産はまぐりを生きたまま水槽に入れて販売しています。
「貝増商店」は約120年の歴史がある老舗で、しかも目利きの服部さんが選んだ桑名産はまぐりは、地元の方はもちろん観光客にも人気があります。

  • 桑名産はまぐりを生きたまま水槽に入れて販売。サイズのバリエーションも豊富です。

  • 「手でさわっただけで、はまぐりの質が分かります」という4代目の服部高明さん。

  • つやつやの桑名産はまぐり。

秘伝のタレで甘辛く炊き上げた「志ぐれ蛤」

「貝増商店」の代名詞ともいえるのが「志ぐれ蛤」です。その名のとおり、はまぐりをしぐれ煮にしたもので、江戸時代、保存性を高めるため考案されたのが始まりとされ、桑名名物の1つです。「貝増商店」の「志ぐれ蛤」は、たまり醤油にワインや水あめなどを配合した秘伝のタレで甘辛く炊き上げたもの。噛みしめるほど、はまぐりの香りが口の中に広がります。

  • 約120年の歴史がある老舗「貝増商店」赤須賀店。

  • 「志ぐれ蛤」の他、あさりのしぐれ煮、貝ひも・しいたけ昆布の佃煮も製造・販売しています。

  • 桑名産はまぐりを使った「志ぐれ蛤」100g 2,500円(税込)。

  • アクセス&インフォメーション 貝増商店 赤須賀店

    三重県桑名市赤須賀市場町 
    Tel:0594-22-4908
    営業時間 8時30分~18時
    定休日 1月1日~2日
    ■電車でのアクセス
    JR・近鉄「桑名駅」より三重交通バス「赤須賀」下車 徒歩約3分
    ■車でのアクセス
    伊勢湾岸自動車道「湾岸桑名IC」より約10分、東名阪自動車道「桑名IC」より約10分

学ぶ石取祭(いしどりまつり)の文化を広く伝える「桑名市石取会館」

ただやかましいだけじゃない、石取祭の魅力

天下の奇祭と呼ばれる「石取祭」。諸説ありますが、神社の敷地整備のために河原から石を拾ってきたのが名前の由来とされ、江戸時代初期に始まりました。毎年8月の第1日曜とその前日に開催され、一晩中、鉦(かね)と太鼓の音が響き渡ります。
祭に欠かせない祭車(さいしゃ)は休祭中のものも含めると43台存在し、町ごとに装飾の異なる祭車が一堂に集う様子はまさに圧巻です。

  • 2007年、「国指定重要無形民俗文化財」に登録された石取祭。2017年度の来場者は約40万人で、2018年は8月4日~5日に開催される予定です。
    写真(2枚)提供:桑名市教育委員会(写真の保存、複製を禁止します)

  • 鉦と太鼓の叩き出しの音が激しいことから「日本一やかましい祭り」と呼ばれています。

石取祭の歴史・文化を伝承していく

石取祭を学習、体感できる施設として1992年に開館したのが「桑名市石取会館」です。石取祭の歴史や文化を広く伝えるため、情報を発信し続けています。
館内では実物の祭車、各町の祭車を彩る錺金具や染織品の展示、本物の鉦と太鼓を使ったお囃子体験コーナーなど、石取祭を見て、触れて、聞いて学ぶことができます。

  • 最初は銀行の支店として建てられ、のちに「桑名市石取会館」に改修されました。2011年には国の登録有形文化財に登録されています。

  • 歴史が学べる館内では、石取祭の流れを解説したパネルや、2階にまで達する大きさの祭車が展示されています。

  • 演奏の実演ビデオをお手本にしながらお囃子を体験。部屋に響き渡るくらいすごい音!

  • 石取祭について丁寧に解説してくださった桑名市役所産業振興部観光文化課の久保田恵友(けいすけ)さん(右)と受付のスタッフさん。

  • アクセス&インフォメーション 桑名市石取会館

    三重県桑名市京町16番地 Tel:0594-24-6085
    開館時間10時~16時
    休館日 月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日
    ■電車でのアクセス
    JR・近鉄「桑名駅」より徒歩約8分
    JR・近鉄「桑名駅」より三重交通バス「宮通」下車、徒歩約2分
    ■車でのアクセス
    東名阪自動車道「桑名IC」より約20分

作る今日はおうちで農食レストラン

今回ははまぐりを使ったレシピを紹介するニャ

良質なカルシウムのほか、亜鉛・マグネシウム・鉄分といった不足しがちなミネラルを豊富に含むはまぐり。調理法としては焼きはまぐりが有名ですが、蒸し煮、茶碗蒸し、ひつまぶしと、おもてなしにも活躍しそうなレシピをご紹介します。

