地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
-
第43回
岐阜県山岡町の寒天を訪ねて
寒天は海藻の天草(てんぐさ)から作った「ところ天」を凍結乾燥させたもの。江戸時代、冬に戸外へ置いた「ところ天」が乾物になったことから寒天の製造が始まったといわれます。寒天には棒寒天、粉寒天、細寒天(ほそかんてん)がありますが、国内で生産される細寒天の80%を占めるのが岐阜県山岡町の「山岡細寒天」です。今回は、2016年度「農林水産大臣賞」を受賞した「水野寒天」を訪ねました。
(注)取材は2018年7月中旬におこないました
農食ツーリズムのコースはこちら
山岡町の気候が生んだ「山岡細寒天」
冬場の農家の副業として昭和初期に始まった山岡町の寒天作り
寒天は、寒空の下で干すことから、その名がついたと言われます。降水量が少なく、昼夜の寒暖差が激しい山岡町では昭和初期以降、冬場の農家の副業として盛んに「山岡細寒天」が作られました。最盛期には100軒以上あった寒天業者は輸入物などの影響で9軒に減少しましたが、いずれも「山岡細寒天」のブランドを大切に守っています。「山岡細寒天」を作る寒天業者の1つである「水野寒天」は全国で名の知られた老舗和菓子屋に商品を卸している他、2016年度「農林水産大臣賞」を受賞するなど高く評価されています。
-
「水野寒天」では10月から5月頃まで寒天干しをしますが、受注が増えれば期間を延長することも。取材で訪れた7月も寒天干しの風景が広がっていました。
-
ゆっくり乾燥させないと品質が落ちるため、乾燥スピードの早い夏場は半日だけ干して冷凍庫で凍らせます。これを何日も続けます。
-
色素や不純物が抜け落ち、カラカラに乾いてウェーブ状に縮れるまで「干す」「凍らせる」を繰り返します。夏は約10日、冬は約20日で仕上げます。
天草100%にこだわり、各産地の天草をブレンド
「山岡細寒天」の中でも高い品質を誇る「水野寒天」の一番の秘密は原料にあります。天草にオゴノリなどの海藻を混ぜた寒天が出回る中、原料は天草100%にこだわり、九州・四国・伊豆など品質に優れた産地を厳選、さらに約10種類をブレンドすることで、常に安定した品質を維持しています。
-
雨がパラついてくると、急いで寒天を工場内の冷凍庫へ運ぶスタッフの皆さん。
-
天候に左右される寒天作りは片時も目が離せません。冬は正月を除き、休み返上で働きます。
-
「水野寒天」2代目社長の水野元彰(もとあき)さん(中央)とスタッフの皆さん。
約10kgの束を200束以上保管し、定期的に和菓子屋などに卸す
完成した「山岡細寒天」を工場の2階に保管しているというので、社長の水野元彰さんに案内していただきました。2階に上がると、足の踏み場もないほど、束になった商品が積まれています。しかし、これはごく一部。別の倉庫や土蔵に200束以上を保管し、定期的に和菓子屋などに卸しています。
「『山岡細寒天』は水分を抱える力がとても強く、質にこだわる和菓子屋さんに喜ばれます。冬の寒天干しはとても厳しい作業ですが、待っているお客さまがいるから頑張れます」と水野さんは笑顔で語ってくれました。
-
約5mm角の「ところ天」が寒天干しによってカラカラに細く縮れます。
-
厳しい目で選別し、長さを切りそろえて束にするスタッフさん。
-
1束は約10kg。寒天干しのシーズンは1日10束のペースで作ります。
-
-
●良い細寒天の見分け方
・色は少し黄色がかった乳白色
・つやがある
・縮れながらも、まっすぐの状態
-
-
●揉捻(じゅうねん)
原料の天草を水に浸し、水を加えながら洗浄して12時間煮つめます。
-
●切断
