地元の人たちに愛され、親しまれている食材をテーマに中部5県下をめぐり、その魅力をご紹介します。
※「農食」とは、新鮮な農産物をその土地で食べることを意味する造語です。
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第47回
静岡県吉田町のレタスを訪ねて
静岡県中部の「JAハイナン」管内(牧之原市、吉田町、旧御前崎町)は、肥沃(ひよく)な土壌と温暖な気候に恵まれ、特に牧之原市と吉田町は、約60年前からレタス栽培がおこなわれています。「JAハイナン」管内は静岡県で出荷量1位を誇るレタスのトップ産地。大玉でシャキシャキしたレタスが育ちやすいといわれています。今回は、「JAハイナンレタス委員会」の委員長を務める岩村政広(いわむらまさひろ)さんの畑を訪ねました。
(注)取材は2018年11月におこないました
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みずみずしいレタスを全国に出荷する静岡県中部の「JAハイナン」
茎部分を切り落とした断面は、白く透き通ってみずみずしい
収穫期を迎えた岩村さんのレタス畑は、畝が見えないほど、青々としたレタスの葉が広がっていました。岩村さんは畝の間に腰を下ろし、レタスの外葉(がいよう)をかき分けながら、包丁の刃先でレタスの茎部分を切り落とします。その切断面を見せてもらうと、白く透き通っていて、みずみずしさに驚かされます。
「レタスのおしり(切断面)が白いのはすごく新鮮な証し。翌日にはもう赤みが出てきますから」と岩村さんは言います。
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約1.7ヘクタールの畑でレタスを栽培する岩村さん。
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外葉の大きさや玉の締まり具合で収穫のタイミングを見計らいます。
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手で収穫するのが基本。玉を傷つけないよう、茎部分を包丁で切り落とします。
収穫後、外葉(がいよう)を数枚はがして箱詰め
収穫したレタスは畑のすぐ横にある選果選別所に運びます。コンテナに山積みになったレタスを1個ずつ手に取り、外側の外葉を数枚ずつ丁寧にはがした後、1個ずつ包装し、箱詰めします。「JAハイナン」管内は11月から3月がレタスの収穫期で、繁忙期になると朝から夜まで作業に追われます。
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午前中だけでコンテナいっぱいに収穫されたレタス。
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外側の外葉を数枚はがし、出荷調整作業をします。
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レタス栽培歴40年の岩村さん。レタスを使った好きな料理はスープだそう。
冬にはビニールのトンネルで覆われるレタス畑
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水分が多いレタスは、冬場になると凍って生長が止まり、玉が大きくなりません。そこで12月に入ると、防寒用のビニールを張ります。ビニールトンネル内が暑くなると今度は玉が大きくなりすぎるため、換気も欠かせません。
「真空予冷装置」でレタスのみずみずしさを保つ
箱詰めしたレタスは、その日のうちに車で5分ほどのところにある「吉田営農経済センター集荷場」へ。ここにはレタスの鮮度を保つための「真空予冷装置」が完備されています。
「真空予冷装置」は庫内を真空状態にして一気に温度を下げるため、通常の冷蔵庫だとレタスの芯まで冷えるのに10時間以上かかるのに対し、わずか20~30分で5度まで下げることができ、みずみずしさを保つことができます。その後保冷庫に移し、翌日には全国各地へ出荷されます。
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2017年に「真空予冷装置」をリニューアルした「吉田営農経済センター集荷場」。
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「JAハイナン」管内には約130名のレタス生産者がおり、収穫したレタスが次々と運ばれます。繁忙期にはセンター内がコンテナでいっぱいになります。
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「JAハイナン 吉田営農経済センター」の竹澤真生(たけざわまさき)さんと「JAハイナン」総務企画部 企画管理課 広報係の大石彩加(おおいしあやか)さん。
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「ハイナンサラダ王国プロジェクト」活動中!