蓮沼 あいさん

農食シェフ蓮沼 あい

食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイト新しいウィンドウを開きますhttp://ai-hasunuma.com

はまぐりとなすの蒸し煮 はまぐりの出し汁を
たっぷり含んだなすの旨味が
口いっぱいに広がります

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〈材料(2人分)〉
  • 殻つきはまぐり 8個(200g)
  • なす 2本(200g)
  • ごま油 大さじ2
A
  • 酒 大さじ4
  • 醤油 大さじ1
  • 酢 大さじ1
〈作り方〉
  1. 砂抜きされていない状態のはまぐりは塩水(約3%)につけて砂抜きし(Point1)、殻をこすり合わせるように洗う。なすはヘタを取ってピーラーで縞目模様に皮をむき、横半分、縦4等分に切る
  2. フライパンにごま油を熱し、なすを炒める。焼き色がついたらはまぐりを加える
  3. 合わせておいたAの調味料を加えて蓋をし、中火で約5分蒸し焼きにする
  4. はまぐりの殻が開いたら蓋を開け(Point2)、器に盛る
おいしく作るポイント
ポイント1

塩水(約3%)にはまぐりを浸したバットにアルミホイルをかぶせ、できれば一晩置いて、しっかりと砂抜きします

ポイント2

ふっくらとしたはまぐりの身を損なわないよう、火の通り過ぎに注意しましょう

はまぐりの洋風茶碗蒸しはまぐりの出しをきかせた
ちょっぴり贅沢な茶碗蒸し
牛乳とアボカドで洋風にアレンジ

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〈材料(4人分)〉
  • 殻つきはまぐり 8個(200g)
  • 白ワイン 大さじ4
  • 牛乳 300ml
  • 卵 2個
  • 塩 小さじ1/4
  • アボカド 1/2個(90g)
  • マッシュルーム 4個
〈作り方〉
  1. 砂抜きされていない状態のはまぐりは塩水(約3%)につけて砂抜きをする(Point1)
  2. 鍋にはまぐり、白ワインを入れて中火にかけ、蓋をして蒸す。はまぐりの殻が開いたら取り出し、蒸し汁は冷ます
  3. 2の蒸し汁に牛乳を加え、合わせて360mlにする。溶きほぐした卵と塩を加えて混ぜ、ざるでこす
  4. アボカドは皮と種を除き、1cm角に切る。マッシュルームは7~8mm幅に切る
  5. 器に4のマッシュルーム、2のはまぐりを入れ、3を注ぎ入れる
  6. 蒸し器に5を入れ、中火で1分、その後弱火で約15分蒸す(Point2)
  7. 蒸しあがった6にアボカドをのせる
おいしく作るポイント
ポイント1

塩水(約3%)にはまぐりを浸したバットにアルミホイルをかぶせ、できれば一晩置いて、しっかりと砂抜きします

ポイント2

蒸し器がない場合、大きめの鍋にふきんを敷いて水を3cmほど注いで蒸します

はまぐりのひつまぶしシンプルな味つけの
しぐれはまぐりを
3つの味わいで

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〈材料(2人分)〉
  • 殻つきはまぐり 20個(500g)
  • 酒 大さじ3
  • 生姜の千切り 1片分(10g)
  • 砂糖 大さじ1
  • 醤油 大さじ3
  • みりん 大さじ2
  • 出し汁 150ml
  • ご飯 600g
  • 刻み海苔 適量
  • みつば 適量
  • 練りわさび 適量
〈作り方〉
  1. 砂抜きされていない状態のはまぐりは塩水(約3%)につけて砂抜きをする(Point1)
  2. 鍋にはまぐり、酒を入れて中火にかける。蓋をしてからはまぐりの殻が開くまで酒蒸しにする。はまぐりは殻から外してむき身にし、蒸し汁は取っておく
  3. 鍋に生姜の千切りと砂糖、醤油、みりん、2の蒸し汁50mlを入れて混ぜ合わせ、中火にかける。ひと煮立ちしたら弱めの中火にし、2のはまぐりのむき身を加え、落とし蓋をして約10分煮る(Point2)
  4. 鍋に出し汁を入れ、中火にかける
  5. 大きめの器に温かいご飯をよそい、3のはまぐりをのせて、煮汁をかける
  6. 刻み海苔、みつば、練りわさびを添える。好みの薬味をのせていただいた後は、4の出し汁をかけ、お茶漬けにしていただく
おいしく作るポイント
ポイント1

塩水(約3%)にはまぐりを浸したバットにアルミホイルをかぶせ、できれば一晩置いて、しっかりと砂抜きします

ポイント2

約10分を目安に、短時間で煮ると、ふっくらと仕上がります

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