煮汁を固めてできた「ところ天」を羊かん状に切ります。
-
●突き出し
羊かん状になった「ところ天」を天筒で細い棒状(約5mm角)にします。
-
●凍てとり
上から氷を振りかけ、しっかり凍らせて上質の寒天に仕上げます。
-
●凍結乾燥
凍結と乾燥を約2週間繰り返し、余分な成分や水分をおとします。
-
●完成
厳しい目で選別して出荷します。
「山岡細寒天」ができるまで
-
お問い合わせ:「水野寒天」
岐阜県恵那市山岡町上手向4-5
Tel"Fax:0573-56-2516
※ホームページから商品を購入できる他、道の駅「おばあちゃん市・山岡」などでも一部販売しています。
巨大な木製水車が自慢、道の駅「おばあちゃん市・山岡」
どこか懐かしい風景に、心が癒される道の駅
「山岡細寒天」を使ったメニューを味わうなら、大きな木製水車が目印の道の駅「おばあちゃん市・山岡」がお勧めです。
山岡町ではかつて陶土用の砕石製造がおこなわれており、動力に水車を利用していました。そこでランドマークに建設されたのが、直径24mという大きな木製水車。どこか懐かしい風景が、訪れる人の心を癒してくれます。
-
緑に包まれた道の駅「おばあちゃん市・山岡」。手前は「ふれあい橋」。
-
水しぶきを上げて回る大きな木製水車。どこからでも眺めることができます。
-
2013年11月に誕生した「幸せの鐘」。訪れる人の幸せを願って設置されました。
細寒天ならではのヘルシーな「寒天らーめん」
施設内にあるレストラン「みはらし茶屋」の名物料理といえば「寒天らーめん」。「山岡細寒天」をぬるま湯でさっと戻して熱々のスープを注いだもので、細寒天ならではのヘルシーなメニューです。「寒天ぜんざい」や「ところてん」なども人気です。
メニューはすべてスタッフさんが考案したもので、日替わりの「おふくろの味定食」750円(税込)の他、秋には「栗おこわ定食」1,200円(税込)も登場します。
-
「寒天らーめん」500円(税込)は細寒天15gを使用。ボリューム満点なのに86kcalとヘルシー!
-
見た目も涼しげな「寒天ぜんざい」380円(税込)。
-
つるんとした喉ごしの「ところてん」300円(税込)。酢醤油をかけていただきます。
地元の人が「会員」としていきいきと働く道の駅
2004年、地元の人の生き甲斐づくりを目的に誕生した道の駅「おばあちゃん市・山岡」。駅長の後藤妙子(たえこ)さんは、15年前に恵那市の職員として派遣され、地元の人たちの協力のもと、施設を少しずつ充実させていきました。現在は駅長として施設を守りつつ、後継者の育成にも取り組んでいます。
道の駅「おばあちゃん市・山岡」では、山岡町に住む約540人が「会員」として携わっています。料理を作る人、農産物を持ち込む人、芝生を刈る人、休憩所のテーブルを作る人、すべてが「会員」です。
-
土日は300人ほどのお客さんでにぎわうレストラン。
-
料理はすべてスタッフの皆さんの手作り。カウンター越しに調理をする様子が見られます。
-
駅長の後藤さん(後列中央)とレストラン「みはらし茶屋」のスタッフの皆さん。
さまざまな寒天商品がそろう特設コーナー
「ここでしか買えない」をテーマに、良いと思う商品だけを厳選
レストラン「みはらし茶屋」の手前には、地元の農産物などが並ぶ売り場が設けられています。「ここでしか買えない」をテーマに、スタッフの皆さんが良いと思う商品だけを並べています。
注目の1つが寒天の特設コーナーです。先に紹介した「水野寒天」の商品はもちろん、「寒天らーめん」「ところ天」「山岡細寒天佃煮」など、さまざまな寒天商品がそろっています。
-
寒天の関連商品がずらりと並ぶ特設コーナー。
-
ビッグサイズ(1kg)の「山岡細寒天」。その大きさにびっくり!