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「JAハイナン」では産地をさらに活性化させるため、2017年に「ハイナンサラダ王国プロジェクト」をスタート。耕作条件改善や省力化支援など、さまざまな活動に取り組んでいます。
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「JAハイナンレタス委員会」では毎年、収穫したレタスの品評会をおこなっています。
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海の家をイメージしたアットホームな「くじらのせなか」
牧之原市出身のオーナーが地元でオープンした飲食店
くじらの看板が目印の「くじらのせなか」。牧之原市で生まれ育った堀克紀(ほりかつのり)さんは、地元の海水浴場として人気の高い「静波海岸(しずなみかいがん)」のそばに「くじらのせなか」を7年前オープンしました。海の家をイメージしたというアットホームな店内は、くつろぎ度満点。「漬けまぐろとアボカドのブルスケッタ」「豚deキムチーノ」各650円(税込)などオリジナルメニューが豊富で、海水浴やサーフィン帰りのお客さまでにぎわいます。
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「くじらの背中に乗るのが夢だった」という堀さんが「くじらのせなか」と命名。
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木のぬくもりを感じる店内。家具や棚はお父さまのハンドメイド。
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10年飲食店に勤めた後、独立して「くじらのせなか」をオープンした堀さん。
レタスを使ったオリジナルメニュー
堀さんが料理を作るときのモットーはスタイルにこだわらないこと。メニューになくても、食材さえ揃っていれば、お客さまからの要望に応じて料理することも珍しくありません。
今回の取材で、レタスを使ったオリジナルメニューを3品作ってくれました。いずれもレタスが主役のヘルシーな料理ばかりです。
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レタス、トマト、ハムにアンチョビとチーズを加えてタジン鍋で加熱したホットサラダ。
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レタスと豚肉炒めの鉄板メニュー。アツアツをいただきます。
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コンソメとバターで味付けしたレタスをメンチカツにプラス。
※レタスを使ったメニューについては事前にお問い合わせください。
旬の野菜が豊富にならぶ「ほうせん館」
新鮮な採れたて野菜がずらり
「JAハイナン」管内にあるファーマーズマーケット「ほうせん館」。約400軒の農家とネットワークを持ち、毎朝、収穫したばかりの新鮮な野菜が持ち込まれます。
冬場になると特に充実するのがレタスのコーナー。一般的なレタスに加えて、リーフレタスやロメインレタスも登場し、静岡産は翌年4月頃まで購入可能。また大根やみかんも豊富に並びます。
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2018年11月に11周年を迎えた「ほうせん館」。
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毎朝、収穫したばかりの新鮮なレタスが山積みになります。
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11~2月が旬の地元の大根。
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12月半ばに登場する「青島みかん」は地元でも人気です。
「JAハイナン」のオリジナルブランド、牧之原茶「望(のぞみ)」
深蒸し茶発祥の地とされる牧之原市は、お茶の栽培が盛んです。「ほうせん館」ではお茶のコーナーを設け、地元の牧之原茶のアピールにも力を注ぎます。
豊富に揃う深蒸し茶のなかでも、おすすめは「JAハイナン」オリジナルブランドの牧之原茶「望」。渋みが少なくコクのある味わいが特徴です。牧之原茶「望」は2010年「しずおか食セレクション」にも認定されました。
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牧之原茶を扱うお茶コーナー。茶器も販売しています。
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牧之原茶「望」。甘みや渋みが異なる「さえみどり」「あさけ」「つゆひかり」「山の息吹」の4種類。
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左から営農経済部直販課の大石成樹(おおいししげき)さん、大井克己(おおいかつき)さん、辻正志(つじまさし)さん。
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アクセス&インフォメーション ほうせん館
静岡県牧之原市細江1986-1 Tel:0548-24-1177
営業時間 9時~18時 年中無休(年始を除く)
■電車でのアクセス
JR静岡駅から特急静岡相良線「根松牧之原警察署入口」下車、徒歩約1分
JR島田駅から島田静波線・JR藤枝駅から藤枝相良線「榛原総合病院」下車、徒歩約3分
■車でのアクセス
東名高速道路「吉田IC」より約20分
ほうせん館ホームページ
田沼意次(たぬまおきつぐ)の活躍を学ぶ「牧之原市史料館」
今年、生誕300周年を迎えた田沼意次
榛原町(はいばらちょう)、相良町(さがらちょう)が合併した牧之原市。市にゆかりのある歴史上の人物といえば、相良藩を治めた江戸幕府の老中、田沼意次です。
「江戸時代の悪徳政治家」と揶揄されることも少なくない田沼意次ですが、じつは優れた経済政策をした人物です。その活躍ぶりを知ってもらおうと1981年に開館したのが「牧之原市史料館」です。今年は田沼意次の生誕300周年にあたり、11月に特別展の開催も予定しています。
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初代城主の田沼意次の「相良城」をイメージした「牧之原市史料館」。
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海の安全を祈り、毎年秋に開催される祭り「御船神事(おふねしんじ)」で使われる神輿なども展示。
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案内してくださった「静岡県牧之原市教育委員会」の長谷川倫和(はせがわともかず)さん。
お金の仕組みを変えた田沼意次
江戸時代は、重さを量って使用する銀貨が流通し、地域によって扱う貨幣も異なっていました。複雑な通貨の仕組みを変えるため、田沼意次は「銀貨8枚が金貨1枚分に相当する」という価値を定め、全国で通用する「南鐐二朱銀(なんりょうにしゅぎん)」を発行。これがきっかけで経済が発展したともいわれます。
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田沼意次にまつわる遺品を約50点常設しています。
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意次が考案した「南鐐二朱銀」の展示コーナーを紹介する長谷川さん。
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重さを量って使用する銀貨(左)と田沼意次が流通させた「南鐐二朱銀」(右)。
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アクセス&インフォメーション 牧之原市史料館
静岡県牧之原市相良275-2 Tel:0548-53-2625
営業時間 9時~16時
定休日 月曜(祝日の場合は開館)、祝日の翌日、年末年始(12月28日~1月4日)
入館料 大人210円(税込)、小人(18歳未満)100円(税込)
■電車でのアクセス
JR静岡駅より特急静岡相良線「相良営業所」下車、徒歩約10分
■車でのアクセス
東名高速道路「相良牧之原IC」より約20分
今日はおうちで農食レストラン
レタスはシャキシャキとした歯ごたえが特徴で、βカロテン、ビタミンC、ビタミンE、カリウムを含むほか、食物繊維が豊富で整腸作用も期待できます。生のままサラダにすることの多いレタスですが、今回は「煮る」「焼く」調理法も紹介します。