-
人気ベスト3は「ところ天」「山岡細寒天」「寒天らーめん」。
約100軒の農家さんが持ち込む野菜売り場
野菜売り場では、約100軒の地元の農家さんが毎朝、採れたてを持ち込みます。さらに、できたての杵つきもちや和菓子、パンなどもそろっており、これらを目当てに訪れる人もたくさんいます。
また、レストラン「みはらし茶屋」で出されるお惣菜の一部も購入可能で、初夏から秋にかけて出回る「みょうが寿司」は大人気です。
-
約100軒の農家さんが持ち込む野菜売り場。安心安全で新鮮なものばかり。
-
山岡町周辺の中津川市や瑞浪市からも野菜が持ち込まれます。
-
みょうが寿司やちらし寿司などお惣菜も充実しています。
-
アクセス&インフォメーション 道の駅「おばあちゃん市・山岡」
岐阜県恵那市山岡町田代1565-169
Tel:0573-59-0051
営業時間 9時~18時(11月~2月は9時~17時)レストラン 11時~15時(11月~2月は11時~14時)
定休日 年末年始(12月29日~1月1日)
■電車でのアクセス
JR中央本線「瑞浪駅」下車、タクシーで約20分
■車でのアクセス
中央自動車道「瑞浪IC」より約20分
道の駅「おばあちゃん市・山岡」ホームページ
大正時代の面影を色濃く残す「日本大正村」
一部の有料施設を除いて、村内を自由に散策
山岡町から車で約10分。恵那市明智町には、大正時代の面影を色濃く残す「日本大正村」があります。写真家の沢田正春氏が明智町を訪れた際、「大正村を作らないか」と提唱したのをきっかけに、1988年に開村しました。一部の有料施設を除いて、村内を自由に歩き回ることができるのが特徴で、情緒ある通りを歩くだけで大正時代にタイムスリップしたような気分を味わうことができます。
-
細い石畳が味わい深い「大正路地」。撮影スポットとしても人気です。
-
無料休憩所の「日本大正村役場」。登録有形文化財に指定されています。
-
恵那市文化財にも指定されている「日本大正村資料館」。
遊び心満載、大正時代の情緒があふれる「大正村浪漫亭(ろまんてい)」
「日本大正村」の初代村長には女優の高峰三枝子さんが就任、2代目は司葉子さん、2015年以降は3代目の竹下景子さんが務めています。「大正ロマン館」では高峰さんのステージ衣装などが展示されています。
また「大正村浪漫亭」では、大正時代の着付けレンタルを受け付けています。女性は矢絣(やがすり)の袴(はかま)、男性は書生の着物を身につけて村内を散歩することができます。
-
大正モダンをイメージした洋風建築の「大正ロマン館」。
-
「大正ロマン館」には初代村長の高峰さんのステージ衣装が展示されています。
-
一際目を引く「大正村浪漫亭」。「日本大正村」オリジナルのお土産がそろっています。
-
「大正村浪漫亭」でレンタルできる女性用袴は赤・紺・紫の3色から選べます。
-
アクセス&インフォメーション 「日本大正村」観光案内所
岐阜県恵那市明智町456
Tel:0573-54-3944
施設の開館時間 9時~17時(12月15日~2月末は10時~16時)
休館日 12月29日~1月3日
■電車でのアクセス
JR中央本線・明知鉄道「恵那駅」下車、明知鉄道「明智駅」下車、徒歩約5分
JR中央本線・明知鉄道「恵那駅」下車、東鉄バス「明智駅前」下車、徒歩約5分
■車でのアクセス
中央自動車道「瑞浪IC」または「恵那IC」から約40分
日本大正村ホームページ
今日はおうちで農食レストラン
食物繊維を豊富に含む寒天。水を吸うとふくらみ、少量でも満腹感が得られるだけでなく、低カロリーでダイエット食としてもお勧めです。今回は、寒天を使ったヘルシーなレシピを3品ご紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(2人分)〉
- みそ 大さじ1
- 青のり粉 大さじ1/2
- 酢 大さじ1/2
- 絹ごし豆腐 1/2丁
- トマト 1個
- みょうが 1本
- 大葉 2枚
- しょうが 1片
A(寒天ドレッシング)
- 粉寒天 1g
- だし 125ml
- 砂糖 小さじ1/4
- からし 大さじ1/4
- ごま油 小さじ1/2
〈作り方〉
- 寒天ドレッシングを作る。鍋にAを入れてよく混ぜ、火にかけて混ぜながら煮る。沸騰したらさらに2~3分煮る
- 1の粗熱が取れたらみそ、青のり粉、酢を加えてよく混ぜ合わせ、水でぬらしたバットに流し入れる。青のり粉適量(分量外)を表面にふり(Point1)、冷蔵庫で冷やし固める
- 絹ごし豆腐はキッチンペーパーで包んで軽く水切りをし、7~8mm厚に切る。トマトは7~8mm厚の半月切りにする
- みょうがは薄切りに、大葉としょうがは千切りにする。水にさっとさらし、水気を切る
- 2が固まったら、バットの内側に包丁を入れて取り出し、6等分に切る
- 器にトマト、豆腐、5を交互に盛り付け、4の薬味を添える
おいしく作るポイント
寒天が少し固まりかけたタイミングで青のり粉をふりかけると、きれいに仕上がります
〈材料(約100mlグラス4個分)〉
A(コーヒーゼリー)
- 粉寒天 1g
- 水 125ml
- インスタントコーヒー 大さじ1
- 砂糖 大さじ1
B(カフェオレゼリー)
- 粉寒天 1g
- 水 50ml
- 牛乳 75ml
- インスタントコーヒー 大さじ3/4
- 砂糖 大さじ1
C(牛乳ゼリー)
- 粉寒天 1g
- 水 50ml
- 牛乳 75ml
- 砂糖 大さじ1
- トッピング用削ったチョコレート 適量
〈作り方〉
- コーヒーゼリーを作る。Aの粉寒天と水を鍋に入れて火にかけ、沸騰したら弱火で1分ほど加熱する
- 1を火からおろし、インスタントコーヒーと砂糖を加え、よく混ぜてボウルに移しておく
- カフェオレゼリーを作る。Bの粉寒天と水を1同様に溶かし、牛乳を加え一煮立ちしたら火を止める。インスタントコーヒーと砂糖を加えてよく混ぜ、ボウルに移しておく
- 牛乳ゼリーを作る。Cの粉寒天と水を1同様に溶かし、牛乳を加えて一煮立ちしたら火を止める。砂糖を加えてよく混ぜ、ボウルに移しておく
- 2~4をABCの順にグラスに大さじ1ずつ注ぐ。固まったことを確認し、もう一度繰り返す(Point1)
- すべて注ぎ終わったら冷蔵庫でしっかり冷やし、削ったチョコレートを飾る
おいしく作るポイント
急ぐ場合は冷凍庫でその都度冷やしましょう。角層を同じ高さにそろえると、きれいに仕上がります
〈材料(2人分)〉
- 粉寒天 4g
- 片栗粉 大さじ1
- 豆乳 200ml
- ゆであずき 200g
- 練りごま(黒) 大さじ1
- 砂糖 小さじ1
- 水 150ml
- 塩 ひとつまみ
- 栗の甘露煮 2個
- いりごま(白) 少々
〈作り方〉
- 鍋に粉寒天、片栗粉、豆乳を入れて混ぜる。火にかけてとろみが出てきたら弱火で2分加熱する(Point1)
- ラップを敷いたバットに1を流し入れて常温で固める(Point2)
- 鍋にゆであずき、練りごま(黒)、砂糖、水、塩を加えて弱火で5分ほど煮込む
- 固まった2を取り出して4等分にカットする。器に3を注いだ後、カットした2、栗の甘露煮、いりごま(白)を添える
おいしく作るポイント
とろみが出て底が見えるようになるまで、焦がさないよう気をつけながら混ぜます
ラップを敷いておくと、寒天もちを取り出しやすくなります
-
「山岡細寒天(50g)」を5名さまにプレゼント!
締切日 10月14日(日)
岐阜県恵那市山岡町田代1565-169
Tel:0573-59-0051
営業時間 9時~18時(11月~2月は9時~17時)レストラン 11時~15時(11月~2月は11時~14時)
定休日 年末年始(12月29日~1月1日)
■電車でのアクセス
JR中央本線「瑞浪駅」下車、タクシーで約20分
■車でのアクセス
中央自動車道「瑞浪IC」より約20分
道の駅「おばあちゃん市・山岡」ホームページ