蓮沼 あい
食品メーカーへのレシピ提供や撮影協力、広告・雑誌でのレシピ紹介をはじめ、飲食店のプロデュースや料理イベントまで幅広く手がけ、食育をテーマにしたテレビ番組にも出演中。
ウェブサイトhttp://ai-hasunuma.com
〈材料(2人分)〉
- レタス 1/2個
- ベーコン 8枚
- 有頭えび 2尾
- うずらの卵 4個
- プチトマト 4個
- 好みのおでん種 4個
- えびボール 4個
- 水 5カップ
- 昆布(だし用) 1枚(20㎝角)
- 砂糖 大さじ1/2
- 醤油 大さじ2
- みりん 大さじ2
- 酒 大さじ2
〈作り方〉
- レタスは8等分に分け、ベーコンの幅に合わせて丸める。丸めたレタスをベーコンの上にのせ、そのまま巻いて2つずつ串を刺す(Point1)
- 有頭えびは頭を残して殻と背わたを取り、塩水で洗って水気を拭く。うずらの卵、プチトマト、好みのおでん種、えびボールをそれぞれ串に刺しておく
- 土鍋に水と昆布を入れて弱火にかけ、沸騰したら昆布を取り出し、砂糖、醤油、みりん、酒を加える
- 1と2の具材を3の土鍋に入れ、さっと火を通していただく
おいしく作るポイント
煮くずれしないよう、ベーコンで押さえつけながらレタスをきつめに巻きましょう
〈材料(2人分)〉
- レタス 1/2個
- ソーセージ 5本
- 卵 1個
- オリーブオイル 大さじ2
- 粉チーズ 大さじ2
- こしょう(仕上げ用) 少々
ソース
- マヨネーズ 大さじ2
- 牛乳 大さじ2
- 粉チーズ 大さじ1
- 酢 小さじ1
- 塩・こしょう 各少々
- にんにく(すりおろし) 小さじ1/2
〈作り方〉
- レタスを半分に切り、1/4サイズのレタスを2個作る
- ソーセージは1cm幅の輪切りにする。あらかじめソースの材料を合わせておく
- ポーチドエッグを作る。鍋にたっぷりのお湯(分量外)を沸騰させ、酢大さじ2(分量外)と塩少々(分量外)を加えてから、菜箸などでお湯をぐるぐると混ぜて渦を作り、弱火にして、割っておいた卵を落とす。そのまま2分ほど茹で、冷水に取る
- フライパンにオリーブオイルと2のソーセージを入れ、中火で加熱する。ソーセージに焼き色がついてきたら端に寄せ、フライパン全体に粉チーズをふりかける
- 1のレタスを加え、焼き色がつくまで2分ほど焼く(Point1)。ソーセージに粉チーズをからませてカリカリに焼き、レタスを裏返して裏面をさっと焼く
- 5を器に盛り、空いたフライパンに2のソースを入れて余熱で温め、器に盛りつけた5にかける。3のポーチドエッグをのせ、仕上げ用のこしょうをふる
おいしく作るポイント
レタスを上から押さえつけ、切り口に粉チーズをからませるようにして焼きます
〈材料(2人分:8本分)〉
- レタス 4枚
- 鶏ささみ 2本
- 酒 小さじ2
- 塩 小さじ1/4
- きゅうり 1本
- もやし 2/3袋
- 万能ねぎ 適量
- 大葉 4枚
- 白身魚の刺身 8枚
チリマヨソース
- スイートチリソース 大さじ2
- マヨネーズ 大さじ1
ニョクチャムソース
- ナンプラー 大さじ1
- レモン汁 大さじ1
- 水 大さじ1
- 砂糖 大さじ1・1/2
〈作り方〉
- レタスは1枚ずつはがして縦半分に切り、麺棒でのばす(Point1)
- 鶏ささみは耐熱容器に入れ、酒と塩を振る。ふんわりラップをして500~600Wのレンジで2~3分加熱し、そのまま冷ます。粗熱が取れたら細かく裂いてすじを取りのぞく
- きゅうりは千切りに、もやしと万能ねぎは20秒ほど熱湯で茹で、ざるにあげておく
- レタスの根元を手前に置いて、鶏ささみ・もやし・きゅうりの順にのせてしっかり巻き(Point2)、万能ねぎで結んでとめる。大葉・白身魚の刺身・きゅうりも同様に巻き、万能ねぎで結んでとめる
- 4を器に盛り、それぞれ混ぜ合わせたチリマヨソース、ニョクチャムソースを添える
おいしく作るポイント
根元から葉先にかけて麺棒でゆっくりとのばします
レタスを根元から折りたたむようにして、きつめに巻きます
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「季節の農産物セット」を3名さまにプレゼント!
締切日 2019年2月14日(木)
静岡県牧之原市静波1714-4 Tel:0548-22-5171
営業時間 17時~24時
定休日 月曜、第3火曜
■ 車でのアクセス
東名高速道路「相良牧之原IC」より約20分